地域アフリカアフリカが世界最大の非核大陸となる

アフリカが世界最大の非核大陸となる

【カイロIDN-InDepth News=ファリード・マハディ】

アフリカは面積、人口においてアジアに次ぐ世界第二の大陸であるが、今や域内に約10億人が居住する53カ国からなる世界最大の非核大陸となった。 

このニュースは、イランの核開発疑惑の動向に目を奪われている殆どの主流メディアに注目されることはなかったが、世界最大級のウラニウム産出量を誇る地域の非核化に関する問題であり、重要な出来事である。 

事実、国際原子力機関(IAEA)とアフリカ連合(AU)は8月中旬、欧州及び中国資本の多国籍企業がアフリカにおいて合法及び非合法な手段でウラニウム採掘を盛んに行っているとの報道が飛び交う中、アフリカ非核地帯化条約(NWFZ:通称ペリンダバ条約)の発効を発表した。これにより、南半球の全地域が非核地帯となった。

 ペリンダバ条約の発効に向けた手順は、ブルンジが7月15日に28番目の批准国となったことで完了した。因みにこの条約の最初の批准国はアルジェリアとブルキナファソで、条約署名の2年後にあたる1998年に批准している。 

ペリンダバ条約は、核兵器の不拡散を検証するため、全ての締結国に対してIAEAとの「包括的保障措置協定」を締結することを義務付けている。これらの協定は核不拡散条約(NPT)に関連して締結が義務付けられている諸協定に相当するものである。 

また、同条約は締結国に対して「核物質及び核関連施設や機器を盗難や不正使用から防護するために、最高水準のセキュリティーを適用すること。また、非核地帯内の核施設に対する武力攻撃の禁止」を義務付けている。 


非核兵器地帯 

ペリンダバ条約の発効によってアフリカ大陸は正式に非核兵器地帯と宣言された。1995年6月にヨハネスブルクとペリンダバで草案が作成され、1996年4月11日にカイロで署名開放された(アフリカ諸国42カ国が調印。28か国の批准が発効要件とされた:IPSJ)。この条約の名称は南アフリカ共和国(南ア)プレトリアの西に位置するハートビースプールト・ダム近郊にあるペリンダバ原子力研究所に因んで付けられたものである。 

ペリンダバ原子力研究所は、南ア原子力公社が運営する同国の主要な核研究センターで、1970年代には南ア政府による核爆弾の開発と製造、それに続く備蓄の舞台となった場所である。 

モハメド・エルバラダイIAEA事務局長は、「アフリカ非核地帯は、ラテンアメリカ、カリブ海地域、東南アジア、南太平洋、中央アジアにおける非核地帯に準じる重要な地域レベルの信頼醸成、安全保障措置であり、核兵器のない世界に向けた我々の努力を後押しするものである。」と宣言した。 

またエルバラダイ氏は、「ペリンダバ条約が核科学技術を平和目的のために活用することを支持していることを歓迎し、そのような核技術の活用がアフリカ大陸の経済・社会開発に寄与すると確信している。」と語った。 

非核化への遠き道のり 

アフリカを非核地帯とする試みの起源は、1964年7月17日から21日にカイロで開催された当時のアフリカ統一機構(OAU)(2002年にアフリカ連合に発展改組:IPSJ)首脳会議に遡る。その際、加盟国首脳達はアフリカ非核地帯を設立することを決定した。 

カイロに集ったアフリカ各国の首脳達は、「国際連合主催の下で締結される国際合意を通じて核兵器の製造及び同技術を駆使する能力を取得しないことを約束する」用意があるとの宣言を行った。 

その際、アフリカ各国の首脳達は、自らの立場を「非核地帯が、核兵器の水平的拡散(非核国が核兵器開発に乗り出すことによって核保有国が増えること)及び垂直的拡散(核保有国が自分らの安全保障戦略で核兵器に対する依存度を高めながら核戦力の質的・量的増強を図ること)を防止する最も効果的な手段のひとつである」とした1975年12月11日の国連総会決議をはじめとする全ての関連合意に基づくものとした。 

アフリカ諸国の首脳達はまた、「核兵器のない世界構築という究極の目標達成に向けてあらゆる手段を講じる必要があり、全ての国々がその目標に向けて貢献する義務がある」との信念を強調した。 

彼らはまた、「アフリカの非核化は、核不拡散管理体制を強化し、核エネルギーの平和的利用における国際協力を促進するとともに、包括的かつ完全な軍縮に向けた歩みを促し、地域及び国際社会の平和と安全保障を向上させることと確信している」との声明を述べた。 

ペリンダバ条約の発表に際して、アフリカ諸国の首脳達は「非核地帯化条約がアフリカ諸国を核攻撃から守る」と確信している点を強調した。 

また同条約は、締結国に核廃棄物の投棄を禁じていることから、アフリカを放射線廃棄物やその他放射性物質による環境汚染から保護することになる。 

しかしながら、アフリカ諸国の首脳達は同時に、NPT第4条を厳格に順守していく意向を表明した。 

平和的利用が絶対条件 

NPT第4条は、「全ての締結国が等しく、核エネルギーを平和目的のために開発、研究、及び生成、活用する不可譲の権利を有している」ことを認めている。 

同条項はまた、締約国が原子力の平和的利用のため設備、資材並びに科学的及び技術的情報を最大限交換することを不可譲の権利として認めている。 

また、カイロに集ったアフリカ各国の首脳達は、アフリカ諸国の持続可能な社会経済開発のために、平和利用を目的とした核エネルギーの開発と実用的な適用を目的とした地域協力を推進していく決意である旨を強調した。 

豊富なウラニウム資源と核廃棄物 

アフリカは世界有数の豊富なウラニウム鉱床を有する地域である。多くの工業先進国がアフリカの鉱物資源一般に、特にウラニウム資源に深く依存している。例えばフランスの場合、国内58か所の原子力発電所を稼働し続けるため、ニジェールのウラニウム資源に完全に依存している。 

アフリカにおける他のウラニウム産出国は、アルジェリア、ボツワナ、中央アフリカ共和国、コンゴ民主共和国、ガボン、ガンビア、ギニア、マラウィ、モロッコ、ナミビア、タンザニア、ザンビアである。 

しかしながら、アフリカはそれと同時に、東南アジアと並んで世界最大の放射能性及び毒性廃棄物の投棄地域と報道されている。 

ソマリアは核廃棄物の主な投棄地域で、同国近海の海賊活動もこの不法活動に関連しているとの疑惑も報じられている。 

アジア、ラテンアメリカにも広がる非核化地帯 

事実、類似した非核化条約が南アメリカ(トラテロルコ条約)、南太平洋(ラトロンガ条約)、東南アジア(バンコク条約)及び南極(アトランティック条約)においても発効している。 

さらに中央アジアに非核兵器地帯を創設するセメイ条約(カザフスタンのセメイの旧名はセミパラチンスク:IPSJ)が、今年の3月21日に発効した。この条約にはカザフスタン、キルギスタン、タジキスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタンの五カ国が加盟している。 

セメイ条約(中央アジア非核地帯条約)は、中央アジアの旧ソ連加盟諸国で構成されたこの種のものとしては最初のものであり、北半球における最初の非核地帯である。また同条約には中央アジアならではの環境問題を取り扱った項目が含まれている。 

これら中央アジアの5カ国には、旧ソ連時代に核兵器関連施設が建設され、いずれの国も当時の核兵器製造や実験を起因とする深刻な環境被害に直面している。 

アフリカ非核地帯化条約と同様、中央アジア非核地帯条約も締結国による、域内における核爆発装置の開発、製造、貯蔵、取得、及び所有を禁止している。 

このように地域レベルで発効に漕ぎつけている非核化条約の動きは、核兵器の廃絶を目指して活動を展開している世界の市民社会にとっての一里塚となっている。(原文へ) 

翻訳=IPS Japan浅霧勝浩 

This article was produced as a part of the joint media project between Inter Press Service(IPS) and Soka Gakkai International in Consultative Status with ECOSOC.

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