【ヘルシンキIPS=リナス・アタラー、4月7日】
フィンランドのサーミ族の人々の間に、先住民族としての伝統的な生活様式が脅かされるという不安が高まっている。サーミ族はフィンランド憲法で先住民族と認められ、独自の議会をもち、独自の言語を守る権利を有している。だが行政の各方面でこの権利に注意が払われず、「常に同化問題に直面している」とサーミ議会のP.アイキオ議長はいう。
北欧のサーミ族は10万人と推定され、そのうち8,000人がフィンランドに住む。多くがトナカイの放牧で生活しているが、現代的な生活スタイルを選ぶものも増えている。
先週、フィンランド人権連盟主催によりサーミ族の人権に関する会議が開かれた。会議に参加した国際法を専門とするM.シェイニン教授によると、国が行う森林の伐採によりサーミ族のトナカイの放牧に支障がでている。多くのサーミ族が住む北部地域は国営地で、サーミ族がフィンランドで土地の権利を確保していないことが問題となっている。
「政府が行う伐採、採鉱、ダム建設などのプロジェクトを告訴する権利はなく、何の補償もなく放牧地が奪われてしまう」とアイキオ議長はいう。サーミ族の過半数が住むノルウェーでは、政府が土地の共同所有権をサーミ族や地元の人々に認め、補助金の額も多い。
フィンランドは先住民族の土地の権利に関する国際労働機関(ILO)の169号条約を批准していない。この条約の第14条では政府が先住民族の土地保有の権利を保障するよう定めている。シェイニン教授は土地問題が言語と文化に密接につながっているとし、言語と文化を守るため、トナカイの放牧や自然に根ざした生活様式の維持が重要だという。
フィンランド北部ではサーミ族以外の人々もトナカイの放牧をおこなっており、問題の解決は容易ではない。土地問題が注目されるが、言語についても問題は深刻で、公的サービスをサーミ語で受ける権利は保障されていても、実際の現場ではサーミ語による十分な公的サービスは行われていない。
生活様式と言語の保持が懸念されているフィンランドのサーミ族について報告する。(原文へ)
翻訳/サマリー=IPS Japan