【ワシントンDC・IDN-InDepth News=アーネスト・コリア】
「Af-Pak」という言葉を使った者には罰金を科すべきだ――こう主張するのは、米下院軍事委員会テロ・非通常脅威・能力小委員会のアダム・スミス委員長だ[IPSJ注:「Af-Pak」とは、ひとつの脅威として、アフガニスタンとパキスタンをまとめてさす用語]。
スミス委員長の警告は、米軍とNATO軍がアフガニスタンにおいて行っている作戦において、文化・政治・社会などの非軍事面を見ることの重要性を示唆している。
米国の対アフガニスタン戦略の今後について、いくつかの異なるアプローチが出されている。
第一は、「カオシスタン」(Chaosistan)アプローチ[IPSJ注:カオス/混乱状態(chaos)とアフガニスタンを合わせた言葉]。どのような混乱が生じることになろうとも米軍をアフガンから引き、アルカイダの拠点だけを空軍で叩く戦略だ。
第二は、「現状プラスアルファ」アプローチ。戦力を現在のレベルに保ちつつ、アルカイダの拠点だけを無人機で攻撃するというものだ。
そして、第三が、米軍のスタンレー・マクリスタル在アフガン司令官によって提唱されている、全面的な見直し路線である。ポイントは、米軍・NATO軍をいかに現地社会に溶け込ませるか、という点にある。
マクリスタル司令官はいう。「これまでの国際治安支援部隊(ISAF)は、地元社会の動きについて十分理解してこなかった。反乱勢力や腐敗、無能な公務員、権力ブローカー、犯罪者などがいかに絡み合いつつ、人々の生活に影響を与えているか、ということを」。
ISAF軍は、アフガン社会を理解することによって、「占領軍ではなく、アフガニスタン社会の客人」と見られるようにしなければならない、とマクリスタル司令官は考える。
先日スロバキアのブラティスラバで開かれたNATO国防大臣会談では、マクリスタルの提唱する路線に大筋で合意があった。しかし、そのために必要な追加の兵力や資金については、なんら合意がなされなかった。
マクリスタル将軍は、今後1年で最低でも4万人、最高で8.5万人の増派が必要とみている。
他方、米国内ではアフガニスタン戦争への疑念が広がり始めている。先日「ワシントン・ポスト」紙が行った世論調査では、アフガニスタンでの戦争拡大に反対が49%、賛成が47%と真っ二つに分かれた。9・11テロ直後のブッシュ政権によるアフガニスタン攻撃に熱狂的な支持があったことを思えば、隔世の感がある。
アフガニスタンはこれまで、招かれざる客に対してけっして優しくはなかった。その歴史的真実が、オバマ政権に対してのしかかっている。
米国の今後の対アフガニスタン戦略を巡る諸議論について報告する。
翻訳/サマリー=山口響/IPS Japan浅霧勝浩