ニュース逆境に立ち向かう国連平和維持部隊

逆境に立ち向かう国連平和維持部隊

 【ジュネーブIDN=リチャード・ジョンソン】

UN Soldiers in Eritrea" by Dawit Rezene Licensed under CC BY-SA 1.0 via Wikimedia Commons
UN Soldiers in Eritrea” by Dawit Rezene Licensed under CC BY-SA 1.0 via Wikimedia Commons

国連平和維持活動局(DPKO)によると、約8万5000人の軍人、1万4000人以上の警察官、5700人の国際機関文民職員、及び1万3700人の各国文民職員が、4大陸における計15の国連平和維持活動に従事している。

国連は平和維持活動を「紛争で引き裂かれた国々に永続的な平和をもたらすための諸条件を創出する手助けを行う国連活動」と定義している。国連平和維持部隊の兵士は、淡い青色のベレーやヘルメットを着用していることからしばしば「ブルーヘルメット」と呼ばれるが、紛争後における和平プロセスを監視すると同時に、かつての紛争当事者たちが和平合意内容を履行する支援を行っている。このような支援内容は、信頼醸成、政権協定の仲介、選挙支援、法の支配の強化、経済・社会開発など多岐にわたっている。

しかし、国連平和維持活動は決して順風満帆な歴史を歩んできたのではない。1948年の開始以来、120カ国から参加した2900人以上に及ぶ軍人・警察官、文民職員が任務遂行中に襲撃や事故、病気などで命を落としてきた。

国連安全保障理事会は、1997年7月、第2代国連事務総長(コンゴへの平和維持活動のため訪問の途上に航空機墜落事故で殉職)にちなんで、ダグ・ハマーショルド・メダルを創設し、殉職者(当時85カ国から1500名以上)に対する顕彰を行ってきた。

 今年の授賞式は5月27日に執り行われたが、その日はレバノンのシドン北部において、国連レバノン暫定駐留軍(UNIFIL)の車両が路肩爆弾により爆破され、イタリア部隊の6人とレバノン民間人2人が負傷するという事件があった。

潘基文事務総長は、5月29日の「国連平和維持部隊の日」に寄せたメッセージの中で、「国連平和維持部隊の展開は、戦争を生き延びた人々が、不安定、不正、恐怖に満ちた環境下で再び苦しまなくてすむよう、そしてそのような環境を取り除くことで初めて永続的な平和が実現できるという国際社会の確信を体現したものなのです。」と述べ、現在世界中で平和維持活動に従事している120,000人以上の兵士、警察官、文民職員を称賛した。

また潘事務総長は、別の声明の中で、UNIFLへの襲撃を非難し、国連はレバノン当局と緊密に連携して「迅速かつ徹底的な」調査を行い、犯人に法の裁きを受けさせると語った。

今年の「国連平和維持部隊の日」記念式典は、とりわけ陰鬱な雰囲気の中で執り行われた。4月上旬にはアフガニスタンの国連事務所が襲撃され7人の職員が殺害されたほか、数日後にはコンゴ民主共和国で平和維持活動に従事していた32人(多くが国連要員)が航空機墜落事故で落命している。さらに昨年には1月のハイチ地震で犠牲となった100人以上を含む実に173人の平和維持部隊要員が任務遂行中に遭遇した災害、襲撃、事故、病気で落命している。

「犠牲者は軍人、民間人、警察官、国連ボランティア、各国スタッフ等様々で、所属先は国連諸機関全体に及びます。また、彼らの国籍や担っていた任務等も様々です。しかし、彼らは共通して、国連憲章の原理に対して不動の信念を抱いていました。彼らは他の人々がより安全で明るい未来を生きていけるよう、自らの命を危険に晒したのです。」と、アシャ=ローズ・ミギロ国連副事務総長は、国連本部で執り行われた犠牲者を追悼した献花式で語った。

ミギロ副事務総長が主宰したダグ・ハマーショルド・メダル授賞式では、2010年3月1日から12月3日までの間に殉職した73人が顕彰されたが、今年初めから4月10日までに亡くなった26人についても式典で追悼の意が表せられた。「国連加盟国が平和維持活動を承認し、各国政府が要員を派遣する一方で、最終的に全ての負担は個人に、とりわけ今日こうして私たちが死後に追悼している男女の双肩にかかっているのです。」とミギロ副事務総長は語った。

潘事務総長は「国連平和維持部隊の日」に寄せたメッセージの中で、「南スーダンの国民投票支援から、コートジボワールの大統領選後の危機への収拾対応、また東チモールの警察要員のキャパシティビルディング支援から南部レバノン丘陵地帯のパトロールなど、国連平和維持部隊『ブルーヘルメット』は、国連の理念を最も良く体現した組織として、紛争後の治安回復、和解促進、そしてよりよい未来への希望を育む活動に従事してきました。」と述べ、国連はスタッフが払ってきた多大な犠牲を決して忘れることなくその功績を称賛している旨を強調した。

今年の焦点は、紛争後の社会における「法の支配」の確立の問題であった。潘事務総長は、「法の支配」すなわち、警察や司法制度、矯正制度に対する民衆の信頼を獲得することが、平和維持活動を成功裏に展開していく上で不可欠である点を強調し、「だからこそ、国連は権力を悪用しないよう警察官を訓練し、正義の裁きを行える司法制度を支援し、矯正施設における人道的環境を確立するために取り組んでいるのです。」と語った。

国連平和維持活動担当のアレン・ル・ロイ事務次長は、この点について、「完全に機能しかつ公平な警察及び司法制度を確立することが、持続可能な平和を構築するうえで欠かせません。法と秩序なくして平和はあり得ませんし、同様に、平和なくして法と秩序もありえないのです。」と語った。

国連「法の支配・治安機構」局のドミトリー・ティトフ事務総長補佐によると、現在、約6万人の平和維持部隊がこの任務に従事しているという。「紛争のきっかけとなる原因は無数にあります。国連は、紛争後の社会が将来における紛争を平和裏に対処できるよう法の支配を再構築することを主眼とした支援を行っています。」とディトフ事務総長補佐は語った。

翻訳=IPS Japan戸田千鶴

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