SDGsGoal16(平和と公正を全ての人に)|軍縮|平和の文化構築を呼びかけた反核展示会

|軍縮|平和の文化構築を呼びかけた反核展示会

【ベルリンIPS=カリーナ・ベックマン】

どちらの世界が安全か?― 重武装した現在の世界か、全ての人々の基本的ニーズが満たされた世界か ―これが、28カ国・地域、220都市以上を回りドイツに到着した核廃絶展のテーマの1つである。

3月の日本の福島原発事故による原発の被害は、核による安全性の限界を世界に知らしめた。この疑問は今、これまでになく、正当なものとなっている。


10月7日、「核兵器廃絶への挑戦」展の開幕式がベルリンで行われた。池田博正創価学会インタナショナル(SGI)副会長は、ドイツの首都を「平和の都市」として称えた。

さらに、1945年、16万人以上を一度に殲滅した広島・長崎に投下された原子爆弾、その唯一の被爆国である日本にとって、ドイツの反核運動は1つの善きモデルとなると述べた。

この展示は18対のパネルから構成されており、核兵器の脅威を写真・文章を通して訴え、平和・軍縮・不拡散を後押しするテーマを様々な角度から盛り込んでいる。

SGIは、一人ひとりの変革と社会貢献を通して平和・文化・教育を推進し、世界に広がる在家仏教運動で、メンバーは1200万人以上を超える。人類にとって大きな脅威の一つである核兵器の廃絶にも取り組んでいる。
 
ベルリンでの展示会開幕式で紹介されたメッセージの中で、池田大作SGI会長は、「私たちの眼前には、貧困や環境問題、また深刻な失業や金融危機など、各国が一致して立ち向かうべき『人類共通の課題』が山積しています。」「そのために必要な人的・経済的資源を犠牲にしてまで核兵器を維持することの愚かさが、今、一層明らかになっております。あくまで必要とされるのは、『安全保障』であって、『核兵器の保有』ではありません。」と述べた。

10月16日まで開催されるこの展示は、開発のためではなく戦争の文化のために資源を費やすことの愚かさを訴えている。現在、世界の国々は年間1兆ドル以上を軍事費や武器貿易に費やしている。これは、地球上の一人当たり173ドルにあたると説明する。

さらに、「世界の軍事費の10%未満にあたる700億-800億ドルがあれば、地球上のすべての人々に必要最低限の必需品を行き渡らせることができます。」と述べている。

核兵器については、未だに2万発以上の核弾頭があり、これは、世界中のあらゆる生物を何度も全滅させることができる数となっている。

池田SGI会長は、「『核兵器のない世界』という偉大なる目標に向かって、心ある政治指導者ならびに市民社会は、今こそ連携を密にし、その総力を結集すべき時を迎えています。」「その里程標ともいうべきものが、核兵器禁止条約(NWC)の実現であります。その早期交渉開始を、ここベルリンの地で、私は改めて強く訴えるものです。」と述べ、NWCへの早期交渉開始を、改めて訴えかけた。
 
池田博正SGI副会長は、100名余りの参加者を前に、核抑止論に挑むことの重要性を強調した。「核兵器は人間の安全保障に貢献しておらず、冷戦終結から20年が経った今日においては、『硬直した思考』です。」「冷戦が20世紀の最後に薄れていく中、地球的な核戦争の脅威も後退したように見えました。しかし世界は、核抑止論の構造や論理を解体する機会を逃したのです」と語った。

日本人は一般的に、ヒロシマ・ナガサキのトラウマ的な経験の遺産として、核兵器に対して非常に否定的な態度を持っている。しかし福島の原発事故が起こるまで、核エネルギーの平和的利用については概ね受け入れていた。

寺崎広嗣SGI平和運動局長は、「原子力の安全性に対する疑問と代替エネルギーの確保という問題の狭間で、日本人は原子力発電にどう向き合うのかという問いが、改めて提起されることになりました。」「その目的に鑑みるとき、原子力発電を無条件に否定することは容易ではありません。また原子力発電が、エネルギー供給の点で今日一定の役割を果たしていることも事実であり、その現実から目を背けることも適切ではありません。」と語った。

また寺崎局長は、「原子力発電は、短期的・中期的には、代替エネルギーが開発されるまでの過渡的なエネルギーの一部として位置づける。」「原子力発電は、長期的に目指す再生可能なクリーンエネルギー社会実現過程における『つなぎ』の役割として限定するべきでありましょう。」とも語った。

「原子のつながりを断つ時が来ています。」とは、開発と平和のための組織である国際協力評議会(GCC)と共にベルリン核廃絶展の共催者である核戦争防止国際医師会議(IPPNW)、ザンテ・ホール氏の言葉である。
 
ホール氏は、「発掘活動やウランの濃縮から使用済み核燃料の除去まで、核の生産の連鎖における全ての部分が、癌、遺伝子欠陥、環境破壊等、人類への脅威をはらんでいます。」と語った。

彼女の観点では、2022年までに全ての原子力発電所を閉鎖することを決めた後、ドイツが行っているように、核エネルギーを禁止するだけでは、十分ではない。その理由は、核生産の連鎖の中で、全ての部分が、放射能を生み、それ故に人類や環境を脅かすからである。

IPPNWは、ウラン発掘、ウラン兵器、核分裂性物質の生産の世界的な禁止、核物質の輸送の停止、包括的核実験禁止条約(CTBT)や核兵器禁止条約(NWC)の発効のために運動を展開している。

ホール氏は、「太陽や風が戦争を引き起こしたことはありません。ですから、核の鎖と核テロの脅威から私達自身を解放しましょう。私達の生きている間にこの目的が達成されることを望むものです。」と語った。

ドイツ連邦議会軍縮・軍備管理・不拡散小委員会議長を務める、ウタ・ツァプフ氏は、「残念ながら、いまだ平和は、人間精神の主体とはなっていません。新北大西洋条約機構(NATO)戦略はその良い例です。」と指摘した上で、「私達は、友達やパートナーに囲まれています。核の抑止論を放棄してはどうでしょうか。展示と共に問題に関わりましょう。平和の文化を構築し、核兵器の非人間的な不正を禁じたいと思う人々と共に、行動を起こしましょう。」と語った。(原文へ

翻訳=IPS Japan

This article was produced as a part of the joint media project between Inter Press Service(IPS) and Soka Gakkai International in Consultative Status with ECOSOC.

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