地域アジア・太平洋|中国|教会と国家: 北京の三つの大聖堂で迎える復活祭

|中国|教会と国家: 北京の三つの大聖堂で迎える復活祭

フォトエッセイ:国家の監視を受け入れることと、恐れずに信仰を告白することの間には、超現実的なバランスが存在する。

【National Catholic Register/INPS Japan北京=ヴィクトル・ガエタン】

編集部注:中国本土には推定1000万~1200万人のカトリック信者がおり、20の大司教区と97の教区を含む、バチカン公認の147の教会管区に広がっている。近年、中国共産党によるカトリック礼拝の監視と統制が強まっている。この統制キャンペーンは、米国際宗教自由委員会の2024年次報告書に掲載されたのをはじめ、多くの人権専門家から信教の自由の侵害として批判されている。4月に北京を訪れた際、レジスター寄稿者のヴィクトル・ガエタンは、信者が復活祭を祝う中国の首都にある政府登録のカトリック教会をいくつか訪問することにした。これは彼のレポートである。

日本への調査旅行を計画しているとき、アメリカ人が「別の国への乗り継ぎ」の間、ビザなしで6日間144時間まで中国を訪問できることを知った。いくつかの条件(目的地行きの航空券を持っていること、「入国港」(北京はこの政策が適用される20都市のうちの1つ)から離れないこと、滞在先を報告しなければならないこと)があるが、それは東京に行く途中で中国のカトリック教会を訪問する絶好の機会であることを意味した。

こうして、私は北京の三つの大聖堂で復活祭のミサを捧げることになった。中国の教会について何年も読み書きしてきが、中国のキリスト教徒の兄弟姉妹と共に礼拝する恩寵については何の準備もしていなかった。

私が訪れた教会は、老若男女を問わず、多くの子どもたち(全部で数千人)で満員だった。彼らは献身的に歌い、祈っていた。制服警官に撮影され、教会の敷地に入るには金属探知機を通らなければならない。しかし誰も抵抗しなかったし、監視の目を避けるために立ち去る人も見なかった。これは信仰の肯定ではなかろうか。

国家の監視を受け入れることと、恐れずに信仰を告白することの間には、超現実的なバランスが存在する。「それなら、カエサルのものはカエサルに、神のものは神に返しなさい」というマタイによる福音書第22章(イエス・キリストの言葉で、宗教的な義務と世俗的な義務を区別することを意味する)を思い出した。信者たちは、国家の存在を素直に受け入れているように見える。彼らがミサへ全身全霊で参加している光景は、特に感動的な礼拝の体験となった。

中国人以外の参加者はほとんどいなかったが、私が参加していてもほとんど注目されることはなかった。救世主大聖堂(北堂)李山大司教の写真を撮ろうとしたら、案内係に制止された。彼は私の携帯電話を預かり、代わりに写真を撮ってくれることになった!案内係の説明によると、外国人は通常、英語やその他の言語で行われる礼拝に参加するとのことだった。


マテオ・リッチ神父(中国名は利瑪竇)は1583年に中国に到着し、中国で布教した最初のイエズス会宣教師の一人となった。リッチ神父の銅像は南教会の敷地の入り口に立っている。リッチ神父は1605年から1610年に亡くなるまで、明朝の万暦帝の宮廷に顧問として仕えた。
マテオ・リッチの肖像 出典: Wikimedia Commons

ミサの後、教会の中庭は社交の場となり、聖人像の前で祈りを捧げたり、修道女が管理する折りたたみ式のテーブルで聖具を購入したり、信者のパフォーマンスで活気づいていた。そのころには、警察はほとんど撤退していた。各教会では1日に数回のミサが行われている。祭壇には5、6人の司祭と2人の助祭がいた。

以下の写真は、ほとんどが迅速かつ控えめに撮られたものだが、中国の健全で信仰深いカトリック共同体が、神の都にしっかりと目を向けていることを示している。復活祭の前夜祭のために、私は聖母無原罪聖堂(南堂)、北堂、聖母カルメル山教会(西堂)として地元で知られる三つの歴史的なカトリック大聖堂を訪れた。その夜、三つの教会で267人の新しい信者が信仰に加わった。

復活祭当日は、信者と交流しやすい南堂を再び訪れた。ある若い案内係が、彼女が空港のエンジニアであると教えてくれた。「私はイエスを愛しているので、できるだけ教会に来るようにしています。カトリックの司祭たちはずっと以前にこの地に聖書をもたらしました。中国本土には、訪れる価値のある美しい教会や巡礼地がたくさんあります。」と彼女は語った。(原文へ

教会の修理のため、教会の修理のため、聖金曜日の十字架の道行きは教会の中庭に移されました。幅広い年齢層の人々が参加した。「十字架の道行き」は、イエス・キリストが十字架を背負ってゴルゴタの丘へと歩んだ苦難の道を追体験するカトリックの宗教儀式。信者たちは、教会やその敷地内に設置された14の「ステーション」(各ステーションはキリストの受難の特定の場面を表している)を順に訪れ、祈りを捧げる。(写真: 提供写真)
教会の修理のため、教会の修理のため、聖金曜日の十字架の道行きは教会の中庭に移されました。幅広い年齢層の人々が参加した。「十字架の道行き」は、イエス・キリストが十字架を背負ってゴルゴタの丘へと歩んだ苦難の道を追体験するカトリックの宗教儀式。信者たちは、教会やその敷地内に設置された14の「ステーション」(各ステーションはキリストの受難の特定の場面を表している)を順に訪れ、祈りを捧げる。(写真: 提供写真)
聖金曜日の行列が終わった後も、教会の小冊子を手に十字架の道行きを続けて祈る信者たち。(写真: 提供写真)
南堂で、聖金曜日に信徒たちが交代で十字架を担う感覚を試している。(写真: 提供写真)
文化大革命中の1966年から79年まで閉鎖されていた聖母無原罪聖堂(南堂)の外で、復活祭のろうそく(パスカルのろうそく)に火が灯される。このろうそくは、キリストの復活を象徴し、復活祭前夜の礼拝で新たに火を灯されることが特徴。イエス・キリストが世界の光であることを示すシンボルとして、教会の中で重要な儀式の一部として用いられている。(写真:提供写真)。
復活節のミサは南教会で、キリストの光を暗い身廊(教会の正面玄関から祭壇まで続く主要な通路)に運ぶ行列から始まる。
北堂として知られる救世主大聖堂は、2007年に42歳で任命された北京の大司教ヨゼフ李山が、バチカンと中国政府の承認を得て座す場所である(写真:提供写真)。
警察はミサに参加する信者に金属探知機の通過を義務づけているが、教会への通路はラッパを鳴らす天使によって照らされている(写真:提供写真)。
最近改装された聖堂で、立ち見の聴衆を前に説教する李山大司教(写真:提供写真)
教会の祭壇が見えない側の翼廊部分も人でいっぱい。(写真:提供写真)
プロパガンダ・フィデ修道会が派遣したイタリア人ラザリスト宣教師によって設立された北京の聖母カルメル山教会(西堂)では、警察と金属探知機が多くの信者を出迎えている。この教会は1723年に建てられ、イエズス会以外では中国初の教会建築物である(写真:提供写真)。
カトリックの中でも特に活気のある聖母カルメル山教会前の庭では、ペイントされた卵(賞味期限切れの本物)や永久保存版のお土産の卵、それに西教会のイメージで飾られたロザリオやトートバッグが売られている(写真:提供写真)。
西堂の信徒は生き生きとしている(写真:提供写真)
西堂で復活祭の前夜祭のミサに臨む信徒の上着には、福音のメッセージがまとめられている。
2024年4月30日、復活祭の前夜祭で信者を祝福する熱心な司祭。
「復活祭前夜、西堂で誰かの背中に書かれていたもう一つの関連メッセージ:『私たちの意志は要塞のように団結している。』」
復活祭前夜のミサで、西堂の司祭が教会の後方に到達し熱心に祝福を行っている。(写真:提供写真)
復活祭前夜のミサの後、教会の外で聖人の前で静かに祈る信者たち。
復活祭のミサでは、35人ほどの子どもたちが白いケープ姿で目立つ。彼らは聖体拝領をしているのだろうか?それとも祭壇奉仕者なのか?地元関係者の説明はまちまちだった。
古い石は跪くには痛いが、老いも若きも跪く(写真:提供写真)
2024年4月31日、南堂で復活祭のミサが終わり、行列する李山大主教(写真:提供写真)
2024年3月31日日曜日、復活祭のミサの後、壷から聖水を集める信者たち。

National Catholic Register/INPS Japan

Original Article: https://www.ncregister.com/news/easter-in-china-state-monitoring

Victor Gaetan
Victor Gaetan

ヴィクトル・ガエタンはナショナル・カトリック・レジスター紙のシニア国際特派員であり、アジア、欧州、ラテンアメリカ、中東で執筆しており、口が堅いことで有名なバチカン外交団との豊富な接触経験を持つ。一般には公開されていないバチカン秘密公文書館で貴重な見識を集めた。外交専門誌『フォーリン・アフェアーズ』誌やカトリック・ニュース・サービス等に寄稿。2024年4月、IPS Japanの浅霧理事長と共に長崎を取材訪問。INPS Japanではナショナル・カトリック・レジスター紙の許可を得て日本語版の配信を担当した(With permission from the National Catholic Register)」。

*ナショナル・カトリック・レジスター紙は、米国で最も歴史があるカトリック系週刊誌(1927年創立)

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