【マルメIPS=ステファニー・ダウレン】
現在の米国政権による逆行的な抵抗にもかかわらず、世界はグリーンエネルギーの未来へと確実に歩みを進めている。各国政府は化石燃料の段階的廃止を誓い、企業は電気自動車を推進し、金融機関は太陽光や風力、蓄電池分野に数十億ドルを投じている。ついに、化石燃料からクリーンエネルギーへの不可避な転換が現実のものとなりつつある。
しかし、華々しい見出しの裏には、より暗く、不都合な現実が潜んでいる。クリーンエネルギー技術に不可欠とされる「移行期鉱物(トランジション・ミネラル)」の採掘競争が、新たな破壊の波を引き起こしているのだ。
このまま進めば、貧困、不平等、搾取、暴力、環境破壊を固定化し、私たちをさらなる崩壊へと導くだろう。今日の地球危機を生み出した「コスト無視の採掘」モデルに、問題解決を託すこと自体が誤りなのである。
フォレスト&ファイナンス連合の新しい報告書によると、銀行や投資家は環境汚染や人権侵害を繰り返す企業を資金提供で報いている。
2016~2024年に提供された4930億ドルの融資・引受金のうち半分以上、そして保有されている2890億ドルの債券・株式の80%以上が、わずか10社のトランジション・ミネラル採掘企業に集中していた。恩恵を受けた企業には、グレンコア、ヴァーレ、リオ・ティントなどが名を連ねる。
擁護派は「再生可能エネルギーにはトランジション・ミネラルが欠かせない」と主張する。だが、需要削減やリサイクル、再利用よりも採掘拡大を優先した結果、新たな鉱山開発が急速に進んでいる。「グリーン」や「クリーン」と称されるエネルギーの物語は、現実の代償を覆い隠し、化石燃料時代の搾取的モデルを再び正当化しているのだ。
鉱山開発がもたらす被害は深刻だ。ブラジルではヴァーレ社による2度のダム崩壊で数百人が犠牲となり、有害廃棄物が流出して環境を破壊した。にもかかわらず、2019年の2度目の事故後も銀行は同社への融資を拡大した。
インドネシアではハリタ・グループのニッケル精錬施設が石炭火力で稼働し、温室効果ガス排出の増加と公衆衛生の悪化を招いている。オビ島の地域住民は、発がん性廃棄物による飲料水汚染に苦しんでいる。
最近の調査では、ハリタ社の幹部がこの汚染を10年以上にわたり把握しながら隠蔽していたことが判明した。金融機関はその間も同社の事業拡張と2023年の株式上場を支援していた。
これらは単なる不祥事ではなく、企業が責任を免れ、金融機関が何度も利益を命より優先する仕組みの表れである。実際、トランジション・ミネラル鉱山の約70%が先住民または地域共同体の土地と重なり、70%超がすでに気候ストレスにさらされた生物多様性の高い地域に位置している。
一方、裕福な国々は高級市場向け電気自動車の生産のためにより多くの鉱物を求めているが、アフリカでは6億人、アジアでは1億5000万人がいまだに電力を利用できないままである。
これが「公正なエネルギー移行」の設計図とは言えない。むしろそれは、新たな搾取のフロンティアであり、富裕層のテスラを走らせる一方で、労働者は搾取され、河川は汚染され、地域社会は追われている。気候危機への対処どころか、破壊を容認する現状を改めるために、いまこそ抜本的な改革が求められている。
私たちは、鉱物の調達、資金の流れ、統治のあり方そのものを変えなければならない。
銀行や投資家は、先住民の自由で事前かつ十分な合意(FPIC)を尊重し、人権擁護者を保護し、被害を受けた地域社会への救済を確保すべきである。
また、森林破壊ゼロの拘束力ある基準、有害廃棄物の厳格な管理、深海採掘など高リスク行為の禁止を通じて自然を守らなければならない。さらに、資金提供の透明性を高め、企業グループ全体に環境・社会・ガバナンス(ESG)方針を徹底させ、苦情処理メカニズムの実効性を確保すべきである。
気候目標に沿った金融を実現するためには、石炭火力精錬所への依存を終わらせ、有害な慣行を段階的に廃止し、鉱山企業に実行可能な移行計画を求めなければならない。
政府もまた、鉱物需要の公平な削減、富裕国での過剰消費の抑制、そしていまだ電力から取り残された何十億人へのアクセス確保を可能にする強力な規制を打ち出すべきである。国連が策定中の「重要鉱物に関する原則」など国際的枠組みも、より強化され、実施されなければならない。
私たちはまだ「公正なエネルギー移行」を選ぶことができる。人々と生態系への敬意に基づき、公平なクリーン電力へのアクセスを実現する移行である。公正な移行には、公正な金融が不可欠だ。資本は搾取ではなく、公平性、説明責任、持続可能性へと流れなければならない。そのような転換こそが、排出量の削減にとどまらず、今日の危機を生み出した搾取的モデルからの決別を意味する。
これが「公正なエネルギー移行」の設計図とは言えない。むしろそれは、新たな搾取のフロンティアであり、富裕層のテスラを走らせるために、労働者は搾取され、河川は汚染され、地域社会は追われている。気候危機への対処どころか、破壊を容認する現状を正すために、いまこそ抜本的な改革が求められている。(原文へ)
ステファニー・ダウレン氏は、レインフォレスト・アクション・ネットワーク(フォレスト&ファイナンス連合の一員)の森林キャンペーナー。
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