【アスタナINPS Japan/The Atana Times=アセル・サトゥバルディナ】
上海協力機構(SCO)の第24回首脳会議(7月3日・4日)がアスタナで開催される中、専門家たちは現在の地政学的動向におけるこのイベントの重要性と、SCOの議長職を終えたカザフスタンの役割について考察している。
カザフスタンは昨年7月にインドからSCO議長職を引き継いだ。それ以来、同国は、現在10カ国が加盟するSCOの安全保障、安定、発展に取り組むため、さまざまな領域で150を超えるイベントを開催してきた。
2日間にわたった首脳会議では、アスタナ宣言、カザフスタンが提案した「公正な平和、調和、発展のための世界団結構想」、2025年までのSCO開発戦略、2025-27年のテロリズム、分離主義、過激主義に対抗するための協力プログラム、麻薬対策戦略、エネルギー協力開発戦略など、いくつかの重要文書が採択された。
各国首脳を歓迎したカシムジョマルト・トカエフ大統領は、「SCOはすべての加盟国の声を考慮するユニークなプラットフォームである。」と指摘したうえで、「条約基盤は、反麻薬戦略、経済協力戦略実施計画、環境保護協定、エネルギー協力開発戦略を含む60の新たな文書で充実したものとなりました。 SCOのパートナー国際機関の範囲も拡大され、 投資に関する特別作業部会の活動も再開されました。また、 各国通貨による決済への移行プロセスは、前向きな勢いを増しています。」と語った。
カザフスタン戦略研究所のアジア研究部門のバウルジャン・アウケン主任専門家では、「カザフスタンはSCOのすべての分野で利益を得ています。」と語った。
「政治的には、上海協力機構への加盟はカザフスタンに国際政治における発言権を与えています。 地政学的な混乱が続いている現在、多国間フォーマットで外交関係を構築することは、カザフスタンにとって外国投資を確保・誘致する上で特に重要です。」とアウケン主任専門家はアスタナ・タイムズ紙の取材に対して語った。
「また経済的には、貿易関係の強化に寄与しています。政府のデータによると、カザフスタンのSCO加盟国との貿易額は過去5年間で56.5%増加し、660億ドルに達しました。2024年1月から4月の間に、域内の貿易量は191億ドルに達しました。」
「SCOへの加盟のおかげで、カザフスタンの企業は商品を輸出する機会を得ています。 例えば、中国を例にとると、技術の時代において、カザフスタンの市民は中国のオンラインプラットフォームに商品を出品することができます。昨年、大統領の訪問中に、中国の主要なeコマースプラットフォームに我が国のパビリオンが開設されましたが、これはその典型的な事例です。」とアウケン氏は語った。
安全保障の強化は、SCO設立当初からの目的の一つであり、これはテロリズム、過激主義、分離主義という、三つの悪とされる問題に対処することを含む。アスタナ首脳会議で採択された主要な文書の一つは、2025年から27年にかけての「テロリズム、分離主義、過激主義に対抗するための協力プログラム」である。
「今日の首脳会議では、麻薬対策、とりわけ麻薬密売に対抗する戦略が採択されましたが、これは我が国にとっても関連性のある問題です。麻薬の国民への蔓延を防ぐことは特に重要です。」と、アウケン氏は付け加えた。
「SCOは東西の架け橋として重要な役割を担っており、カザフスタンの議長国就任は、地政学及び地経学的な課題に対処する好機を提供している。」とインドの英字ビジネス専門日刊紙『エコノミック・タイムズ』の外交エディター、ディパンジャン・ロイ・チャウドリー氏は語った。
SCOは、東西の架け橋として重要な役割を果たしており、カザフスタンの議長職は地政学的および地経学的な課題に対処する機会を提供すると、インドの英字ビジネス紙The Economic Timesの外交編集者であるディパンジャン・ロイ・チャウドリー氏は語った。
「カザフスタンが前回SCOの議長国を務めたのは2017年でした。以来、コロナ禍や世界各地の戦争など、多くの地経学的、地政学的な課題が山積しています。成長する多国間組織として、SCOはこれらの課題に対処する必要があります。トカエフ大統領は、SCOを東西の架け橋として活用するための良い方策を持っており、その成功を期待しています。」と、この記事にコメントを寄せた。
チャウドリー氏はまた、「ベラルーシがSCOに加盟したことで、欧州連合と直接国境を接することになった。」と指摘したうえで、「これは接続性の健全な兆候でもあります。しかし、接続性は一つの回廊に限定されるべきではありません。接続性には複数の回廊があり、カザフスタンは東西回廊と南北回廊の両方に関心を持っています。南北回廊は、カザフスタンと中央アジアがインド洋やインドとつながるのに役立ちます。インドはSCOに加盟する大国のひとつで、人口も市場規模も大きい。 それはSCOに多様性をもたらし、組織の精神に良い影響を与えるでしょう。」と語った。
チャウドリー氏は、インドとユーラシア諸国との間の「自然なパートナーシップ」を強調し、SCOは両地域を結ぶことで多様性と経済成長を促進していると語った。
セルビア在住の研究者・アナリストであるニコラ・ミコヴィッチ氏は、SCO首脳会議は、中堅国であるカザフスタンにとって中央アジアでの地位を強化し、SCO加盟各国との二国間関係を発展させるための機会と見ている。
「カザフスタンは非常に建設的な立場をとっており、SCOがとるべき重要なステップを提示しています。 対立的な政策を追求しているように見える大国とは異なり、カザフスタンは実際に平和的アジェンダと紛争の外交的解決を促進しています。 自国の地政学的利益を考慮し、このアプローチが大国に採用されるかどうかは、これからわかるだろう。」とミコヴィッチ氏はアスタナ・タイムズ紙の取材に対して語った。
ミコヴィッチ氏は、SCOの有効性を高めるために、域内でより多くの経済プロジェクトが必要であると強調した。 また、「加盟国間の地政学的な相違が障害になっている」と指摘したうえで、「カザフスタンは、これらすべての国々の間でバランスを取ろうとしている。」と語った。(原文へ)
INPS Japan
この記事は、The Astana Timesに初出掲載されたものです。
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