ネパールの女子生徒が科学技術教育で力をつける
【カトマンズNepali Times=ボゲンドラ・ラミチャン】
初めて触れたパソコンから広がる世界
西ネパールの山岳地帯にある学校で10年生に在籍するドゥルガ・ブダは、つい最近までパソコンを一度も見たことがなかった。
この地域の多くの若い女性たちは、家事や家畜の世話に縛られ、やがては早婚を強いられるのが一般的だ。だがドゥルガにとって、明滅するコンピューターの画面は、これまで想像したこともない新しい世界への扉となった。
彼女は、EDGE(English and Digital for Girls’ Education:女子のための英語とデジタル教育)と呼ばれる放課後プログラムを通じて、今では自信を持ってインターネットを使い、英語を話せるようになった。
女子が排除される現実

南アジアや途上国の数百万の少女たちは、未来を切り拓くスキルから切り離されている。STEM(科学・技術・工学・数学)は現代生活のあらゆる分野を変革しているが、多くの国で女子生徒は体系的に排除されている。
世界的に見ても、研究者に占める女性は30%未満。特にコンピューター科学や工学などの成長分野ではさらに少なく、この格差は南アジアで一層顕著である。
初期教育の力
女子のSTEMへの関心は15歳頃から低下する。励ましや資源の不足、成功例の欠如が背景にある。早期の教育介入なしには、ジェンダー格差は広がるばかりだ。
安全で包摂的な環境での初期教育は、能力の開発と同時に自信の醸成にもつながる。
EDGEプログラムの成果
EDGEは英国文化会議が展開する有望な取り組みで、女子が英語、デジタルリテラシー、社会的スキルを学ぶ放課後クラブを設置する。特徴はピア・リーダー方式で、女子が仲間を指導しながら協働学習を進める。
これまでに南アジアで2万人以上が参加。ネパールでは98%が「自信がついた」と答え、92%が「高等教育を目指す動機づけになった」と答えている。
社会を変える力
EDGEの成果は教室を超えて広がっている。参加者の活躍は地域社会の家父長的規範に挑み、ICTフェアや地域発表会を通じて女子の可能性を示す。
ドゥルガは早婚を期待されていたが、今では可能性の象徴と見なされている。調査によると、95%の参加者が「女子教育に対する家族の姿勢が改善した」と報告している。
海外進学とリーダーシップ
英国文化会議の「Women in STEM奨学金」は、AIやデータ科学、再生可能エネルギーなどの修士課程にネパール女性を送り出す。昨年は6人が奨学金を受給し、未来を形づくる分野でのリーダーシップに一歩を踏み出した。
STEM教育の意義
STEM教育は市民教育や民主的価値観を育み、デジタルリテラシーは情報アクセスや公共生活への参加を可能にする。
経済的にも、STEMにおけるジェンダー格差解消は国家GDPを押し上げる可能性がある。しかし「人口の半分を未来から排除する社会は繁栄できない」という道義的理由はさらに強い。
気候危機、公衆衛生の緊急事態、デジタル変革には多様で包摂的なリーダーシップが必要だ。EDGEの教訓は明快である―変化は可能であり、そして早く始まる。(原文へ)
ボゲンドラ・ラミチャンは英国文化会議ネパール 英語・学校教育リード、EDGEプログラム担当
INPS Japan
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