ニュース国連から見た2025年米国家安全保障戦略

国連から見た2025年米国家安全保障戦略

【ニューヨークATN=アハメド・ファティ】

2025年版「国家安全保障戦略(NSS)」は、単なる政策文書ではない。これは世界観である。研ぎ澄まされ、硬質化し、米国がかつて擁護した戦後国際秩序そのものに、真正面から照準を合わせている。

多国間主義が活動の前提となっている国連の内側から読むと、まるでこの家の設計者が数十年ぶりに戻ってきて、ブルドーザーとメジャーを手に、「修理」すると言いながら、住む側が何とか住み続けてきた構造そのものを壊しにかかる―そんな光景に見える。

この国家安全保障戦略の冒頭は、過去30年の米国外交を「甘い」「誤った」ものと断じ、「グローバリスト」が主権を「国境を越える制度」に外注したと切り捨てる(p.1~2)。意味するところは明白だ。協調にもとづく地球規模のガバナンスという土台そのものに対する、正面からの思想攻撃である。

国連は「責任の共有」を重視する。だがNSSはそれを「目的がぼやける」とみなす。
国連は「相互依存」を前提とする。だがNSSはそれを「弱み」だと捉える。
国連は「外交」を解決の手段と考える。だがNSSはそれを「内政への干渉」に近いものと見る。

これは口調の違いではない。哲学の断絶である。

移民:国連の人道の柱と、米国の新たな「要塞」

多国間主義との衝突が最も露骨に現れるのは、移民に対する文書の断定的な姿勢だろう。NSSは「大量移民の時代は終わった」と宣言し、国境管理をほぼあらゆる国家安全保障上の優先事項の上位に置く(p.11)。

これは、国連のアプローチと正反対である。
国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は、避難や強制的な移動を「保護」と「権利」の問題として捉える。
国際移住機関(IOM)は、移民を地球規模で管理すべき課題と位置づけ、共有された解決策を重視する。
「移住に関するグローバル・コンパクト」も、一方的な壁ではなく、国際協力を前提としている。

これに対しNSSは、移民を戦略的脅威として位置づける。テロやフェンタニルと同列の「不安定化要因」として描いているのだ。率直に言えば、この文書は、脆弱な人々を国際的安定の担い手ではなく、「安全保障を脅かす存在」として扱っている。

この認識の転換は、今後何年にもわたり、あらゆる人道交渉に影響を及ぼすだろう。

蘇るモンロー・ドクトリン―今度は「牙付き」

次に登場する西半球に関する章は、あまりに急進的で、警鐘を鳴らさざるを得ない。NSSは「モンロー・ドクトリンに対する『トランプ補則』」を掲げ、テキサス以南の港湾、鉱物、海底通信ケーブルに至るまで、域外勢力に「手を出すな」と警告する(p.15~18)。

これは婉曲表現ではない。配慮すらない。
要するにトランプ政権はこう宣言している―「この半球は我々のものだ。以上」。

国連にとって、これは単に「居心地が悪い」などというレベルの話ではない。構造的に両立しない。多国間秩序は、大国が特定地域を私有地のように扱うことを防ぐために築かれてきた。ところが、この補則はそれを正面から覆し、西半球を戦略的に「囲い込む」発想へと転じてしまう。

中南米諸国は、投資を歓迎する姿勢を公には示すかもしれない。だが国連の内側では、こうした声が漏れてくるだろう。

「米国が私たちのパートナー選びにまで実質的な拒否権を持つのなら、私たちの主権はどこから始まるのか」

このドクトリンは、次の枠組みを後景に押しやる。
・国連の開発支援
・地域機構
・多国間の資金供与
・ワシントンの承認を前提としない対外連携

結果として、多国間主義は「米国の裏庭」では、存在感を大きく削がれる。

欧州:対話の相手ではなく、「診断」の対象

欧州に関するNSSの語り口は、戦略文書というより文明論に近い。NSSは欧州について、「文明の消失(civilizational erasure)」「人口の先細り」「アイデンティティの喪失」「規制による息苦しさ」を並べ立てる(p.25~27)。

それは分析というより、追悼文に近い。

この見立ては、国連が維持してきた「西側の統一的な外交姿勢」を弱めかねない。安保理の力学、制裁の運用、人道決議の形成において結束は不可欠だ。もしワシントンがブリュッセルを「パートナー」ではなく「問題」と見なすなら、1945年以降の自由主義秩序を支えてきた結束の土台は、確実にひび割れる。

中国:多国間システムのストレステスト

この文書の通底音を最も強く支配している国があるとすれば、中国である。NSSは中国を、供給網、AI、レアメタル、知的財産、移民、宣伝工作、さらには医薬品に至るまで、あらゆる戦略領域を左右する中心的な対抗対象として描く(p.20~24)。これは競争ではない。構造的な対立である。

だが、動かしがたい事実がある。国連は中国抜きでは機能しない。中国は国連予算の主要な拠出国であり、安保理常任理事国であり、PKOにも重要な貢献をしている。さらに、保健、気候交渉、開発金融でも要の一角を占める。

米国が中国を全領域にまたがる「実存的脅威」と位置づければ、多国間主義は巻き添えになる。最大のリスクは単純だ。互いに完全には両立しない2つの国際システムが形を取り始め、国連の普遍性がその狭間で圧迫されることである。

中東:まれで、脆い一致点

意外にも、中東に関してはNSSが示す方向性が、国連の優先課題と一部で重なる。緊張を和らげ、安定を確保し、人質解放を進め、地域戦争への拡大を防ぎ、新たな外交枠組みを支える――といった点である(p.27~29)。これは、一定程度は活用可能な一致点だ。

ただし、動機は大きく異なる。国連が目指すのは、権利、統治、人道法に根ざした持続可能な平和である。一方、NSSが求めるのは、米国の負担を軽減し、対抗勢力を抑え込むための「安定した環境」に近い。

この一致は有用だが、脆い。ガザ、レバノン、シリア、紅海のいずれかで次の火種が上がれば、思想の違いは容易に再び表面化する。

アフリカ:協力か、資源狩りか

NSSはアフリカを「投資の最前線」と位置づけ、鉱物とエネルギーを米国の主要な関心事に据える(p.29)。

アフリカの指導者の中には、資源をめぐる競争が投資や交渉力の向上につながるとして、一定程度歓迎する向きもあるだろう。中国、ロシア、トルコ、EU、湾岸諸国はすでに深く関与している。

しかし、国連がアフリカを見る視野はそれより広い。国連が重視するのは、資源の確保そのものではなく、社会が安定して回り、人々の暮らしが底上げされ、紛争が再発しにくい土台が築かれることだ。具体的には、次のような課題である。
・汚職を抑え、透明で説明責任のある行政を育てること(統治)
・教育、保健、雇用など生活の基盤を強くすること(人間開発)
・紛争の予防と停戦後の社会の立て直しを支えること(平和構築)
・一次産品頼みから脱し、現地で付加価値を生む産業を育てること(産業化)
・環境と将来世代を損なわない形で成長を続けること(持続可能な成長)

要するに、NSSが焦点を当てるのは「アフリカが何を持つか」であり、国連が重視するのは「アフリカがどのような社会になろうとしているか」だ。この視点のずれこそ、多国間機関が役割を発揮すべき領域である。

結論:衝突は避けられない。それでも機会は死んでいない

NSSは、国連発足後の米国戦略の中でも最も「主権第一」であり、多国間主義に懐疑的な文書である。国際協力を当然の前提とせず、世界を「共有されたシステム」ではなく、国家が競い合う舞台として捉えている。

しかし、どれほど一国主義的な米国であっても、地球規模の現実から逃れ切ることはできない。
・感染症の世界的流行(パンデミック)
・気候変動がもたらす被害
・供給網の分断や脆弱性
・AIなど新技術のルールづくり(技術ガバナンス)
・国境を越えて連鎖する危機

これらは、いかなる国であれ―たとえどれほど強大でも―単独では解決できない問題である。

ゆえに衝突は避けがたい。だが崩壊が必然というわけでもない。

国連と多国間システムはいま、ひび割れの中に活路を見いだし、残された余地を生かしながら、ワシントンに、近代史が繰り返し示してきた真実を思い出させなければならない。

一国の意思だけが支配する世界は不安定である。
責任を共有する世界こそ、持続可能である。

そして結局、米国自身も再び理解することになるだろう。機能する国際システムの価値を代替できるほど高い壁は、いかなる国にも築けないのだと。(原文へ

INPS Japan

Original URL: https://www.amerinews.tv/posts/a-national-security-strategy-caught-between-america-first-and-a-multilateral-world

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