SDGsGoal16(平和と公正を全ての人に)アフリカ諸国の紛争が新たな難民数を今世紀最悪レベルに押し上げている

アフリカ諸国の紛争が新たな難民数を今世紀最悪レベルに押し上げている

【ワシントンINPS=ジム・ローブ】

国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)が6月20の「世界難民デー」に合わせて発表した年次報告書によると、2011年には、アフリカの4カ国で発生した内戦等により、世界で新たに約80万人が安全な避難場所を求めて祖国から逃れ難民となっていた。

「危機の年:2011年世界の動向レポート」によると、2011年は難民となる人が今世紀になって最も多く発生した記録的な年となった。

同報告書によると、2011年は紛争や迫害により世界で430万人が新たに避難を強いられた。しかし、こうした新たに発生した膨大な数の避難民の大半は、国境を超えることなく自国内で避難先を探すことを強いられた国内避難民である。

この報告書をジュネーブのUNHCR本部で発表したアントニオ・グテーレス国難民高等弁務官は、「2011年、世界は大規模な悲劇に見舞われました。あまりにも短い期間にあまりのも多くの人々が混乱の渦中に巻き込まれ、大きな被害、甚大な被害を負担することになったのです。」と語った。

 
47頁からなる同報告書によると、昨年末時点で、世界で4250万人が、難民(1520万人)、国内避難民(2640万人)、外国への庇護申請者(89万5千人)として避難難を強いられていた。またこの報告書は、これら3つのカテゴリーについて、国別の統計も掲載している。

 なお難民・避難民の総数(4250万人)は、2010年の総数4370万人よりもわずかに減少した。報告書は、その主な理由として、2011年は大量の国内避難民の帰還(過去10年で最多の320万人)が実現した点を挙げている。そうした国内避難民の帰還数を国別にみると、コンゴ民主共和国(823,000人)、パキスタン(620,000人)、コートジボワール(467,000人)、リビア(458,000人)となっている。

紛争により祖国を逃れる

2011年に最も多くの難民を出した国は、コートジボワール、リビア、スーダン、ソマリアで、多数の人々が内戦を逃れて国境を越えた。また、深刻な旱魃から故郷を離れた数万人のソマリア人が、隣国のケニアやエチオピアに難民として逃れていった。

これらすべての国において、難民の本国帰還が進んでいるが、これほど大量の住民が移動したことに伴う波及効果は、依然として地域全体に様々な悪影響を及ぼしている。

また報道によれば、マリでは、故ムアンマール・カダフィのリビア軍に所属していた元トゥアレグ族傭兵が帰国し、北部の分離独立の動きを強めてから、数万人の北部住民が故郷を逃れている(反乱軍はマリ北部地域をアザワドとして、独立を宣言している)。

同様にスーダンの場合も、約1年前に南部が南スーダンとして独立し、その後散発的な国境紛争が続いたことから、両国への難民帰還が進められる一方で、新国境地帯では新たに数万人の避難民が発生している。

また2011年には世界で約100万人余りの難民が本国への帰還を果たした。こうした帰還難民の大半はシリアから帰国したイラク人とイラン及びパキスタンから帰国したアフガニスタン人であった。

難民生活の常態化?

こうした一部難民の本国帰還に進展がみられ、注目を集める一方で、全体的に長期的な傾向として、難民の外国滞在(多くの場合、難民キャンプや都市部で教育へのアクセスや就業機会が極めて限られた困難な状況におかれている)期間がますます長期化しているという、より深刻な側面については、実態が見えにくくなっている。

UNHCR年次報告書によると、同機関の保護対象となっている1040万人の難民のうち、約75%が、少なくとも5年以上の長期にわたる難民生活を送っていた。

しかしこの数字には、約500万人にのぼる、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)が保護対象としているパレスチナ自治領、レバノン、シリア、ヨルダンに住むパレスチナ難民とその子孫は含まれていない。
 
2011年末現在、パレスチナを除けば、世界で最も難民を出している国は、引き続きアフガニスタンである。同年末までに270万人のアフガン難民が国外に逃れており、その大半が隣国のパキスタンとイランに滞在している。

はたして、パキスタンとイラン両国は、現在世界で最も難民を受け入れている国となっている(パキスタン:170万人、イラン:90万人)。

2番目に最も難民を出している国がイラク(140万人)で、以下、ソマリア(108万人)、スーダン(50万人)、コンゴ民主共和国(49万人)、ミャンマー人(41万5千人)、コロンビア(39万5千人)と続く。

前述のパキスタンとイランを除けば、最も多くの難民を受け入れている国々は、シリア(七十五万五千人)、ドイツ(五十七万千人)、ケニア(五十六万七千人)、ヨルダン(四十五万千人)、チャド(三十六万六千人)である。世界の難民の約80%が、欧米先進国などの遠く離れた国々ではなく、近隣諸国に安住の地を求めて逃れている。また同報告書は、南アフリカ共和国が、個人の難民庇護要請を受け入れた数としては、四年連続で世界一であると記している。

過度の負担

同レポートは、難民受け入れの負担を受けているのは、富裕国ではなく、難民の絶対数からも、また、ホスト国の経済規模から見ても、圧倒的に貧困国(全世界の難民の8割が居住)である実態を明らかにしている。

一人当たりの国内総生産に占める受入難民数でみると、パキスタンが1ドル当たり605人で、最も経済的に負担を負っていることが分かる。これにコンゴ民主共和国の399人、ケニアの321人、リベリアの290人、エチオピアの253人、チャドの211人が続いている。

UNHCRは、2011年末時点で、前年度と比較して80万人以上の国内避難民が新たな支援対象となっており、その原因として、アフガニスタン、コートジボワール、リビア、南スーダン、イエメンにおいて避難民が急増した点を指摘している。

2011年末時点でUNHCRに登録された国内避難民を最も多く抱えていた国は、コロンビアで、以下スーダン(240万人)、ソマリア(140万人)と続いていた。(原文へ

翻訳=INPS Japan浅霧勝浩

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