【ナイロビIPS=テルナ・ギューズ】
アフリカの緑の革命(AGRA)は、ウェブサイト上で、アフリカの総体的食糧安全保障および生計は世界でも特異な悲劇的状態にあると述べている。同問題に取り組むAGRAプログラムは、本当にアフリカに適したアプローチなのだろうか。
同計画に異議を唱える人々は、同プログラムはアフリカの食糧生産の核をなす零細農家ではなく商業的農業に寄与するもので、作物の多様性、伝統的農業知識の喪失をもたらすと主張している。同問題について、ナイロビを拠とする文化エコロジー研究所のガスル・ムブル所長に聞いた。
IPS:緑の革命はアフリカで既に試されているのですか。
ガスル・ムブル:アフリカの全ての国で肥料や除草剤が使用され、多くの改良種も紹介されていますから、それぞれの方法で緑の革命は行われていると思います。
IPS:その結果は?
GM:商業的農業では、パッケージとなっている肥料、農薬、種を買うための継続的資金が得られますから、成果が出ています。
IPS:アフリカの食糧安全保障は小規模農家が担っていると聞きますが、緑の革命が彼らに利益をもたらさないのは何故ですか。
GM:実を言えば、緑の革命は彼らの農業システムを崩壊させているのです。このモデルでは継続的に改良種子を購入しなければならないのですが、小規模農家の収入は不安定でそれができないのです。収穫が悪ければ、翌年は肥料、農薬どころか種子を買うこともできません。
IPS:緑の革命はアジアでは成功しましたが。
GM:アジアは生産性の高い作物の栽培で成功しましたが、作物の多様性が失われました。基本的に緑の革命は作物の多様性を問題としないのです。
IPS:アフリカの小規模農業を支えているのは女性です。緑の革命がジェンダー問題に与える影響は。
GM:AGRAはアフリカの女性地位向上にとどめを刺すものです。AGRAは銀行ローンにより行われますから、銀行口座を持たない女性は資金を手にできません。ローンを獲得できるのは男性で、それも農業従事者ではありません。この資金は女性支援に使われるどころか彼女たちを奴隷状態に追いやるのです。
IPS:緑の革命がアフリカに適さないとしたら、どの様な代替策があるでしょう。
GM:アフリカが必要としているのはローカルな革新、つまりエコ農業、多様な作物から取れる自前の種の使用、地元農家支援のための法の確立、原生植物の耕作技術開発などです。
IPS:実践例はありますか。
GM:ジンバブエでは緑の革命のフィージビリティー・テストが行われました。同国ではオーガニック運動も盛んです。ケニアでは、オーガニック農業を促進しているNGOがあり、食の安全への関心の高まりにより我々は文化を取り戻さなければなりません。収益を上げています。またインドでも、エコロジー農業への回帰が食の確保に必要だとの認識が高まっています。私は、世界のいかなる企業も意義ある社会変換をもたらすことはできないと考えます。緑の革命は利益に基づくものです。真の社会変革は人によってもたらされるものです。
アフリカの緑の革命をテーマとしたケニア文化エコロジー研究所所長とのインタビューを紹介する。 (原文へ)
翻訳/サマリー=IPS Japan 浅霧勝浩