SDGsGoal17(パートナーシップで目標を達成しよう)国連80周年:成功と失敗が交錯する混合の遺産

国連80周年:成功と失敗が交錯する混合の遺産

【国連IPS=タリフ・ディーン】

国連が138か国の首脳を集めたハイレベル会合で創設80周年を記念するなか、ある疑問が浮かぶ―過去80年の政治的実績がほとんど失敗に終わったことを踏まえ、本当に祝う理由があるのだろうか。

2022年4月、ウクライナのゼレンスキー大統領は国連安全保障理事会でのリモート演説で核心を突いた。「国連が保証すべき平和はどこにあるのか? 安保理が保障すべき安全はどこにあるのか?」国連はこの両方に失敗したかのように見える。

一方で、地政学的な役割が低下するなかでも、軍事紛争に巻き込まれた数千万の人々に人道支援を届ける巨大な救援機関としての役割はますます重要性を増している。しかし、80周年の焦点はやはり政治にある。

サンフランシスコ大学の政治学教授スティーブン・ズネス氏はIPSに対しこう語った。「1964年、8歳の時に初めて国連本部を訪れて以来、国連の成功を強調し擁護してきたが、これほど悲観的になったことはない。」

彼は国連の効果は「とりわけ強力な加盟国がどれだけ国連の権威を認めるかに左右される」と指摘する。冷戦終結以降、米国によるイラク侵攻やロシアによるウクライナ侵攻は、侵略戦争を防ぐという国連の根本的使命が破綻したことを示す、と。

過去2年間、米国はガザでの停戦を求める安保理決議に6回反対票を投じ、そのうち4回はバイデン政権下であった。これは、武力紛争の終結に向けた国連の権威を損なおうとする動きが超党派であることを物語る。

さらに、国連の最大の成果の一つである脱植民地化も、西サハラの人々に自己決定権を与えられず、米国や欧州諸国がモロッコの不法占領を支持していることで傷つけられている。ズネス氏は「米国は国連憲章やジュネーブ第四条約、国際人権規約の起草に深く関わったが、近年は共和・民主両政権が国連やその機関、司法機関を攻撃している」と述べた。

ワシントンのスティムソン・センターのリチャード・J・ポンツィオ氏は「国連は世界で最も普遍的で正統性を持つ国際機関であり、平和構築、極度の貧困との闘い、気候変動対策、AIを含むデジタルガバナンスなどの分野で不可欠な役割を果たしてきた」と評価する。

また、ステークホルダー・フォーラムのフェリックス・ドッズ氏は「冷戦以来最も不安定な時代にある今こそ、多国間主義を強化し、歴史から学ぶべきだ。協力することで、より公正で持続可能な世界を築くことができる」と強調した。

オックスファム・インターナショナルのアミターブ・ベハール事務局長は「国連は資金不足とニーズの増大に直面し、平和と安全を提供する能力が疑問視されている。しかも安保理常任理事国の中には国際人道法違反に加担している国もある」と警告する。

「今こそ政府が国連改革の基盤を築くべき絶好の機会だ。気候危機、格差、民主主義への攻撃、ジェンダー権利の侵害、紛争、飢餓といった複合的危機に立ち向かうために国連を強化しなければならない」。

それでも彼は「私たちは集団行動の力を信じている。今週、オックスファムをはじめとする団体は懸念を表明し、連帯と解決策を提示する。今こそ、指導者たちが未来へのビジョンを示し、それを実現するために行動するときだ」と訴えた。

国連創設前の世界

9月22日、国連総会議長アナレーナ・ベアボック氏は演説で次のように振り返った。
「廃墟と化した国家、7000万人を超える死者、1世代に2度の世界大戦、ホロコーストの恐怖、72の植民地領――これが80年前の世界だった。希望を求めて必死の世界だった。しかし勇敢な指導者たちは国連憲章によって希望を与えた」。

1945年6月26日に署名された国連憲章は、単なる政治的宣言ではなく、国と国民の間の約束だった。
「それは天国を約束するものではなく、憎悪と野心によって再び地獄に引きずり込まれることのないようにする誓いだった」とベアボック氏は述べた。

しかし今、私たちは再び岐路に立っている。ガザの瓦礫の中で食糧を探す孤児、ウクライナの戦争、スーダンでの性暴力、ハイチのギャング、ネット上の憎悪、そして世界各地の洪水や干ばつ。
「これが国連憲章が描いた世界なのか?」と彼女は問いかけた。

過去の試練と現在の課題

ブリュッセルの国際危機グループは先週、「冷戦後の時代に国連が疑念と分裂に直面したのは今回が初めてではない」と指摘した。1990年代のバルカン半島やルワンダでの平和維持の失敗、2003年のイラク戦争を巡る議論など、過去にも困難はあった。しかしその度に加盟国は団結し、改革を進めてきた。今回はそれが可能かは不透明だ。

「未来サミット」で改革が議論される予定だが、平和と安全保障に関する抜本的変革は当面期待できないとグループは警告する。むしろ交渉は、国家間のビジョンの不一致を浮き彫りにしている。

人道支援における国連の力

一方で人道分野では、WFP、WHO、UNICEF、UNHCR、UNFPA、FAO、IOM、OCHAといった国連機関が中心となり、アジア、アフリカ、中東の戦争被災地で食料、医療、避難所を提供している。これらの機関は、国境なき医師団、セーブ・ザ・チルドレン、赤十字、CARE、アクション・アゲインスト・ハンガー、ワールド・ビジョンなどの国際救援団体と協力し、何百万人もの命を救ってきた。(原文へ

INPS Japan/IPS UN Bureau Report

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