【ニューヨークIDN=リサ・ヴィヴェス】
ガーナのナナ・アクフォ=アド大統領が2019年を「ガーナ帰還年(Year of Return, Ghana 2019)」にすると発表した際、アフリカン・ディアスポラ(世界各地に離散したアフリカに起源を持つ人々)は、この宣言を歓喜をもって迎えた。
2019年は、英植民地であったバージニア州のポイント・コンフォートに1619年に到着して400周年にあたり、「ガーナ帰還年」では、コンサート、美術展、映画の封切り、クリエイティブ・エコノミー、トレードショー等様々な記念イベントが、年間を通じて開催された。
「これまでのところ、アクフォ=アド大統領の呼びかけは大成功を収めています。」と、ガーナの作家でジャーナリストのクワベナ・アグヤレ・イェボア氏は『アフリカン・アーギュメント誌』の電子版で述べている。
2019年の1月から9月の間にガーナを訪問した米国人は前年比26%増で、史上最高を記録した。
また同時期に、ガーナを訪問した英国人(24%)、ドイツ人(22%)、南アフリカ人(10%)、リベリア人(14%)も軒並み前年比で増加している。報道によれば、ガーナは2019年全体で80万件のビザを発行した。また今週(2020年1月中旬)には、高い需要に対応するため、2月にガーナに入国する全ての国籍の来訪者に対して、到着時にビザを取得できる措置を発表した。
アグヤレ・イェボア氏は、「(ガーナ帰還年事業は)多くの意味で称賛に値する取り組みだったとは思います。しかし、もっとできなかっただろうか?米国を主な対象に大西洋奴隷貿易にのみに焦点を当てたことは、許容されるべき欠点だったということになるだろうか?あるいは、これによってガーナの奴隷史に関する極めて重要な側面や遺産が消し去られてしまったのではないだろうか?」と述べている。
「ここで欠落しているのは、1250年以上にわたって、ソコトやボルヌから輸出された人々を含む推定6~7百万人におよぶアフリカ人が、北アフリカ、欧州、中東に奴隷として強制連行された『サハラ縦断交易』です。」と、アグヤレ・イェボア氏は主張している。
アグヤレ・イェボア氏は、「こうした奴隷制度という負の遺産は、今でもアフリカ北西部のモーリタニアで顕著にみることができます。同国は奴隷制を1981年に公式に廃止したものの、現地活動家らの推計では今でも人口の20%(すべてが少数民族の黒人)が奴隷状態に置かれているのです。」と指摘したうえで、「こうした境遇に置かれているアフリカ人の子孫に帰還を呼びかける声は、いったいどこにあるのか?(帰還年が焦点をあてた)アフリカ人(奴隷)の子孫は、アメリカ人やジャマイカ人、キューバ人、ブラジル人の他にもいるのではないか?」と問いかけている。
アグヤレ・イェボア氏は、「奴隷制の歴史に全面的に向き合うのではなく、選択した一部の地域(=アメリカ大陸)に暮らすアフリカ人奴隷の子孫のみに焦点をあてたのでは、信憑性を失なってしまいます。」と非難したうえで、「一年間にわたって展開されたこのキャンペーンは、本来ならば、アフリカ人とアフリカ人の子孫の全体的な歴史について正面から向き合う機会があったはずです。この点に関して、もっと取り組んでいかなければなりません。」と語った。(原文へ)
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