SDGsGoal16(平和と公正を全ての人に)分断された世界で橋を架ける「世界伝統宗教指導者会議」

分断された世界で橋を架ける「世界伝統宗教指導者会議」

【Astana Times=マラト・カリジャノフ】

国際関係における緊張が高まるなか、文明・文化・宗教間において建設的な解決策を提示し、信頼を育む持続可能な人道プラットフォームの必要性は一層切実なものとなっている。今日の国際課題の核心には、宗教間・宗派間対話、調和、相互尊重と理解、さらにはグローバルな協力とパートナーシップがある。

こうした世界的状況のなかで、「世界伝統宗教指導者会議」は、カザフスタン発の独自かつ顕著な外交イニシアチブとして台頭してきた。新千年紀の幕開けにアスタナで初めて開催されて以来、この宗教間フォーラムは四半世紀の歩みを経て、世界的に認知される権威ある国際機関へと発展した。

会議の使命は多面的かつ深遠であり、世界的調和の灯台としての役割を担っている。その核心は、主要な宗教・伝統宗教に共通する道徳的・人間的価値を見いだし、言語化することにある。この作業が、多様な信仰体系を越えた相互理解の架け橋を築く基盤となっている。

Kazakhstan celebrates peoples unity day. Cedit Silkway TV
Kazakhstan celebrates peoples unity day. Cedit Silkway TV

会議は、信仰や告白、国籍や民族を超えた相互尊重と寛容を育むことを目的とし、宗教的感情を紛争や軍事侵攻の口実として悪用する危険を防ぐことにも積極的に取り組んでいる。今日の複雑な世界において、これは極めて重要な課題である。

結局のところ、この会議は常設の国際宗教間機関として存続し続けている。その結果、将来の集会を導く理念とビジョンの継続的かつ専門的な発展が担保され、世界平和と対話を推進する持続的な原動力としての地位を固めている。

活動は明確に示している。矛盾や対立、分断、精神的緊張が高まる世界においてこそ、宗教間対話、連帯、価値に基づくリーダーシップ、協力といった道筋が、異なる信仰の間にある不信感と疎外感を実際に和らげるのだと。

とりわけ世界的危機の時期にあっても持続性と成功を維持してきたことは、イスラム教、キリスト教、ユダヤ教、仏教、ヒンドゥー教、道教、神道、ジャイナ教、ゾロアスター教、バハイ教など、世界の著名で尊敬される宗教指導者を一堂に会する能力によって証明されている。国際機関の代表や政治指導者の参加も、カザフスタンの「精神外交」の戦略的先見性と高まる権威を物語っている。

歴史的展望

この会議は、2003年にカザフスタンが主導し誕生した。世俗的価値と平和への献身に基づく同国の姿勢は、9・11同時多発テロ後に高まった宗教的過激主義のリスクに対する応答でもあった。多民族・多宗教社会としてのアイデンティティに根ざし、平和的共存と寛容を体現する国のビジョンを反映した取り組みである。

Palace of peace and reconciliation, CC BY-SA 3.0
Palace of peace and reconciliation, CC BY-SA 3.0

2003年9月23~24日の第1回会議には、イスラム教、キリスト教、ユダヤ教などの代表者が相互尊重の精神で集まった。ヨハネ・パウロ2世、モスクワ総主教アレクシー2世、国連事務総長コフィ・アナンらの支持も得て、宗教間対話の制度化や国際機関との協働、メディア・若者・学術界との連携、寛容の推進による暴力と過激主義の克服が宣言された。

その後も、2006年の第2回会議(新設の「平和と調和の宮殿」で開催)、2009年の第3回会議、2012年の第2回会議、2015年の第5回会議、2018の第6回会議へと発展を続けた。それぞれの場で採択された宣言や設立された「宗教指導者会議」は、制度的枠組みを固め、宗教間協力を世界規模で推進する土台となった。

最新会議からの教訓
pope Fransisco(Left)and Kassym-Jomart Kemeluly Tokayev, President of Kazakhstan (Right). Photo: Katsuhiro Asagiri, President of INPS Japan
pope Fransisco(Left)and Kassym-Jomart Kemeluly Tokayev, President of Kazakhstan (Right). Photo: Katsuhiro Asagiri, President of INPS Japan

2022年9月14~15日の第7回会議は、アスタナ宗教間サミットが正式に国際的プラットフォームとして制度化される重要な節目となった。50か国から100を超える代表団が参加し、ローマ教皇フランシスコとアズハルのグランドイマーム・アフマド・タイーブ師が初めてそろって出席したことは、分断の時代における会議の国際的重みを象徴した。

カシム=ジョマルト・トカエフ大統領は基調演説で、宗教指導者を「人類の道徳的羅針盤」と位置づけ、真の平和には誠実な対話、国際規範の遵守、国家主権の尊重が不可欠だと強調した。

会議は最終宣言を採択し、2023~33年の「長期開発コンセプト」の策定を事務局に付託した。同コンセプトは2023年10月に承認され、2024~25年行動計画では宗教間協力の拡大、対話の深化、会議の地位強化が重点として打ち出された。

7th Congress of Leaders of World and Traditional Religions Group Photo by Secretariate of the 7th Congress
7th Congress of Leaders of World and Traditional Religions Group Photo by Secretariate of the 7th Congress
国際宗教間・宗派間対話センターの意義

大きな進展の一つが「国際宗教間・宗派間対話センター」の設立である。これは恒常的な拠点として、宗教・専門家コミュニティの間で持続的な交流を支える強固な基盤を築いた。中核には「宗教指導者会議」があり、戦略的監督を担う。事務局と作業部会、若手宗教指導者フォーラムが実務を進め、センターが直接的に関与している。

卓越した持続性と適応力

20年以上にわたり、この会議は急速に変化する国際秩序に対して卓越した持続性と適応力を示してきた。従来の外交では対応しきれない隙間を埋める「トラック2外交」の有効な手段として機能していることを、トカエフ大統領も強調している。

人道的イニシアチブとして始まったこの取り組みは、今日では世界安定のための制度化された動的メカニズムへと転じた。精神外交が古典的な外交手段を補完し、分断された世界に理解と協力をもたらす具体例となっている。

今後、世界的分断とイデオロギー的対立が強まるなか、今年9月に予定される第8回会議「宗教間対話――未来への相乗効果」は画期的な国際イベントとなる見込みである。倫理的誠実さに基づき、調和、相互理解、寛容、団結、平和、安全を推進する実践的な影響をもたらすことが期待される。(原文へ

筆者:マラト・カリジャノフ(国際宗教間・宗派間対話センター理事会代行議長)※本記事に記された見解は筆者個人のものであり、『アスタナ・タイムズ』の立場を必ずしも反映するものではない。

INPS Japan

Original URL: https://astanatimes.com/2025/07/why-congress-of-leaders-of-world-and-traditional-religions-builds-bridges-in-divided-world/

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