INPS Japan/ IPS UN Bureau Report力の論理が支配する世界を拒まねばならない

力の論理が支配する世界を拒まねばならない

【ニュージーランド・ウェリントンIPS=ヘレン・クラーク】

2026年は深く憂慮すべき形で幕を開けた。世界の平和と安全の根幹と長く見なされてきた国際法は、かつてなく露骨に揺さぶられている。主権と抑制という中核原則は、公然と侵されている。

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私はこのほど、ダボスで開かれた世界経済フォーラムから帰国した。そこで米国のドナルド・トランプ大統領は、新たな「平和評議会(Board of Peace)」を発表した。国連安全保障理事会は当初、ガザの暫定的な行政(統治)を監督するための同組織を支持していた。現地では停戦が宣言されているにもかかわらず、人道状況はなお危機的であり、パレスチナの民間人は占領軍によって連日のように殺害され続けている。

だが、ダボスで披露された内容は、より憂慮すべき事態を示唆していた。発表された委員会の憲章には、ガザへの言及が一切ない。国連安保理の代替として位置づけられているように見えたのである。

「平和評議会」の招待メンバーの中には、国際刑事裁判所(ICC)に訴追されている2人が含まれている。さらに、同評議会の常任メンバーになるには10億ドルが必要とされる。これは国際社会の運営のあり方として適切ではない。「平和評議会」は、安保理が時限的に付与した任務のとおり、ガザで続く危機に全面的かつ緊急に集中すべきである。

「平和評議会」をこのように位置づける枠組みは、正統性がすでにさまざまな理由で疑問視されてきた多国間システムに対する、さらなる挑戦の一つにすぎない。

国連憲章は81年目に入った。とりわけ安全保障理事会をはじめ、憲章が定めた制度は、2026年ではなく1945年の世界を依然として反映している。常任理事国による拒否権の濫用―とりわけ国際法違反を免責する形での行使―は、その信頼性を根底から損ねてきた。

UN’s ‘responsibility to deliver’ will not waver, after US announces withdrawal from dozens of international organizations. Credit: UN Photo/Loey Felipe
UN’s ‘responsibility to deliver’ will not waver, after US announces withdrawal from dozens of international organizations. Credit: UN Photo/Loey Felipe

例えばロシアは、ウクライナに関する決議を阻止するため拒否権を繰り返し行使してきた。米国もまた、イスラエル・パレスチナに関する決議を阻むため、拒否権をたびたび用いてきた。安保理改革は必要であり、長年先送りされてきた。改革は過去にも実現している。1965年には実質的な改革が達成された。いま再び、これを成し遂げなければならない。

先週のミュンヘン安全保障会議では、変化する世界秩序にいかに対応すべきかについて、各国の政策決定者と議論を交わした。最近の動向が、私たちがこれまで前提としてきた国際秩序に重大な亀裂が生じていることを示しているとの、カナダのマーク・カーニー首相の見解に私も同意する。大小あらゆる国が連携し、力の論理に支配される世界を拒み、国際法に根ざした未来を守らねばならない。

エルダーズ*1)は、「力こそ正義(might is right)」という論理によって国際法を覆そうとするいかなる試みにも断固として反対する。私たちは、共有の価値と原則に根ざす国際秩序を改めて確認し、それを守り抜く。

いまは選択の時である。国際協力を長く支えてきた価値が分断と妨害によって侵食されるのを許すのか。それとも、国際社会が結束してそれらを守り、再生するのか。(原文へ

ヘレン・クラークはニュージーランドの政治家。1999年から2008年まで第37代首相を務め、2009年から2017年まで国連開発計画(UNDP)総裁を務めた。
*「エルダーズ(Elders)」は、主に南アフリカのネルソン・マンデラ元大統領が2007年に設立した、平和、人権、地球の持続可能性のために活動する世界的なリーダー・元首脳経験者らのNGOグループを指す国際組織。平和構築、紛争解決、人道危機の改善(ガザの大量虐殺警告など)に取り組んでいる。

IPS UN Bureau

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