SDGsGoal2(飢餓をゼロに)飢餓撲滅と食料安全保障のカギを握るアグロエコロジー

飢餓撲滅と食料安全保障のカギを握るアグロエコロジー

【ローマIDN=ジャヤ・ラマチャンドラン】

国連食糧農業機構(FAO)によれば、全ての人を養うのに十分な食料が世界で生産されているにも関わらず、依然として8億1500万人が飢えている。2050年までに100億人にまで増えると見込まれる世界の人口が必要とする食料を十分得られるようにすることは、国際社会が直面している最大の課題の一つだ。専門家らは、アグロエコロジーにひとつの解決策を見出している。

専門家によると、アグロエコロジーを普及することによって、従来の化石燃料に依存する工業化された農業に代わって、持続可能な食料・農業システムへと移行することが可能だという。これは、食料安全保障と栄養をすべての人に保証し、社会的・経済的平等をもたらし、農業が依存する生物多様性とエコシステムを保全するものだ。

José Graziano in Itamaraty Palace press meeting/ Renato Araújo/ABr - Agência Brasil [1], CC BY 3.0 br
José Graziano in Itamaraty Palace press meeting/ Renato Araújo/ABr – Agência Brasil [1], CC BY 3.0 br

FAOのジョゼ・グラジアノ・ダ・シルバ事務局長は、4月3~5日にローマのFAO本部で開催された第2回国際アグロエコロジーシンポジウムの閉会あいさつで、「家族経営の農家(世界の食料のうち約8割をまかなっている)が、今後もアグロエコロジー導入の中心に据えられるべきです。」と語った。

ダ・シルバ事務局長は、「今こそ、アグロエコロジーの実行を加速すべき時です。」「私たちは、かつてアグロエコロジーとは何かを議論していた段階から、今では今後数年で達成すべき特定の事業目標を持ち、このシンポジウムを成功させるべく尽力いただいている市民社会や各国政府から強い支持を得られるところまで、歩みを進めてきました。」と語った。

ダ・シルバ事務局長はまた、「私たちは、アグロエコロジーについて語る際、単に技術的な問題を語っているのではありません。むしろ社会的な側面を強調したいのです。つまり、FAOの業務の中でアグロエコロジーの役割を強化すると言えば、それは、家族や小農、漁民、牧畜業者、女性や若者の役割を強調することを意味しています。」と語った。

さらにダ・シルバ事務局長は、「家族農業の10年」(2019~28)と「栄養のための行動の10年」(2016~25)を、家族農業とアグロエコロジー、持続可能な開発の間の有益な繋がりに対する認識を高める機会として強調した。

SDGs Goal No. 2
SDGs Goal No. 2

シンポジウムでは、アグロエコロジーの規模を拡大することが、2015年9月に国際社会が承認した持続可能な目標(SDGs)を達成するための重要な要素であるとはっきりと理解する必要性が強調された。SDGsの第2目標は「飢餓に終止符を打ち、食料の安定確保と栄養状態の改善を達成するとともに、持続可能な農業を推進する」ことを目標としている。

シンポジウムには、72カ国の政府、約350の市民団体や非政府組織、6つの国連機関から700人以上が参加した。

シンポジウムの「まとめ」を発表したブラウリオ・フェレイラ・デソウザ・ディアス議長は、「アグロエコロジーは、数多くの利益をもたらしてくれます。」と指摘したうえで、具体例として、(アグロエコロジーは)食料安全保障やレジリエンス(=リスク対応能力)を増し、暮らしや地域経済を向上させ、食料生産と食事を多様化し、健康と栄養を促進し、天然資源や生物多様性、生態系の機能を保護し、土壌の肥沃度と健全性を向上させ、気候変動への対応を容易にし、気候変動を緩和し、地域に根付いている文化や伝統的な知の体系を守ることにつながる、と語った。

ディアス議長はまた、「アグロエコロジーを基盤とした持続可能な農業や食料システムに向けた変革を可能にし、土地や水、種子といった生産資源に対する農民の権利とそれらへのアクセスを尊重し保護し満たすような方法で、法的・規制の枠組みを実行することが極めて重要です。」と語った。

「議長まとめ」はまた、関係者による「緊急に必要な」取り組みのリストを挙げるなど、前進する道筋を示している。各国政府に対しては、アグロエコロジーや持続可能な食料システムを促進・保護し、持続不可能な農業への「逆向きのインセンティブ」を取り除く政策的・法的枠組みを策定するよう呼びかけた。

「議長まとめ」はまたFAOに対して、アグロエコロジーに関する詳細な10年行動計画を策定し、「アグロエコロジー強化イニシアチブ」の履行を開始するよう求めた。

消費者や市民に対しては、食料システムにおける変革の担い手として行動し、責任ある消費を促進するよう呼びかけた。ドナーに対してはアグロエコロジーへの長期的投資を増やすよう呼びかけ、学界や研究機関に対してはアグロエコロジー研究の強化を呼びかけた。

シンポジウムと並行して、世界未来評議会(WFC)がFAOやIFOAM・オーガニクスインターナショナルと共催して、アグロエコロジーの実施に向けた環境整備に貢献する先進的な政策を世界的に表彰する「2018年未来政策賞」を開始した。受賞式は2018年後半にローマのFAO本部で開かれる。

FAO’s headquarters in Rome, in Via delle Terme di Caracalla./ Scopritore – Egið verk, CC BY-SA 3.0

「2018年未来政策賞」は、FAO、世界未来評議会、IFOAM・オーガニクスインターナショナルが主催し、国際グリーンクロス、DO-IT(オランダオーガニック国際貿易)、セケムグループ(エジプト)が後援している。

人類の緊急な課題に取り組むもっとも先見の明のある政策に対して、毎年、未来政策賞が授与されている。これまでに、人間ではなく政策を表彰する世界で唯一の賞である。世界未来評議会は国連機関と協力して2010年以来この賞を与えている。

「今年の未来政策賞は、持続可能な農業を実現する実証済みの解決策を明らかにすることになるでしょう。世界未来評議会は、将来世代の利益のためにアグロエコロジーを推進する最高の政策を特定し、普及していくために、FAOとの協力を一層推進する決意です。すでに影響力を及ぼしている政策から学ぶことが非常に重要です。」と、世界未来評議会のアレクサンドラ・ワンデル会長は語った。

「世界の指導者や国連総会は、すべての人にとっての健康的な栄養摂取を達成し、社会の不正義や気候変動、生物多様性の損失に対処するアグロエコロジーの潜在力を、認識しています。」「私たちは、正しい政策枠組みが変革をなしとげた事例を多くの国で見てきました。そうした革新的な政策を積極的に広め報いていこうではありませんか!」とIOFAM・オーガニクスインターナショナル世界理事会のペギー・マイアーズ理事長は語った。(原文へPDF

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翻訳=INPS Japan

This article was produced as a part of the joint media project between The Non-profit International Press Syndicate Group and Soka Gakkai International in Consultative Status with ECOSOC.

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