2003年の末にジュネーブで開かれた「世界情報社会サミット」の第1段階においては、サミットが報道の自由を抑圧する方向へ進むのではないかとの懸念の声が一部のメディアから聞かれた。彼らによれば、情報の自由な流れを制限する内容を一部の国がサミットの最終文書に押し込もうとしている、というのである。
しかし、実際にジュネーブで確認されたことは、国際社会が、インターネットの世界を含めて、報道と情報の自由を守るということであった。
にもかかわらず、2005年11月にチュニスで開かれるサミット第2段階において、表現の自由を制限する国々に、インターネット管理権の一部が与えられることになるのではないかと心配する意見が出ている。
しかし、心配するには及ばない。国連は、インターネットの管理権を奪うことには関心を持っていない。むしろ国連は、インターネットの運用に関してすべての利害関係者が討論を行うことのできる場を提供することを目的としている。
他方で、報道の自由への脅威は現実のものである。「ジャーナリスト保護委員会」(CPJ)によると、今年は、これまですでに29人のジャーナリストが殺害されている。
「テロとの闘い」の中で、報道の自由を制限しようともくろむ一部の国々がある。国家安全保障と独立した批判的報道との間に適切なバランスが保たれねばならないというのが我々の立場だ。メディアが重要な役割を果たして、情報を手にした世界の人びとが参加できるようでなければ、「テロとの闘い」に勝つことは難しいだろう。
また、報道の自由は社会経済的発展の前提条件にもなる。環境を守り、教育を発展させ、HIV/AIDSのような健康問題を解決するためにも、報道の自由は重要なのである。
翻訳/サンプルサマリー=山口響/IPS Japan浅霧勝浩
*シャシ・タルール氏は、作家で前国連広報担当事務次長(2007年2月まで在任)。