【国連IPS=タリフ・ディーン】
「帝国の墓場」といわれているアフガニスタンに、1万7,000人の米兵増派を計画している米国は、英国、ソビエトに続くのだろうか。「バラク・オバマ大統領はマーティン・ルーサー・キング牧師のいう『軍国主義の狂乱』に道を譲ってしまった」と公共の正確性を求める研究所のN.ソロモン代表はIPSの取材に応じて語った。
その増派によりNATO軍と合わせた兵力は今年末までに10万に達すると思われる。オバマ大統領が軍事力だけでは問題は解決しないとしながら増派を決定したことについて、「その不確かさはベトナム戦争を思い出させる」とニューヨーク大学のM.B.ヤング教授はいう。
17日に国連アフガニスタン支援ミッション(UNAMA)が発表した報告書によると、2008年のアフガニスタンの民間人の犠牲者は2,118人で前年を40%上回った。55%はタリバンを含む反政府勢力によるが、39%は政府軍と国際治安部隊によるもので、報告書は民間人の死亡を避けるあらゆる手段が求められるとしている。
大統領選挙戦ではイラクを誤った戦争とし、イラクから撤退して、イスラム原理主義の復活を抑えるためにアフガニスタンへの兵力増強が必要だとオバマ氏はいった。だが多くの専門家はアフガニスタンがさらに米軍を窮地に追い込むのではないかと指摘している。
前出のソロモン氏は、オバマ大統領のアフガニスタン増派について、中期的には支持されなくなると予想している。UNAMAの元政務官でランド研究所のC.フェア博士は増派による治安回復に懐疑的で、「アフガニスタンをアルカイダの聖域にしないためにより必要とされているのは、和解のための国際社会からの支援だ」という。
アフガニスタンの治安問題は多様な勢力が混在するため非常に複雑である。ソロモン氏は米国大統領がアフガニスタンでもっとも険しい道に足を踏みいれたという。「軍事力で解決できないと主張しながら軍事力で解決しようとする矛盾は長期的な理性を欠いている」
「オバマ大統領はテロとの戦争という側面を論じながら、自身の政治的資本に投資し、国防省の使命を支持し始めたが、その代償となるのはおそらく失敗を運命づけられている戦争である。強大な米軍の最高司令官にとって武力への依存は恒常的な誘惑だが、そのもたらすものは苦しみだ」と同氏は語った。
オバマ大統領のアフガニスタン増派について報告する。(原文へ)
翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩