INPS Japan/ IPS UN Bureau Report国連は「肥大化し、焦点を欠き、時代遅れで非効率」なのか?

国連は「肥大化し、焦点を欠き、時代遅れで非効率」なのか?

【国連IPS=タリフ・ディーン】

米国の国連への敵意が高まるなか、資金難にあえぐ世界機関・国連は経済的な生存をかけてもがいている。先週、国連の行政・予算委員会で演説したジェフ・バートス米国大使(国連管理改革担当代表)はこう述べた。「トランプ大統領の言う通りだ。国連は国際的な課題を解決する上で重要な機関になり得るが、創設時の目的から大きく逸脱してしまった。」

「この80年の間に、国連は肥大化し、焦点を失い、しばしば非効率であり、時には問題の一部にさえなっている。国連が本来の使命を果たしていないことは、憂慮すべきであり否定できない事実だ」と。

米国は創設以来、国連における最大の資金拠出国であり、最新の分担率に基づけば「米国の拠出額は他の180カ国の合計を上回る」と彼は指摘した。

「米国にとって、“これまで通り”の時代は終わった。本会期中、我々はこの委員会と協力して、無駄な支出を一層削減し、説明責任を強化し、結果重視の改革を進めていく。」

彼は、特別政治ミッションの予算削減や不要な現地事務所の閉鎖、執行部局の統合など、すでに提案されている措置を「例外ではなく、標準にすべき決定だ」と述べた。

先月、トランプ大統領は国連総会で次のように発言した。

「国連の目的とは何か? その潜在力をまったく発揮していない。」
彼は国連を時代遅れで非効率な組織として切り捨て、こう誇った。
「私は7つの戦争を終結させ、それぞれの国の指導者と直接交渉したが、国連から“和平をまとめる手助けをしよう”という電話は一本もなかった。」

しかし、国連の政治的非効率の最大の要因は、安全保障理事会の5常任理事国―米国、英国、フランス、中国、ロシア――存在にある。これらの国々はしばしば、自国の同盟国が人権侵害や戦争犯罪、ジェノサイドで非難されても、迅速に擁護に回る。

一方で、米国はすでに世界保健機関(WHO)と国連人権理事会(UNHRC)から脱退、または脱退手続き中であり、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)と国連教育科学文化機関(UNESCO)への資金拠出も停止している。

では、攻撃的なトランプ政権のもとで、国連はどう生き残るのか?

ニューヨーク大学グローバルアフェアーズ・センターの国際関係学教授(退職)であるアロン・ベン=メイル博士はIPSの取材に対し次のように述べた。
「トランプ政権の国連への扱い方を形容するなら、自滅的であり、米国の国益を著しく損ね、同時に世界における米国の影響力を大きく蝕んでいる、というほかない。」

「『アメリカを再び偉大にする』と訴えるトランプ大統領が、国連という、米国が創設以来他のどの国よりも主導的役割を果たしてきた唯一の国際機関に対し、これほどまでに露骨な敵意を示すとは理解に苦しむ。」

バートス大使の発言は「よくて不正確、悪く言えば全くの誤り」だと彼は指摘する。

確かに、国連には安全保障理事会をはじめ多くの機関で大幅な改革が必要であることは周知の事実だ。

しかし、国連が世界各地で果たしている重要な人道的活動を一括して否定し、貧困国の何百万人もの命を支える支援を削り、主要機関から脱退することは、「非人道的であり、米国の指導力と国益を深刻に損なう」とバートス大使は語った。

「パンデミックなどの危機対応や国際的な保健基準の策定を担うWHOから撤退することを、どんな論理で正当化できるのか? 米国はむしろこのような機関を強く支援すべきであり、その活動を主導することで米国の影響力を高めるはずだ。」

また、世界的な人権の促進と保護を目的とするUN人権理事会からの脱退も理解し難いとし、
「この離脱によって米国は人権侵害を防ぐ国際的役割を放棄し、結果的に国際的な監視体制を弱体化させている」と批判した。

「トランプは人権侵害など意に介さないのかもしれない。だが、このような離脱が米国の国益にどのように資するというのか?」と彼は問いかけた。

国際NGO「コンシエンス・インターナショナル」のジェームズ・E・ジェニングス博士もIPSの取材に対し次のように語った。「国連機関への支援は、世界の保健と安定にとって不可欠である。戦争、自然災害、飢饉の最前線で国連機関とともに活動してきた者にとって、赤ん坊の口から食べ物を奪い、子どもたちの教育を拒み、病気と疫病を放置するような非人道的行為は想像すらできない。これは政治ではない。いじめだ。世界はその本質を見抜くべきだ。」

ジェニングス博士は、トランプ氏の行動には一貫した「パターン」があると指摘する。
「例えば民主党支持州のカリフォルニアやイリノイを“犯罪まみれで無法地帯だ”と攻撃し、ICE(移民・関税執行局)の部隊を送り込み、見せしめのように“治安回復”を演出する。数日後には『ほら、ポートランドもシカゴも平穏になった』と自慢するが、実際には何の改善もなく、普通の市民が暴力を受けただけだ。」

ジェニングス博士はこう続けた。「国際舞台でも同じ手法が見られる。国連の和平努力を軽視・排除したうえで、紛争寸前の国の指導者に電話をかけ、『7つの戦争を終わらせた』と誇る―まったくのナンセンスだ。」

「トランプの狙いは国連を排除することではなく、支配することだ。米国は最大の資金拠出国であるため、彼の意のままに国連を屈服させる可能性がある。各国指導者、米国民、そして世界の人々が、彼の計画に断固反対しない限り」とジェニングス博士は警鐘を鳴らした。(原文へ

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