SDGsGoal11(住み続けられる街づくりを)YALA:新刊写真集はラリトプル訪問者必携、住民にも新発見の案内書

YALA:新刊写真集はラリトプル訪問者必携、住民にも新発見の案内書

【カトマンズNepali Times=ソニア・アワレ】

Sonia Aware.
Sonia Aware.

パタンで生まれ育った私は、この街が芸術や建築、そして無形の文化遺産に富んでいることは知っていた。だが、この本に出会うまで、それがどれほど豊かで、自分がその「隠れた宝」をどれほど知らなかったのか、気づいていなかった。『Yala Mhasika/Exploring Lalitpur/Lalitpurko Chinari』はラリトプル商工会議所(Lalitpur Chamber of Commerce & Industry)が刊行した写真集で、街の魅力を世界に紹介すると同時に、住民自身にも改めてその価値を伝える内容となっている。

ラリトプルは一般にパタンとして知られる。おそらく周辺部に家畜の牧草地が広がっていたことに由来するのだろう。本来の名称はネパール・バサ(Nepal Bhasa)で「ヤラ(Yala)」であり、都市と農村、古さと新しさが溶け合う街である。

写真:パタン・ドカ

スォニガ(Swoniga=カトマンズ盆地)にあった他の王国と同様、家々や寺院、僧院が密集する市街地は高台に築かれ、農地はそこから川へ下る斜面に広がっていた。農業を基盤とする田園的環境の中に都市生活が同居する、この独特の景観が形づくられた。

街路から流れ落ちる有機物が土壌を肥やし続けたこと、そしてカトマンズ盆地がインドとチベットを結ぶ古代交易路の要衝に位置していたことが、盆地の諸王国に繁栄をもたらし、幾世紀にもわたる芸術と文化の開花につながった。

ヤラの住民の多くは、農業を営む人々や商人、金工・木工などの職人だった。6世紀にネパールを訪れた中国の使節(旅行者)は、この街では「農民より商人が多く、家より寺院が多い」と記している。チベットのラサ(Lhasa)と交易していた商人の子孫が集まって暮らす通りも、いまなお残る。さらに、ネパールを代表する仏教美術の名匠アルニコ(Araniko/1245年頃~1306年頃)がヤラに生まれたとする伝承も伝わっている。

写真:クォンティ地区。シヴァ神を祀る五重塔のクンベシュワル寺院と、ダシャ・マハーヴィディヤのシャクティ・ピートに捧げられたバグラムキ寺院がある

ネパールはチベットに物資を輸出し、さらには硬貨を鋳造して供給していた。主要なトランス・ヒマラヤ交易路を事実上独占していた時期もある。この繁栄は、クワ・バハ(Kwa Baha)の黄金寺院(Golden Temple)などの記念碑や祠に映し出されている。

スォニガの他の3王国にも増して、ヤラでは建築が発展し、金属・石・木工芸の中心地となった。「ラリトプル」という名は「美術の都」を意味するが、強い共同体意識を踏まえれば、「よく生きる都」と言ってもよいかもしれない。

伝承では、「ラリトプル」という名は、盆地が長い干ばつに苦しんでいた際、雨神カルナマヤ(Karunamaya)をアッサムから迎えるのを助けた農民ラリト(Lalit)に由来するとされる。ラリトが担い棒に使った梁は、今もジャタポル(Jhatapol)に残る。災害、侵攻、疫病はパタンの歴史で繰り返し登場するテーマでもあった。

写真:ハウガル・トレのアジマ(Ajima)。ネパール最古の石碑文とされ、チャヤサル(Chyasal)にはガジャ・ラクシュミ(Gaja Laxmi)がある

本書は文化遺産の専門家チーム、ロシャ・バジュラチャリヤ(Rosha Bajracharya)、スニル・パンデイ(Sunil Pandey)、アニル・チトラカル(Anil Chitrakar)が編纂した。パタンの社会経済・政治史を跡づけ、持続可能な農業によって近年まで食料余剰の街であり続けたことなどを描く。

Photo Venture Nepalによる地上・ドローン写真は、パタンをこれまでにない視点から捉えている。カルナマヤ(マチンドラナート=Machhindranath)の山車(チャリオット)祭には一章が割かれ、共同体が運営する祭礼の舞台裏が紹介される。バラヒ(Barahi)の大工が木組みを組み立て、ヤンバ(Yamva)の「つるの技術者」が高さ25メートルの山車に使う綱や籐を編み、ガク(Ghaku)の御者が狭い路地を進む巨大構造物の速度と制動を制御する。

写真:テ・バハル(Te Bahal)。カルナマヤが年の半分を過ごす場所
歩く、祈る

本書は、パタン・ドカ、プルチョーク(Pulchok)、シャンカムル(Shankhamul)、マハボウダ(Mahaboudha)、ラガンケル(Lagankhel)を起点とする5つのルートでパタンを歩いて巡る案内となる。地図とともに、バハ(baha)やバヒル(bahil)、祠、池、広場、デョチェン(dhyochenn)、中庭、ファルチャ(phalcha)などが道中の見どころとして紹介されている。

ただし、コーヒーテーブル・ブックとしての大判サイズと重量のため、持ち歩きには向かない。各地点の過去と現在について丁寧な説明がある一方で、読者は「もっと知りたい」という気持ちを残される。これは、パタンの宝があまりに膨大で、本書でさえ表面をかすったにすぎないことの証左でもある。

写真:パトゥコドム(Patukodom)。古代キラント王宮の遺構が残る

あまり知られていない必訪スポットの一つがパトゥコドムだ。ここは、パタンの原住民とされるキラント(Kirat)の王宮の名残である。考古学的発掘が行われれば、ネワ(Newa)以前のパタンの未知の側面が掘り起こされるかもしれない。

やや足を延ばす必要があるが、マハボウダ(Mahabouha)も見逃せない。ボードガヤの寺院を模したもので、3341体のテラコッタ仏と90体の大像を収める。完成までに35年、4世代を要したという。

写真:マハボウダ。ボードガヤの寺院の複製

最近の「パタン・バイ・ナイト(Patan by Night)」遺産ウォークでは、ピム・バハル(Pim Bahal)が、地元の少女に恋をしたラクヘ(lakhe)の悪鬼(現在は仮面舞踊で人気の存在)が情熱を注いだ「愛の労作」だと教わった。少女が遠くの水場まで水を汲みに行かずに済むよう、彼が池を掘ったのだという。近くにはチャルマティ・チャイティヤ(Charumati Chaitya)があり、紀元前3世紀にアショーカ王の娘が盆地を訪れ、ネパールに仏教を広めた際に建立したと伝えられる。

興味深いのは、カトマンズが「寺院の街」と呼ばれるのに対し、パタンは僧院(新仏教の寺院共同体で、礼拝や行事の拠点となる)を中心に発展してきた点である。そこでは仏教とヒンドゥー教の要素が重なり合い、密教的(タントラ的)な信仰や儀礼として独自の形をとってきた。例えば、仏陀の生涯の主要な出来事を象徴する古い仏塔(チャイティヤ)を集めたタダム・チュカ(Tadham Cuka)、ネパール最古級の石碑文とされるハウガル・トレの女神アジマ(Ajima)像、チャヤサル(Chyasal)に残るガジャ・ラクシュミ(象と結びついた吉祥の女神)像、さらにヒンドゥー教のシヴァ神信仰と金剛乗仏教の要素が交錯するビグナンタク・ガネーシャ寺院(Bignantak Ganesa temple)などが、その代表例として挙げられる。

写真:ビグナンタク・ガネーシャ寺院

本書は空間的な説明だけでなく、時間軸も提示する。農耕サイクルと黄道十二宮(zodiac)を織り合わせる形で、ラリトプルのジャトラ(jatra)、儀礼、信仰舞踊、祭礼の日時と場所を整理した詳細な文化カレンダーが編まれている。

写真:パタンのミプワ・ラクヘ(Mipwa Lakhe)。演舞の最中に火を出す。
写真:ダサインの期間、パタン・ダルバール広場で演じられるガン・ピャカン(Gan pyakhan)またはアスタマトリカ舞踊(Astamatrika dance)

最終章は水と自然に捧げられている。人々の暮らしと文明を支える水、そして祖先が残した給水システムが、浸食や汚染にもかかわらず今なお機能し続けているからこそ、ラリトプルはラリトプルであり続ける—という視点だ。

著者たちはこう記す。世界の歴史には、都市が築かれ、しばらく繁栄した後、空気や水、土壌の質を維持できずに衰退し、やがて考古学的遺跡となった例がある。その結果、人口が流出して都市は死に、歴史書の中でのみ言及される存在になった。ラリトプルは同じ過ちを繰り返さない、と。(原文へ

ソニア・アワレはネパーリ・タイムズ編集者で、保健、科学、環境担当の記者。気候危機、防災、開発、公衆衛生を、政治・経済との相互連関に着目しながら幅広く取材してきた。公衆衛生を専攻し、香港大学でジャーナリズム修士号を取得している。

INPS Japan

関連記事:

ムスタンに響く百万のマントラ

東京で味わう「古きネパール」

世界の破壊者:世界戦争と気候危機の時代におけるオッペンハイマー伝の妥当性

最新情報

中央アジア地域会議(カザフスタン)

アジア太平洋女性連盟(FAWA)日本大会

2026年NPT運用検討会議第1回準備委員会 

パートナー

client-image
client-image
client-image
client-image
Toda Peace Institute
IPS Logo
The Nepali Times
London Post News
ATN

書籍紹介

client-image
client-image
seijikanojoken