【カラチIPS=ゾフィーン・イブラヒム】
「このメディアによる評価は、バローチ民族が直面する誘拐、拷問、そして大量虐殺の痛ましい現実を浮き彫りにしています。」と、英国の公共放送BBCが発表した2024年版「世界で最も影響力のある女性100人」のリストに選ばれた31歳の政治活動家、マラン・バローチ氏は、パキスタンのバローチスタン州クエッタからの電話で語った。
BBCはこのリストについて、「今年は特に女性たちにとって困難な年であったことを認識し、変化する世界の中で、たくましく変化を求めて前に進もうと取り組む女性たちを称えるものだ。」と述べている。
2024年、マランはこの他にも名誉を受けている。10月には、米国のニュース雑誌タイム誌の「2024 Time100 Next」リストにも選ばれ、バローチ民族の権利を平和的に訴える若い活動家として認められた。タイム誌からニューヨークでの授賞式に招待されたが、10月7日に空港で搭乗を阻止され、「理由は一切教えてもらえませんでした。」と語った。彼女はパキスタンでは「テロリスト」や「自爆犯」として扱われ、多くの訴訟を起こされていると主張している。「さらに悪いことに、今では私と弟が『第四スケジュール』リストに載せられてしまいました。」と嘆く。
1997年に導入された「第四スケジュール」は、キスタンの反テロ法(Anti-Terrorism Act, ATA)において、過激主義者やテロリストとみなされた個人を監視下に置くためのリストを指す。このリストに掲載されると、渡航禁止、銀行口座の凍結、資金援助の禁止、武器の所持許可取り消し、就職における身辺調査の制限など、厳しい措置が課される。現在、約4,000人のバローチ人がこのリストに載せられている。
医師として訓練を受けたマランは、2006年にパキスタン治安部隊によるバローチ民族の無実の人々の誘拐や殺害に抗議し始めた。その3年後、政治活動家だった父親が強制失踪し、2011年に拷問を受けた遺体で発見された。2017年には弟も誘拐されたが、翌年釈放された。しかし、マランはその後も強制失踪者のための正義を訴え続け、脅迫や妨害にも屈しなかった。
2019年には、バローチ人の人権問題に焦点を当てた運動「バローチ・ヤクジェティ委員会(BYC)」を設立した。この運動は、バローチ民族の人権侵害に関する意識を高め、正義を追求することを目的としている。
バローチスタンの抵抗運動は1948年に始まり、現在も続いている。パキスタン軍や準軍事組織、情報機関はこれに対し、数万人に及ぶバローチ人男性の誘拐や拷問、殺害を行ってきた。
強制失踪者の家族を代表する非営利団体「バローチ失踪者のための声(VBMP)」によれば、2000年以降で約7,000件の失踪事例が記録されているという。
「私たちは20年以上にわたり、あらゆるプラットフォームで家族のために戦ってきました。裁判所や最高裁判所、政府や司法が設置した委員会にも訴えましたが、いまだに進展はありません」と、VBMPのナスルラ・バローチ会長は嘆いた。
国際法学者委員会(ICJ)の2020年の政策概要でも、強制失踪に関与した者を一人も責任追及していない現状を厳しく批判している。それ以降も状況は悪化しており、マランによれば、ここ3ヶ月だけで300人以上のバローチ人が誘拐され、7件の超法規的殺害が報告されている。
マランは、国際メディアが声を届けてくれることに「希望」を見出している一方で、パキスタン国内メディアの無関心を嘆いている。「国内メディアは私たちを支えてくれませんでした。私たちの正当な訴えは無視されています。」と語った。
一方、パキスタンの著名なジャーナリスト、モハメド・ハニフ氏は、「バローチ問題を報道しないよう、ニュースルームには指示が出されていた。」と述べ、主流メディアの偏見を指摘している。
マランは、2023年に1,600キロメートルを超える長距離を女性たちと共に行進し、失踪者の行方を政府に求めた。彼女の非武装で非暴力の抵抗運動は、伝統的な権力構造をも超え、若い世代に影響を与えている。
「バローチスタンの人々にとって、マランとBYCは希望の灯です。なぜなら、私たちは政治家に対する信頼を完全に失ってしまっているから。」と、1971年以来バローチ民族の権利闘争に関わってきたミール・モハメド・アリ・タルプール氏は指摘した。彼は2015年まで新聞に人権侵害についての記事を書いていたが、「国家からの圧力により、メディアが私の記事を掲載しなくなった。」と語った。
「誘拐し、殺害し、遺体を放置する政策を実行しても、実行者に対する処罰はありません。」「国家は自らの野蛮な植民地的権力を信じているのです。」とハニフ氏は語った。
「強制失踪は、実行者に完全な免責が与えられている限り続くでしょう。情報機関や治安機関に関わる者たちは、法の支配を全く意に介していません。」とユスフ氏は指摘した。そして、若き医師であるマランについて、「誰に対しても憎悪を抱かず、要求を堅持することで、前向きなリーダーシップの資質を示しています。」と評価した。(原文へ)
INPS Japan/IPS UN BUREAU
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