【キングストン(ジャマイカ)IPS=ピーター・リチャーズ】
昨年4月にジャマイカの裁判所がダリル・ヴァス議員には議員適格がないと判示して以来、二重国籍問題がジャマイカにおいて大きな問題になってきた。
与党・ジャマイカ労働党のヴァス議員が議員資格を剥奪されたのは、彼がジャマイカと米国の二重国籍を持つからであり、自発的に米国のパスポートを更新し、それを使って海外渡航していたためである。
この問題を裁判所に持ち込んでいたのは、2007年の総選挙でヴァス議員と戦って敗れていた野党・人民国家党のアベ・ダブドゥーブ氏であった。判決を受けて、ブルース・ゴールディング首相は、ヴァス議員の敗訴によって与党の議席数が60議席中わずか31にまで減少したため、解散総選挙に打って出ると示唆している。
カリブ政策研究所は今回、『ジャマイカにおける二重国籍と政治代表』という報告書を発表した。それによれば、上記のような問題が生じているのはジャマイカだけではない。トリニダード・トバゴ、セントクリストファー・ネイビス、ガイアナ、グレナダなどでもそうである。
たとえば、トリニダード・トバゴでは、2001年の総選挙で勝利しのちに副大臣になった2人の議員が、それぞれ米国と英国の国籍も保有しているとの理由で、議員資格を剥奪されている。
報告書の著者のひとりキム・マリー・スペンス氏は、この問題は概して政局がらみで取り上げられることが多く、憲法上の権利の問題として考えられることは少ない、と指摘する。
報告書は、他国の国籍を持っているからといってその人物の貢献度が少ないことには必ずしもならないと主張し、海外経験・国籍を持つ人間を政治代表とすることは、むしろ全体として政治の質を高めることにつながるであろう、としている。
カリブ海諸国の二重国籍問題について報告する。(原文へ)
翻訳/サマリ=山口響/IPS Japan 浅霧勝浩