【スコピエ、北マケドニアIPS=キャサリン・ウィルソン】
南東ヨーロッパのバルカン半島に位置する北マケドニア共和国の首都スコピエでは、明るい冬の日差しが街を照らし、昼時にはカフェが賑わっている。スコピエは、人口200万人のうち3分の1が暮らす活気ある都市で、多くの若者が仕事を求める希望の地となっている。しかし、その道のりは決して容易ではない。
「雇用を得るのはとても厳しい状況です。若者たちは最初の仕事を見つけるまでに18カ月も待つことがあります。」と、28歳のアレクサンドラ・フィリポヴァさんはIPSの取材に対して語った。それでも彼女は「未来に希望を持っています。」と付け加えた。フィリポヴァさんは、自身の世代が直面する課題を理解しつつ、北マケドニア全国青年協議会のプログラムマネージャーとして、その希望を現実に変えるため尽力している。
国際労働機関(ILO)の報告によると、昨年の世界の若者失業率は13%と、15年ぶりに大幅に減少した。しかし、地域によって状況は大きく異なっている。バルカン、中東・北アフリカ(MENA)地域では、COVID-19後の経済回復の遅れや、ロシアによるウクライナ軍事侵攻、エネルギー危機、労働市場の構造的問題、社会文化的な期待が、平均以上の失業率を引き起こしている。
北マケドニア共和国は、セルビアの南、ギリシャの北に位置する内陸国で、1991年に旧ユーゴスラビアから独立した。現在、欧州連合(EU)加盟を目指しており、近年の経済成長は鈍化しているものの、高度教育を受けた人々でさえ、教育資格と雇用者が求めるスキルの不一致が、仕事を得る上での大きな障害となっている。この問題は、若者の失業率が28%と、全国平均の13%の2倍以上であることに反映されている。
「私たちの教育システムは理論的な知識に基づいており、技術的および職業的なスキルが欠けています。雇用者は若者を雇いたいと思っていますが、彼らに必要なスキルが備わっていないのです。」とフィリポヴァさんは指摘した。特に中小企業では、「メールの書き方やビジネス環境でのコミュニケーションの取り方などのソフトスキルが欠けています。また、起業家精神や、外国語を話せる人材も不足しています。」と語った。
2018年、北マケドニア政府は若者の課題に対応するため「若者保証政策(Youth Guarantee)」を開始した。これに連動して青年協議会は、有給インターンシッププログラムを立ち上げ、現在では2000の企業が参加し、若者に2カ月間の職業体験の場を提供している。「このプログラムは企業にも有益です。インターンシップ期間中に若者は必要なスキルを学び、多くがその後、長期雇用につながっています。」とフィリポヴァさんは説明した。このプログラムを通じて、有給インターンシップを受けた若者の70%が雇用されており、北マケドニアはバルカン諸国で最初にこの政策を成功させた国となっている。
「これまでに約6万人の若者が北マケドニアの『若者保証プログラム』に参加した。2019年以降、労働市場に関する統計では、若者に関して大きな改善が見られることを指摘したいと思います。若者の雇用率は2018年と比較して3.5ポイント増加しました。」と、北マケドニアの労働・社会政策大臣であるジャゴダ・シャプスカ氏は2021年にメディアに語った。
若者の雇用は、国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」に向けた2030年アジェンダの重要な焦点であり、他の国際的な枠組みでも若者の発展と関与の重要性が強調されている。若者はSDGs達成の鍵を握る存在と見なされている。
地中海を挟んだレバント地域では、ヨルダンの若者たちが同様の困難に直面している。人口1,100万人のうち63%が30歳未満であり、この国では若者の失業率が40%に達している。隣国シリアや占領下のパレスチナからの紛争を逃れた300万人以上の難民を受け入れつつ、経済の安定を維持しているハシミテ王国だが、若者の失業問題は深刻である。
中東・北アフリカ(MENA)地域では、若者の3人に1人が失業しており、国連の予測では、2030年までに労働適齢人口の需要を満たすために3300万の新規雇用が必要になるとされている。毎年10万人の若いヨルダン人、しかも多くは高い教育を受けた若者が労働市場に参入しようとしているが、経済成長が十分な雇用を生み出しておらず、大規模な公的部門でさえ増加する求職者を吸収できない状況にある。
「ヨルダンは、湾岸諸国以外のアラブ諸国の中で、新たな求職者に比較的大量の公的部門の仕事を提供し続けている数少ない国の一つである。しかし、これは財政的に非常に負担が大きく、労働市場のインセンティブを歪めている。」と、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスの比較政治学准教授であるステフェン・ヘルトグ博士はIPSの取材に対して語った。
ヨルダン渓谷の縁に広がる首都アンマンは、国の行政と商業の中心地である。この地で、国内の若者発展団体「ヨルダン青年革新フォーラム」の執行役員であるアリ・ハダッド氏はIPSの取材に対し、多くの若者が「安定していると見なされる公的部門の仕事を強く希望している。」と述べる一方で、民間部門の成長が不可欠だと強調した。
「拡大する企業は、増加する若者の求職者を吸収することができます。民間産業はスキルの開発やイノベーションを促進し、強力な民間部門はGDPの成長に寄与し、経済を活性化させることで若者にさらに多くの機会を提供します。」と、ハダッド氏は語った。
しかし、人々が雇用の機会にアクセスできるようにすることも不可欠である。若者のスキル開発に焦点を当てた地元の社会的企業「LOYACヨルダン」のゼネラルマネージャーであるアフマド・アスフォール氏は、同国には都市部と農村部の格差があると指摘したうえで、「雇用の機会は都市部に集中しており、農村部の若者が仕事にアクセスするのは困難です。また、女性は社会的規範、育児の欠如、不平等な賃金など、追加の課題に直面しています。」と語った。
労働市場の期待とスキルの不一致も大きな障害となっている。「若者には、コミュニケーション、チームワーク、問題解決のスキルや、批判的思考、イノベーション、デジタルスキル、ビジネススキルを備えた起業家精神が必要です。」とアスフォール氏は指摘した。LOYACは、全国規模のインターンシッププログラムを通じてこのギャップを埋めることに成功してきた。「私たちは毎年1,200人の学生を訓練し、850人を全国レベルのインターンシップにマッチングさせています。これにより、多くの若者が雇用を確保するために必要なスキル、自信、人脈を得ることができています。」と語った。
若者の力を引き出すことは、2021年に発表されたヨルダン政府の10年開発・近代化戦略の一環です。この戦略は「若者が創造的なエネルギーを解き放ち、経済的及び社会的発展に効果的に貢献できる刺激的な環境を提供することを約束している。」と、ヨルダンのヤザン・アルシュデイファット青年大臣が11月24日の声明で述べている。
また、起業家精神による成功例も見られる。例えば、Arab Therapyはアラビア語を話す専門家によるメンタルヘルスサポートを世界中に提供するオンラインサービスで、ヨルダンの若い起業家モハマド・ジャバー氏とラミ・アルクワスミ氏によって設立されたMawdoo3は、現在世界最大のアラビア語コンテンツプラットフォームとなっている。20211年にはフォーブス誌において中東で最も訪問されたウェブサイトの一つとしてリストされた。
失業統計を超えて、両地域では専用の取り組みを通じて雇用の成功を収める若者が増加しています。課題はまだ山積しているが、これらの成功を拡大することが、各国の持続可能な経済的および国家的発展を担う世代のために重要だ。(原文へ)
This article is brought to you by IPS NORAM, in collaboration with INPS Japan and Soka Gakkai International, in consultative status with UN ECOSOC.
INPS Japan/ IPS UN Bureau Report
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