地域アジア・太平洋ニューデリーの危険な賭け:変動する地域秩序の中でタリバンを迎え入れること

ニューデリーの危険な賭け:変動する地域秩序の中でタリバンを迎え入れること

【ニューデリーLondon Times=ヌーラルハク・ナシミ】

歴歴史的な展開として、10月9日、インド政府はタリバン暫定政権のアミール・カーン・ムッタキー外相を受け入れた。2021年8月にタリバンが権力を掌握して以降、初の高官級訪問である。時期の選定は偶然ではない。ロシアがタリバンを正式承認し、中国も関与拡大の姿勢を示す中、地域の力学は変化し、アフガニスタンにおけるインドの伝統的影響力は相対的に弱めつつあった。

Vladimir Putin. Photo: ЕРА
Vladimir Putin. Photo: ЕРА

昨年7月、ロシアは、タリバンが2021年に政権を再掌握して以来、同暫定政権を正式に承認した最初の国となった。あわせて、事実上の政権を「テロ組織」指定リストから外した。これは場当たり的な外交判断ではなく、段階的に進めてきた関与の延長線上にある。ロシアは米軍撤退後もカブールの大使館を閉鎖せず、2022年には石油・ガス・小麦をめぐる合意を結ぶなど、タリバン指導部との関係を着実に深めてきた。

ロシアの決定が「ドミノ効果」を生み、他の地域大国が追随するのではないかとの観測は、以前から強まっていた。その有力候補として浮上したのが中国である。中国はロシアの判断を速やかに歓迎し、外務省の毛寧報道官は「アフガニスタンを国際社会から排除すべきではない」と述べた。この発言は儀礼的な域にとどまらず、明確な戦略的意図を示すシグナルと受け止められた。

Image: President Xi Jinping of China, 10 March 2023. Credit: Xinhua News
Image: President Xi Jinping of China, 10 March 2023. Credit: Xinhua News

中国が重視するのは、アフガニスタンの鉱物資源に加え、戦略的要衝としての地理的位置、そして新疆への過激派脅威を抑える安全保障上の緩衝地帯としての価値である。中国がタリバン暫定政権を正式承認すれば、北京—モスクワ—イスラマバード—カブールの連携が固定化し、地域の新たな経済・安全保障の枠組みの中でインドが周縁化される可能性がある。

こうした構図のもと、インド政府は二重のジレンマに直面する。ロシアの承認と中国の関与拡大は、地域連結性プロジェクトや安全保障調整からインドを排除する方向に働き得る。さらに、ロシアと中国の外交的後ろ盾のもとでタリバン—パキスタン協力が進めば、アフガニスタンに活動拠点(いわゆる安全地帯)を得た反インド武装勢力が勢いづく恐れもある。他方で、タリバンのムッタキー外相を受け入れることは、インドが道義的立場を損ない、人権や民主主義の原則より現実主義(リアルポリティクス)を優先したと受け取られかねない。

Map of India
Map of India

それでも、インドが地域的影響力を守り、過激主義の脅威がさらに根を張ることを防ぐのであれば、傍観者でいる余地はない、という指摘には一理ある。

ただし、その際には、関与が事実上の統治当局(タリバン暫定政権)への正統性付与と受け取られないための具体的な枠組みが欠かせない。たとえば、人道支援を継続しつつ、現地のNGOや信頼できる国際機関と連携して支援を届ける方法がある。国外にいるアフガニスタンの女性や少女に対して大学奨学金を拡充することも可能だ。さらに、タリバンの制限を回避する手段として、オンライン学習プラットフォームやデジタル教室の整備を支援する選択肢もある。世界有数のIT大国であるインドには、こうした分野で独自に貢献できる余地がある。

戦略面では、タリバン暫定政権とのいかなる関与においても人権を中心に据え、同政権に代わり得る政治的選択肢を育てる視点が重要となる。筆者はこの5年ほど、ロンドンの慈善団体「Afghanistan and Central Asian Association(ACAA)」の創設者兼ディレクターとして、タリバンに対抗し得る組織的な政治的反対勢力の必要性を訴えてきた。亡命下であれ国内であれ、民主主義原則と人権に根差す代替ビジョンを提示できる反対勢力は、タリバンが国際社会で「アフガン国民唯一の声」と見なされることを防ぐうえで、重要な対抗軸になり得る。

Photo: The UN has been supporting displaced families in Afghanistan, providing emergency shelter and protection. Credit: IOM/Mohammed Muse
Photo: The UN has been supporting displaced families in Afghanistan, providing emergency shelter and protection. Credit: IOM/Mohammed Muse

その例の一つが、ダリウス・ナシミ(ACAAの資金調達・パートナーシップ責任者)が設立した「Afghanistan Government in Exile(AGiE)」である。AGiEは、人権、民主主義、安定を掲げる包摂的連合であり、タリバンへの対抗軸として機能し得る。

一般のアフガン市民の苦境は、すでに深刻である。パキスタンとイランから数千人規模が強制送還され、タリバンが十分な保護や生計支援を提供できない状況下のアフガニスタンへ戻されている。国内人口の3分の2が支援を必要としている一方、人道支援の財政と体制は逼迫し、医療も崩壊の瀬戸際にある。国際的な「ドナー疲れ」、米国の支援凍結、国際社会の関心の移行を背景に、人道資金は急減している。送還された人々は逮捕や拷問、さらには処刑の危険にさらされている。教育、就労、移動の自由を奪われた女性と少女もまた、権利を剥奪された生活へと送り返されている。

Photo: US troops leaving Afghanistan. Source: Daily News, Sri Lanka.
Photo: US troops leaving Afghanistan. Source: Daily News, Sri Lanka.

状況をさらに悪化させ得る要因として、英国はARAPとACRSの終了を発表した。両制度は、NATOや英軍に協力し、タリバンによる迫害から逃れるアフガン人にとって、英国での再定住に向けた数少ない合法的ルートだった。英国国防省の個人情報流出を受け、情報が流出した対象者は現在も危険にさらされている。ACAAはこの発表を受け、ARAP終了の是非を争う司法審査(judicial review)の申立てに向けた法的手続きの準備に着手した。

世界が一般のアフガン市民の苦しみを忘れ去りかねない今、インドには、人権を軸に国際的対応を主導する余地がある。アフガンの人々の民主的な代表性を確保し、人権を求める取り組みをつなぎとめるためである。

ヌーラルハク・ナシミは(ACAA=Afghanistan and Central Asian Association)の創設者兼CEO。

Original URL: https://londonpost.news/new-delhis-risky-gamble-hosting-the-taliban-amid-a-shifting-regional-order/

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