【オスロIPS=オスロ平和研究所】
戦場はもはや遠い存在ではなくなった。数億人の女性にとって、それは隣家に迫っている。オスロ平和研究所(PRIO)の最新報告によると、昨年、世界の女性人口の約17%にあたる6億7600万人が、致死的な紛争から半径50キロ圏内で暮らしていた。冷戦終結以降、過去最高の数値である。
歴史的なピーク
2024年は、紛争にさらされる女性の数が歴史的に最多となった。1990年以降、その数は2倍以上に膨れ上がり、暴力の拡大と紛争が人口密集地にまで広がっている現実を映し出す。
昨年だけで、約2億4500万人の女性が戦闘関連死が25人を超える地域に、さらに1億1300万人が死者100人を超える地域に居住していた。
バングラデシュは絶対数で最も多く、約7500万人の女性が紛争地に近接して暮らしていた。暴力の主因は7月から8月にかけての全国的な抗議行動であり、シェイク・ハシナ前首相の退陣につながった。
シリア、レバノン、イスラエル、パレスチナでは、女性人口全体が直接的に致死的暴力の影響を受けている。
生活への深刻な影響
紛争地に近い生活は、女性の権利と安全を深刻に損なう。紛争は母体死亡率の上昇やジェンダーに基づく暴力のリスク増大を招き、女子教育へのアクセスを阻み、雇用におけるジェンダー格差を拡大させる。こうした影響は即時的な安全を脅かすだけでなく、長期的な福祉や経済的展望も奪う。
「紛争は戦場にとどまらず、女性の家庭や学校、職場にまで及び、生活の基盤を破壊している」と、報告書の著者でPRIO研究部長のシリ・オース・ルスタッド氏は述べる。「一部の女性は危機の中で新しい役割を見出すこともあるが、その機会は脆弱である。厳しい現実は、戦争がジェンダー格差を広げ、女性をより危険にさらすということだ。」
地域ごとの違い
報告は、国や地域による際立った差異を浮き彫りにしている。2024年のレバノンでは、女性人口の100%が死者100人超の紛争から50キロ圏内に暮らしていた。
パレスチナ自治区では、約80%の女性が死者100人を超える地域に居住し、残りの20%も死者1~99人の地域に住んでいる。さらに3分の1以上は死者1000人超の地域近くに暮らす。シリアでも、大多数の女性が中~高強度の紛争にさらされている。
ナイジェリアでは、ボルノ州の女性がボコ・ハラムや「イスラム国」による暴力に直面している一方、南南部では分離主義運動の暴力が拡大している。
長期的な代償
女性が紛争地に暮らす割合が高い国は、国連の人間開発指数(HDI)が一貫して低く、教育・保健・生計に対する長期的な影響が顕著に表れている。
顕在化しにくい長期紛争は、社会や経済の基盤を着実に蝕んでいく。さらに国際援助の削減が、インフラの弱体化と女性の脆弱性の深刻化に拍車をかけている。(原文へ)
オスロ平和研究所(PRIO)は、平和と紛争研究の世界的拠点である。暴力の要因と、国家・集団・個人間の平和的関係を可能にする条件を探究している。
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