ニュースアーカイブ核兵器を禁止する法的拘束力のある条約(レイ・アチソン「リーチング・クリティカル・ウィル」代表)

核兵器を禁止する法的拘束力のある条約(レイ・アチソン「リーチング・クリティカル・ウィル」代表)

【ニューヨークIPS=レイ・アチソン】

2010年に核不拡散条約(NPT)の「行動計画」が採択されてから5年、核軍縮に関連した約束への遵守は、核不拡散あるいは原子力平和利用の関連のそれに比べて、はるかに立ち遅れている。

しかし、その同じ5年の間に、あらたな証拠と国際的な議論が、核兵器使用の壊滅的な帰結と、意図的であれ偶発的であれ核の使用がもつ容認しがたいリスクに焦点をあててきた。

こうして、NPTの完全履行、とりわけ核軍縮に関する履行が、以前にもまして急を要する問題となってきた。核軍縮のもっとも効果的な手段のひとつは、核兵器を禁止しその廃絶の枠組みを確立する法的拘束力のある条約の交渉であろう。

Ray Acheson, Reaching Critical Will
Ray Acheson, Reaching Critical Will

しかし、そのことにコンセンサスがあるわけではない。

実際、4月27日から5月22日にかけてニューヨークで開催される予定の2015年NPT運用検討会議を前にして、NPT上の核保有国と核依存同盟国は、そうした交渉によってNPTは「損なわれ」ると論じ、「行動計画」は長期的なロードマップであって、少なくとも次の運用検討サイクルまで「延長」すべきであると主張している。

これは、意味ある行動に向けた機会となるはずのものに対する、きわめて退行的なアプローチだ。NPT第6条を履行するための法的枠組みについて交渉することが、条約を「損なう」はずがない。

逆に、それは最終的に核保有国にその法的義務を果たさせるものになるはずだ。

核兵器を保有しているかあるいはそれに依存している国家は、核拡散を防止し安全保障を高める上でのNPTの重要性を強調してきた。

しかし、その同じ国々が、その他の加盟国以上に、軍縮のために必要な具体的な行動を防止し、回避し、遅らせることによって、条約をおおいに損なっているのである。

NPT上の核保有国やその核依存同盟国は、その責任や誓約、義務を今こそ果たすべきだ。さもなくば、彼らが守らねばならないと訴えている条約体制そのものが損なわれてしまうだろう。

Photo: Wide view of the General Assembly Hall. UN Photo/Manuel Elias
Photo: Wide view of the General Assembly Hall. UN Photo/Manuel Elias

彼らがその約束を履行しないことは、NPTの将来に暗い影を投げかけている。こうした不履行が永久に続き、核兵器を保有し続けるだけではなく核兵器システムを改修・配備できると期待しているならば、それは誤っている。

2015年NPT運用検討会議は、他の諸政府がこうした行動に直面・挑戦し、協調的かつ即時の行動を要求する機会を提供することだろう。

加盟国は、この5年間の事態について真摯に評価を加えるだけではなく、NPTを今後も生き長らえさせ、核軍拡競争の停止、核兵器製造の停止、核兵器使用の防止、既存核戦力の廃絶といったNPTのすべての目標と目的を達成するためにどんな行動が必要かを決定しなくてはならないだろう。

核兵器の非人道的帰結に関してこのところあらためてなされた検討作業は、糸口を見つけるよい出発点である。2010年のNPT運用検討会議は、「核兵器のいかなる使用による破滅的な人道的帰結に対しても深い懸念」を表明した。

それ以降、とりわけ、ノルウェーやメキシコ、オーストリアが主催した一連の会議において、人道的帰結の問題がますます議論と行動提案の焦点を成してきた。

諸政府は、従来からの議論の場においても人道的影響の問題を取り上げるようになっている。たとえば、2014年の国連総会では155か国が共同声明に署名し、核兵器によって引き起こされる容認しがたい被害に焦点を当て、いかなる状況においても核兵器が二度と使われないようにするよう行動を求めた。

「人道的帰結」のアプローチは核軍縮に対するあらたな推進力の基礎を与えた。赤十字・赤新月運動国連人道問題調整事務所、新世代の市民活動家など、新しいタイプのアクターの登場を促した。

ICAN
ICAN

核兵器の非人道的影響をめぐる議論は、NPTのすべての加盟国によって完全に支持されるべきである。

「人道的帰結」のアプローチはまた「オーストリアの誓約」にも結び付いた。同政府(および、その誓約に賛同するいかなる国)が「核兵器の禁止と廃絶に向けた法的ギャップを埋める」ことを約束したものだ。

今年2月現在で、40か国が同誓約への支持を表明している。これらの国々は、変化を求めているのである。既存の国際法は核軍縮達成のためには不適切であり、核兵器を悪とみなし、禁止し、廃絶するような変化のプロセスが必要だと考えているのである。

このプロセスには、核兵器のもたらす容認しがたい結末を基礎にして、核を明確に禁止する法的拘束力のある法的文書が必要である。こうした条約は、特定の条約を通じてすでに禁止の対象となっている他の大量破壊兵器と核兵器とを同等の立場に置くことになる。

Photo: Hiroshima Ruins, October 5, 1945. Photo by Shigeo Hayashi.
Photo: Hiroshima Ruins, October 5, 1945. Photo by Shigeo Hayashi.

核兵器を禁止する条約は、既存の規範に則ったものであり、NPTなどの既存の法的枠組みを強化する。しかし同時に、核兵器活動に従事し、核廃絶を推進するフリをしながらも核兵器の永続化から利益を得ようとすることを諸国に可能とする現在の法的体制の抜け穴をふさぐことにもなろう。

NPT加盟国は、核軍縮達成までどのくらい待つことができるのかを考えてみなくてはならない。2010年運用検討会議以来の動向は、核兵器に関する現在の国際的議論を推し進めてきた。

諸国および他のアクターは、核兵器を禁止しその廃絶のための枠組みを打ち立てる法的拘束力のある文書を策定することによって、軍縮を本当に達成する行動をとるとの意志を今こそ示すべきだ。広島・長崎への原爆投下から70年の今年は、まさによい出発点である。(原文へ

翻訳=IPS Japan

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