【国連IPS=タリフ・ディーン】

国連によれば、核実験の歴史は1945年7月16日、米国がニューメキシコ州アラモゴード砂漠の試験場で初の原子爆弾を爆発させたことに始まる。
その後、1945年から包括的核実験禁止条約(CTBT)が署名開放された1996年までの半世紀の間に、世界各地で2000回以上の核実験が行われた。
- 米国:1945~1992年に1032回
- ソ連:1949~1990年に715回
- 英国:1952~1991年に45回
- フランス:1960~1996年に210回
- 中国:1964~1996年に45回
- インド:1974年に1回
1996年9月のCTBT署名開放以降にも10回の核実験が実施された。
- インド:1998年に2回
- パキスタン:1998年に2回
- 北朝鮮:2006年、2009年、2013年、2016年、2017年に各1回(ただし2006年は2回)

そして10月30日、ドナルド・トランプ大統領は中国の習近平国家主席との会談を前に、ソーシャルメディア上で「30年以上ぶりに核兵器実験を再開する」と表明した。しかも今回は「ロシアと中国と対等な立場で」と語った。
米国の核実験場とその被害
主な米国の核実験場は、ネバダ核実験場(現ネバダ国家安全保障サイト)、マーシャル諸島およびキリスィマスィ島(クリスマス島)周辺の太平洋実験場であった。そのほか、ニューメキシコ、コロラド、アラスカ、ミシシッピ各州でも実験が行われた。中でもネバダ核実験場は最も活発で、1951年から1992年までに1000回以上の実験が実施された。
9月26日の「核兵器の全面的廃絶のための国際デー」における会合で、アントニオ・グテーレス国連事務総長は次のように警告した。「核実験の脅威が再び現れ、核の威嚇は過去数十年で最も激しくなっている。」
中国・ロプノール実験場とウイグル人の被害
10月29日付のニューヨーク・タイムズ紙は「中国、原子力開発で世界の先頭に立とうと競争」と題した記事を掲載し、1964~1996年にかけて中国が実施した45回の核実験を振り返った。

報告によれば、中国の核実験被害者、特に新疆ウイグル自治区のウイグル人は、放射線被曝による健康被害をほとんど認知されず、政府によって声を封じられている。「中国政府は、核実験計画が地元住民にもたらした壊滅的影響に関する情報を意図的に抑圧している。」と報告は指摘している。
人工知能による分析結果によれば、中国の核実験には大気圏内と地下の両方が含まれ、そのうち22回が大気圏内で行われ、地域住民は深刻な放射能汚染にさらされた。政府は「不毛で無人の地域」と説明したが、実際にはウイグル人の遊牧民や農民が何世紀にもわたって暮らしていた。独立研究者や証言によると、新疆では中国全土と比べ、がん、白血病、奇形、退行性疾患の発生率が異常に高いことが確認されている。
「被曝者」の連帯と国際的責任

NGO「World BEYOND War」および「Global Network Against Weapons and Nuclear Power in Space」の理事で、核時代平和財団の国連NGO代表も務めるアリス・スレーター氏はIPSの取材に対して、
「中国がロプノールで風下の住民を不当に扱ってきたことは確かだが、それはネバダ核実験場、カザフスタンのセミパラチンスク核実験場、マーシャル諸島での被曝者への扱いと比べて、より悪質と言えるだろうか。」と問いかけた。
「この破滅的な時代に、中国から学べることは何か。中国とロシアは、宇宙空間での兵器配備禁止と宇宙戦争防止のための条約交渉を共同提案し、宇宙に兵器を最初に配備しない、また使用しないと誓約している。一方、米露は依然として核弾頭を発射即応態勢のミサイルに搭載しているが、中国は弾頭をミサイルから分離して保管している。」と語った。
スレーター氏はさらに、「核兵器禁止条約(TPNW)は、50か国が批准した時点で発効した。現在ではさらに多くの国が署名・批准しているが、核保有国も、米国の核の傘の下にいる同盟国も、いずれも署名していない。」と指摘した。
CTBTの限界と課題

国際原子力機関(IAEA)元検証・安全保障政策部長のタリク・ラウフ氏は、IPSの取材に対して、「包括的核実験禁止条約(CTBT)は不完全な条約なのではないか?」と語った。
ラウフ氏によれば、当初の目標は核拡散防止と核軍縮を真に包括的に実現することだったが、条約には実質的な軍縮への連関が欠けている。
「交渉過程で、核実験禁止の目的は核兵器の全面廃絶という最終目標から切り離されていった。最終文書では、前文での軍縮への期待と実際の条文との関連を非核兵器国は辛うじて維持したにすぎない。」
さらに、CTBTは非爆発的な実験を容認しており、今日の技術進歩により、それが新たな核兵器の設計・改良に利用される可能性がある。
中国、ロシア、米国(北朝鮮、インド、パキスタンも?)では、核実験場が依然として稼働可能な状態にある。一方、フランスのみが自国の実験場を閉鎖した。
また、ラウフ氏は、「中国、エジプト、イラン、ロシア、米国はいまだ批准しておらず、NPT会合でも圧力はかけられていない。非署名国の北朝鮮、インド、イスラエル、パキスタンも同様である。CTBTが発効する見通しはほとんどないが、核実験モラトリアムが続くことを願うばかりだ。」と語った。
また、「カザフスタンとマーシャル諸島は、核実験被害者支援のための国際信託基金の設立をTPNW第6条に基づき主導しているが、CTBTには被害者支援の条項が存在しない。」と指摘した。
CTBTの意義とトランプ発言への反応
国連によれば、包括的核実験禁止条約は地表、大気圏、水中、地下を問わず、あらゆる場所での核実験を禁止している。この条約は核兵器の開発と高度化を阻止する意義を持ち、既存の核兵器保有国による新型兵器の開発を困難にし、非核保有国が新たに核兵器を開発することをほぼ不可能にしている。さらに、人間と環境への被害防止にもつながる。
一方、トランプ氏の発言を受け、米上院軍事委員会筆頭民主党議員のジャック・リード上院議員(ロードアイランド州)は強く批判した。

「トランプ大統領は再び核政策を誤解している。今回は国防総省に核実験再開を命じたようだが、核兵器複合体と試験活動を管理するのは国防総省ではなくエネルギー省である。」
リード議員はさらに、「1990年代以来維持されてきた核爆発実験モラトリアムを破れば、ロシアや中国も実験再開に踏み切るだろう。それは戦略的に無謀である。さらに、米国の実験再開はパキスタン、インド、北朝鮮に自国の実験拡大を正当化させ、すでに脆弱な核不拡散体制を一層不安定化させる。米国が得る利益は極めて小さく、数十年かけて築いてきた不拡散の成果を失うことになる。」と警告した。(原文へ)
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