SDGsGoal16(平和と公正を全ての人に)核保有国が対峙する南アジアの緊張:拒絶された仲介と国際秩序の試練

核保有国が対峙する南アジアの緊張:拒絶された仲介と国際秩序の試練

【国連ATN=アハメド・ファティ】

2025年4月22日にインド支配下のカシミールで発生したテロ攻撃により数十人が死亡し、地域全体の紛争再燃への懸念が再び高まっている。これにより、インドとパキスタンの間のかろうじて保たれていた平和が再び緊張の瀬戸際に立たされている。非難の応酬、軍事的シグナル、外交的な膠着、そして国際社会の不安が、攻撃以降の日々を支配している。だが今回、緊張緩和への道筋はこれまで以上に見えづらく、各国の対応は硬直化し、リスクはかつてなく高まっている。

Ahmed Fathi.
Ahmed Fathi.

両国は国連で全く異なる戦略を取っている。パキスタンのアシム・イフティカール国連常駐代表は、5月2日(金)に記者会見を開き、パキスタン政府の立場を表明し、国際社会に即時の対応を求めた。彼はテロ行為を非難すると同時に、インドによるカシミールでの「抑圧的政策」が事態を悪化させていると糾弾し、国際社会がこの問題に沈黙を保てば、さらなる不安定化を招くと警鐘を鳴らした。

イフティカール大使は、ATNの取材(24:05)に対し、アントニオ・グテーレス国連事務総長がシャバズ・シャリフ首相と電話会談を行ったことに言及し、仲介および予防外交に向けた国連の申し出を歓迎したと述べた。彼はまた、事務総長を現地に招待したとし、冷え切った外交関係の中では珍しい前向きな対応を示した。「パキスタンは、特にカシミールのような長年の紛争において、国連の役割が世界の平和と安全の維持に不可欠だと考えています。」とイフティカール大使は語った。

しかし、パキスタンの核政策、特に先制使用に関する直接的な質問(51:42)には応じず、「我々の立場は一貫しており、情報は公にされています。」と述べるにとどまり、エスカレーションか抑制かについての明確な姿勢を避けた。この不透明さは不安を和らげるどころか、むしろ悪化させている。とりわけ、翌日にパキスタンが行った弾道ミサイル発射実験が、インド側から「極めて挑発的」と受け止められている点は深刻だ。

その後、ステファン・ドゥジャリック国連報道官は、パキスタンが事務総長の仲介提案を受け入れた一方で、インドはこれを拒否したことを確認した。グテーレス事務総長は、インドのスブラマニヤム・ジャイシャンカル外相とは会談したものの、ナレンドラ・モディ首相とは接触しておらず、インドが国際的関与から慎重に距離を置いている姿勢が際立った。インドの公式立場は依然として、「カシミール問題は第三者を介さず、シムラ協定(1972年)に基づき二国間で解決すべきだ」というものである。

Stéphane Dujarric/ UN Photo/Evan Schneider
Stéphane Dujarric/ UN Photo/Evan Schneider

このような姿勢はインドの歴史的外交方針と一致するものの、国際的な立場との矛盾を浮き彫りにする。国連安全保障理事会の常任理事国入りを目指すインドが、その制度の根幹である事務総長の仲介を拒否することは、自己矛盾に他ならないのではないか。

パキスタンのミサイル実験は、武力誇示であれ抑止であれ、国家主義の熱狂とメディアが煽る憤りに満ちたこの危機を一層深刻なものとしている。パキスタン側は「定例の演習」であり事前に計画されていたと説明しているが、インド国防当局はこれを「意図的な挑発」と非難している。意図の差はあれ、時機の一致が危険性を増している。

本質的な脅威は「誤算」にある。両国とも核兵器を保有し、迅速な対応を前提とする指揮系統を有しているため、誤認や過剰反応による暴発の余地は極めて狭い。これは単なる国境紛争ではなく、歴史的な傷、地域的野心、そして20億人近い人口を抱える2つの重武装国家による潜在的な全面対立なのだ。

にもかかわらず、国際社会の反応は鈍い。他地域の戦争に注意が向いている現在、西側諸国は一般的な自制を呼びかけるにとどまっている。パキスタンの同盟国である中国は対話を促しているが、国連による対応には賛同していない。ロシアも慎重な立場を取っている。米国は、インドの立場と歩調を合わせる形で「二国間の対話」を支持しているが、特定の仲介提案を支持する発言はしていない。

こうした外交的膠着は、より根本的な問題―すなわち、多国間主義の衰退を浮き彫りにしている。本来、このような紛争を防止するために創設された国連が、各国による権限否定と利害対立によって徐々に周縁化されているのだ。

もし国際社会が安定化の役割を果たせなければ、その影響は南アジアにとどまらないだろう。地域の混乱はエネルギー回廊を脅かし、世界的なサプライチェーンに衝撃を与え、他の地政学的な火種を悪化させかねない。今日の世界は、かつてないほど密接に結びついている。

Image: A map showing the changes in the productivity of ecosystems around the world in the second year after a nuclear war between India and Pakistan. Regions in brown would experience steep declines in plant growth, while regions in green could see increases. (Credit: Nicole Lovenduski and Lili Xia). Source: University of Colorado Boulder.
Image: A map showing the changes in the productivity of ecosystems around the world in the second year after a nuclear war between India and Pakistan. Regions in brown would experience steep declines in plant growth, while regions in green could see increases. (Credit: Nicole Lovenduski and Lili Xia). Source: University of Colorado Boulder.

今必要とされるのは、象徴的な外交を超えた行動である。安全保障理事会は単なる関心表明にとどまらず、実際に動くべきだ。事務総長も反発に屈せず関与を継続すべきだ。そしてインドとパキスタンには、友好国であれ敵対国であれ、「核時代における対立の代償は計り知れない」ことを明確に伝えなければならない。

外交に残された時間は、あまりにも少ない。(原文へ)

INPS Japan/American Television Network

Original Link: https://www.amerinews.tv/posts/india-and-pakistan-un-mediation-rebuffed-as-nuclear-neighbors-square-off

関連記事:

核軍縮の現状維持は許されない、人類は大きなリスクにさらされている

国連は80年の歴史で最大の危機に直面しているのか?

「印パ間の核戦争が世界的大惨事を引きおこす」と新研究が警告

最新情報

中央アジア地域会議(カザフスタン)

アジア太平洋女性連盟(FAWA)日本大会

2026年NPT運用検討会議第1回準備委員会 

パートナー

client-image
client-image
client-image
client-image
Toda Peace Institute
IPS Logo
The Nepali Times
London Post News
ATN

書籍紹介

client-image
client-image
seijikanojoken