【国連IDN=J・ナストラニス】
国連総会が、2016年から25年までを「第3次アフリカ工業開発の10年」(IDDA III)と定める決議を2016年8月に採択した際、決議は「アフリカは世界で最も貧しく最も脆弱な地域であり続けている」と述べていた。これまで第1次、第2次の「10年」があったにも関わらずである。
決議A/RES/70/293は「経済の多様性と価値の付加を促進し、雇用を創出し、もって貧困を削減」し、持続可能な開発のための2030アジェンダの履行に貢献する「主要な要素として、持続可能な工業化を前進させるためにアフリカ諸国が緊急の行動をとりつづける必要性」を指摘した。
17の目標と169のターゲットから成るアジェンダは2015年9月に採択された。決議は、「持続的で、包摂的で、持続可能な経済成長と加速された開発に向けたアフリカ諸国の自助努力支援するうえでの工業化の重要性」を再確認した。
決議は、持続可能な開発目標(SDGs)に定められた目標を達成する手段として、包摂的で持続可能な工業化を利用し行動をとるよう国際社会に促している。また、国連工業開発機関(UNIDO)に対して、IDDA IIIに向けたプログラムの履行を策定、運用、主導するよう求めた。
決議は、加盟国の持続可能で包摂的な工業開発の支援を目的とした国連の専門機関であるUNIDOに対して、国連の他の関連機関とパートナーシップを構築し連携をとること、さらに、工業化に資する協同の取り組みを構築するよう求めた。
決議はまた、アフリカの工業化を促進するために、複数の利害関係者との強力な官民パートナーシップと、南北協力・南南協力・三角協力を含めた国際協力の強化を呼びかけた。
決議は、IDDA IIIで策定された共通の目標は、単一の組織や政府のみで達成できるものではないと強調した。アフリカで工業開発を成功させるには、諸政府や官民の投資家、国連機関、市民社会、その他の利害関係者によるパートナーシップと協調した取り組みを必要とする。
決議は、第70回国連総会に合わせて、「アフリカの工業化に向けて2030アジェンダを運用する」というテーマで、アフリカ連合委員会、アフリカ特別顧問室(OSAA)、国連工業開発機関(UNIDO)、国連アフリカ経済委員会(UNECA)が共催した2015年9月26日のハイレベル会合のひとつの成果である。
あれから2年、第72回国連総会にあわせて9月21日に国連本部で開催されたハイレベル会合は、IDDA IIIにおける政治的公約をいかにして「現場の行動」に転換していけるかを議論するものであった。
労働年齢の7割以上が失業しているか雇用の保証がないアフリカ大陸において、失業や貧困が深刻な問題になっている状況を背景に、アフリカの指導者や国連関係者、国際金融機関の代表、民間部門の代表らは、社会的に包摂的で環境的に持続可能な形でアフリカを工業化するための広範な国際パートナーシップへのコミットメントを再確認した。
ハイレベル会合の参加者らは、貧困を根絶し、アフリカの急速に増える人口がその「人口の配当(就労人口の増加によって、生産力と購買力が高まり、経済成長を高めるという効果のこと)」を生み出すことができるようにするため、工業化の重要性を強調した。UNIDO、アフリカ連合委員会、アフリカ開発銀行(AfDB)、UNECA、OSAAの共同コミュニケは、「10年」の野心的な目標の実行には、相当規模の資源の動員と展開が必要であることを認めた。
IDDA IIIの実行を主導する任務を与えられているUNIDOは、「国家パートナーシッププログラム」(PCP)として知られる、各国が持つモデルを基礎とした新しいアプローチを実行することを提案した。これは、金融・非金融両面の資源を開発し、地域統合を促進し、アフリカの開発パートナーの間の協力を動員するものだ。
UNIDOの李勇(リー・ヨン)事務局長は、「アフリカにおける包摂的で持続可能な工業開発を促進するために、IDDA IIIのアジェンダを今こそ着実に前進させるべきときです。今日、官民各々のセクター、開発金融機関、国連システム、二国間・多国間機関からハイレベルの参加があったことは、アフリカの工業化が世界的な重要性を持っていることを示すものです。」と語った。
アフリカ連合のアルバート・M・ムチャンガ貿易産業委員は、「『政治的公約から現場における行動へ』という今回のハイレベル会合のテーマと、その根底にある包摂性の原則に沿うならば、人間らしい雇用や、アフリカで生産される高品質で安全、安価な工業製品へのアクセス等、直接的に目に見える形で、アフリカの一般大衆に大きな恩恵を示せるよう、『第3次アフリカ工業開発の10年』で動員される資源が配分されることを期待します。」と語った。
工業化の促進は、アフリカ各国の政府が何十年も中心的な課題としてきた。地域および各国別の取り組みに加え、アフリカ連合の「アジェンダ2063」とその10カ年履行計画は、地域の経済共同体や各国機関を含めた他の関連利害関係組織と協力して、その開発計画戦略において工業化を重視している。
アフリカ開発銀行のアマドウ・ホット副総裁(電力・エネルギー・気候・グリーン成長担当)は、「アフリカ開発銀行は最近、UNIDOやUNECAと共同策定して、野心的な『アフリカ工業化戦略』を採択しました。これは今後10年でアフリカ大陸のGDPを2倍以上にすることを目指したものです。私たちは、諸政府や民間部門、地域機構、他の開発パートナーとの協力がより繁栄したアフリカを目指した工業化の分野における主要課題に対処するカギを握っていると確信しています。」と語った。
ザンビアのエドガー・ルング大統領は「我が政府はこのハイレベル会合に協力できることを誇りに思います。また、アフリカにおける包摂的で持続可能な工業開発を促進するためにアフリカと緊密に協力することを目指すUNIDOやその他の政府パートナー機関によって果たされる役割を高く評価しています。」と語った。
ルング大統領はまた、「この20年間、アフリカ大陸では、グローバル経済から生じる機会を活用できるよう生産能力をつけることに政策の重点が大きくシフトしてきました。多くのアフリカ諸国が経済構造を変革し、開発戦略を支える自由主義的な経済・貿易政策を採択してきました。しかし、こうした改革は、輸入商品の流入や、産業の斜陽化と結果としての雇用喪失等、痛みを伴うものでした。」と語った。
エチオピアのハイレマリアム・デサレン首相は、「技術の欠如がアフリカの大きな問題です。アフリカ諸国には、統合的な工業戦略によって、資金を動員し、地域雇用の能力を構築し、国内向けの開発プロジェクトを実行する中小の企業を育成することが望まれます。」と語った。
開発金融機関の中でも、とりわけ世界銀行グループが「第3次アフリカ工業開発の10年」の実行への強い支持を表明している。
ハイレベル会合の参加者らはまた、成長を駆動し、雇用を創出し、収入と富を生み、歳入に貢献するうえでの基本的な役割を考慮し、民間部門の関与を強化することが重要だとの認識で一致した。(原文へ)
翻訳=INPS Japan
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