SDGsGoal13(気候変動に具体的な対策を)アマゾンの心臓部で―COP30と地球の運命

アマゾンの心臓部で―COP30と地球の運命

【ワシントンDC=アショカ・バンダラゲ】

筆者が最近ブラジルを訪れたのは、第30回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP30)がベレンで開催された時期と重なっていた。私は会議そのものには参加しなかったが、幸運にもアマゾンを訪れる機会を得た。

それは、自然の神秘と静寂、そして生命の循環――世界最大の熱帯雨林であり、地球最大の流域を誇るアマゾン川によって支えられる生命のうねり――を体感する、畏敬と謙虚さに満ちた体験だった。

壮大な森と川、その支流である黒い水をたたえたリオ・ネグロなどには、無数の相互依存する生物が生息している。巨大なサマウマの木――“生命の木”と呼ばれるセイバノキ――は、他の木々やツタ、植物の上にそびえ立つ。

多くの木々は鳥や動物のすみかとなり、枝や根元に巣が作られる。ナマケモノは巣を作らず、一生を森林の樹冠で過ごし、枝にぶら下がって眠る。
一方、フサオマキザルやリスザルは食べ物を求めて枝から枝へと飛び移り、鳥たちは――最小のショウビタキから、鮮やかな赤冠や緑、黒のアマゾンカワセミまで――それぞれの獲物を狙いながら枝々を飛び回る。夜が訪れると、白い羽をもつフクロウに似た美しいグレート・ポトゥが現れ、獲物をじっと待つ。

川では、銀色のトビウオが群れをなして水面を飛び、虫を捕まえる。灰色やピンクのイルカは魚を追いながら、あるいは遊びながら水面に浮かび上がる。岸辺では、白鷺が誇らしげに立ち、クロカイマンやメガネカイマンが獲物を待ち伏せる。上空では、インコを含む鳥の群れが空を歌で満たし、ハゲワシが地上の死骸を求めて舞い降りる。

アマゾンと人間

人間もまた、数万年前から他の生物と密接な共生関係を保ちながらこの地に暮らしてきた。森で狩りをし、川で魚をとり、生き延びてきたのだ。アマゾン川沿いの岩に刻まれたペトログリフ(岩刻画)は、人間と動物の姿や抽象的な模様を描き、自然への深い敬意と、人々の間の精神的な交流を伝えている。

今日でも、アマゾンに暮らす多くの先住民コミュニティは、母なる地球を守ることに献身的であり、自然中心の価値観と伝統的な生活様式を守り続けている。

また、アマゾン川沿いには「ヒベリーニョス(川の民)」と呼ばれる人々も暮らす。彼らは先住民とポルトガル人の混血が多く、川の上に浮かぶ家や高床式の家で生活している。その生業と文化は川と森に密接に結びついており、アマゾンの保護は彼らの生存に直結している。

森林喪失の現実

アマゾンは2001年から2020年の間に約5420万ヘクタール(総面積の9%以上)を失った。これはフランスに匹敵する広さである。中でもアマゾンの62%を占めるブラジル領が最も被害を受け、次いでボリビア、ペルー、コロンビアが続く。森林伐採に加え、アマゾンでは年間4,000~6,000種の動植物が失われていると推定されている。

IPS Team at COP30
IPS Team at COP30

COP30

先週ベレンで開かれたCOP30の開会式で、ブラジルのルイス・イナシオ・ルラ・ダ・シルバ大統領は、「アマゾンでの森林伐採は過去2年間で半減しており、気候変動への具体的な行動は可能だ」と述べた。そして「美辞麗句や善意の時代は終わった。ブラジルのCOP30は“真実と行動のCOP”である」と強調した。

「COPは優れた理念を披露する場や交渉者の年次集会であってはならない。現実と向き合い、気候変動に実効的に取り組む場でなければならない」とも述べた。

また、ダ・シルバ大統領は、ブラジルが植物や藻類、廃棄物などから得られる再生可能エネルギー――すなわちバイオ燃料――の生産で世界をリードしていると指摘し、「化石燃料に依存する成長モデルは持続できない」と警告した。実際、COP30では世界の熱帯雨林と生命維持に不可欠な生態系、そして人類と他の生物が共有する気候の未来が問われている。

「真実と行動」

しかし、ベレンでの楽観的な発言にもかかわらず、ブラジルや世界では依然として懸念すべき動きが続いている。

COP30に先立ち、2025年10月にブラジル政府はインド、イタリア、日本とともに、2035年までに世界の持続可能燃料使用量を4倍にすることを目指す「ベレン4×(フォーバイ)」誓約を打ち出した。この目標は現在のバイオ燃料消費量を2倍以上にするものだ。

しかし環境保護団体は、十分な環境保全措置を伴わない大規模なバイオ燃料拡大は、森林伐採の加速、土地や水資源の劣化、生態系の破壊、さらには食料安全保障への脅威をもたらすと警鐘を鳴らしている。大豆、サトウキビ、パーム油などの作物が「食料か燃料か」の土地争奪を引き起こすおそれがあるからだ。

さらにCOP30直前、ブラジル政府は国営石油会社ペトロブラスに対し、アマゾン川河口付近での石油掘削を許可した。環境相マリーナ・ダ・シルバ氏を含む政府は、この事業がエネルギー転換を支え、経済発展の目標達成に寄与すると主張している。

しかし環境団体はこれを強く批判し、「化石燃料拡大を促進し、地球温暖化を悪化させる」と非難した。世界最大の熱帯雨林という炭素吸収源の沿岸での掘削は、生物多様性やアマゾン地域の先住民共同体に深刻な脅威を及ぼすと警告している。

環境活動家によれば、アマゾンでは「先住民族の土地3,100万ヘクタールがすでに石油・ガス開発区画と重なっており、さらに980万ヘクタールが鉱山採掘の脅威にさらされている」という。

COP30開催都市の矛盾

また、COP30の開催準備の一環として建設されたベレン市内の4車線高速道路「アベニーダ・リベルダージ」も論争を呼んでいる。ブラジル政府は人口増に対応するための必要なインフラだと擁護するが、環境団体や一部住民は、100ヘクタール以上の保護林を伐採して建設を進めることが、森林破壊を加速させ、野生生物を脅かし、COPの気候目標を損なうと批判している。

地球規模の責任

「地球の肺」とも呼ばれるアマゾン熱帯雨林を守る責任は、ブラジルだけに負わせるべきではない。それは人類全体が共有すべき責任である。多くの研究は、化石燃料やバイオ燃料に頼らずとも、太陽光、風力、水力といった代替エネルギー源を活用すれば世界は十分に持続できることを示している。

世界秩序を主導してきた米国や他の先進国は、気候・環境危機、そして世界的不平等の拡大に対して主要な責任を負っている。一方、新興国――特にブラジルを含むBRICS諸国――には、いまこそ言葉を超えて具体的行動に踏み出すことが求められている。ダ・シルバ大統領自身が述べたように、COP30はその方向へと果敢に踏み出す決定的な機会である。

COP30に参加する交渉官と政策立案者たちは、化石燃料業界からの圧力に屈することなく、短期的利益ではなく地球と人類の未来を優先し、倫理的かつ原則的な行動を取らなければならない。(原文へ)

アショカ・バンダラゲ博士は、『Women, Population and Global Crisis』(Zed Books, 1997)、『Sustainability and Well-Being: The Middle Path to Environment, Society and the Economy』(Palgrave Macmillan, 2013)などの著作をはじめ、地球政治経済と環境をテーマに多数の論文を発表している。近著に「The Climate Emergency and Urgency of System Change」(2023)および「Existential Crisis, Mindfulness and the Middle Path to Social Action」(2025)がある。現在、宗教間気候倫理行動ネットワーク(Interfaith Moral Action on Climate)の運営委員を務めている。

INPS Japan/IPS UN Bureau Report

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