Multimedia|カザフスタン|アルジャジーラのインタビューに見る均衡ある外交と改革

|カザフスタン|アルジャジーラのインタビューに見る均衡ある外交と改革

【アスタナThe Astana Times=ダナ・オミルガジー】

5月29日に行われたアルジャジーラのインタビューで、カシムジョマルト・トカエフ大統領は、カザフスタンの外交政策、経済発展、政治改革への取り組みについて語った。大統領は、世界の変化に適応しつつも、国内の安定維持、パートナーシップ強化、そして長期的かつ実践的な改革の推進に引き続き取り組む姿勢を強調した。

均衡的かつ予測可能な外交政策

トカエフ大統領は、カザフスタンの外交政策は引き続き安定しており、伝統的な原則に基づいていると語った。

「外交政策に大きな改革を加えているわけではありません。なぜなら外交は非常に保守的な分野だからです」と語った。カザフスタンは引き続き大国間のバランスを取りつつ、自国の国益を守る政策を継続しているという。

また、大統領は、世界情勢の変化を受けて、輸送ルート多様化の重要性を指摘し、トランス・カスピ海国際輸送回廊、いわゆる「ミドル・コリドー(Middle Corridor)」の役割を強調した。

Middle Corridor. Photo credit: TITR
Middle Corridor. Photo credit: TITR

「我々にとって優先課題は、対外的な輸送ルートを多様化することです。」と語った。

カスピ海パイプライン・コンソーシアム(CPC)がロシアを通過していることによる依存リスクが指摘されているが、トカエフ大統領はロシアを引き続き戦略的パートナーと位置づけた。

「我々はロシアとの戦略的パートナーシップを堅く信じています。」と述べ、同時に代替ルートの整備も進めていることを明らかにした。

グローバル協力における役割

トカエフ大統領は多国間主義(マルチラテラリズム)の推進と国連改革への強い支持を表明し、中堅国であるカザフスタンの役割強化が必要だと主張した。

「多国間主義は弱体化しています……これは世界にとって大きな課題です。」と語った。

カザフスタンが最近、BRICSグループでオブザーバー資格を得たことについては、現実的な姿勢を示した。

「まずはBRICSが、宣伝されている通り本当に効果的な国際組織になるのかを見極めるべきです。」と語った。

Central Downtown Astana with Bayterek tower/ Wikimedia Commons
Central Downtown Astana with Bayterek tower/ Wikimedia Commons

経済成長

トカエフ政権下でカザフスタン経済は大きく成長し、GDPは2019年以降、55%増加した。しかし大統領は、国内の富の不均衡が依然として課題であると認めた。

「これは大統領として私が非常に懸念している問題です」と語った。

アルジャジーラの記者によると、「国内では最富裕層1%が約30%の富を保有している一方、所得分布の下位50%は5%未満の富しか保有していない。」というデータがある。

この状況を改善するため、大統領はインフラ整備、デジタル化とAI、農業、輸送・物流の4つを重点分野として挙げた。また、依然として石油・ガス輸出が経済の中心を占めているものの、今後はより多様化した経済への移行を目指していると語った。

「カザフスタンは2060年までに石油・ガス中心の経済から多様な経済へと転換することを目指しています。」と語った。

デジタル化も重要な優先事項だという。

「私の夢は、カザフスタンがいつか完全にデジタル化された国になることです……5年以内にそれは十分可能です。」と強調した。

着実な政治改革

Kazakhstan celebrates peoples unity day. Cedit Silkway TV
Kazakhstan celebrates peoples unity day. Cedit Silkway TV

トカエフ大統領は国内の改革プログラムにも言及し、政治的安定の重要性を訴えた。

「安定がなければ改革も近代化も、社会の変革もありません。」と語った。

大統領は、一度限りの7年制大統領任期の導入や、旧支配層に対する汚職捜査などを進展例として挙げた。

政治改革は今後も継続すると明言している。

「カザフスタンは改革志向の国です。我々は引き続き改革を進めていきます。」と語った。

未来へのビジョン

将来を見据えて、大統領は長期的な視点の重要性を強調した。

「AI、デジタル化、若い世代への教育に注力するべきです……国家間の紛争や戦争は時代遅れのものに見えます。」と語った。

UN Photo
UN Photo

そして最後に、国家リーダーとしての姿勢と民主主義の原則を明確に表明した。

「大統領は神の使者ではなく、国家の管理者です。私はすでに2029年には退任することを表明しています。これは国民の要請なのです。」と締めくくった。(原文へ

INPS Japan/The Astana Times

Oritinal Link: https://astanatimes.com/2025/05/president-tokayev-outlines-balanced-diplomacy-and-reforms-in-al-jazeera-interview/

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