【アブダビWAM】
「シリアの主要な地方都市であるダルアーやラタキアで連日大規模なデモが繰り広げられる中、民衆の改革への希望は高まりを見せているが、明らかにバシャール・アサド大統領は、いかなる変化も、とりわけ民主化圧力のもとで改革を強いられることを恐れている。」とアラブ首長国連邦(UAE)の日刊紙は報じた。
「3月30日のアサド大統領の演説には国民の多くが期待したが、結局政治改革についてはなんの言及もなく、失望に終わった。」とドバイに本拠を置く英字日刊紙「ガルフニュース」は4月1日付の論説の中で報じた。
また同紙は、政府報道官が、大統領の演説内容について、1963年から続く非常事態宣言の解除や新たなメディア関連法の導入の可能性、さらに支配政党バース・アラブ社会党の絶対優位を定めた憲法の改正について言及される画期的なものとなるだろうと事前に触込んでいた点を指摘した。
同紙は、3月29日のムハンマド・オトリー内閣の総辞職(アサド大統領による事実上の更迭で国民への融和姿勢を打ち出したもの)に続くこうした具体的な公約に、国民の間で政治変革への期待が高まっていたと報じた。しかし実際のアサド大統領による国会演説内容は「そうした民主改革を無視したもの」であり、国民は期待を裏切られたと報じた。
アサド大統領は、演説の中で、「シリアに騒乱の種を播こうとする巨大な陰謀がある」と指摘した上で、「シリア国民は平和的だが、われわれは国益や理念、価値を守ることをちゅうちょしたことはない。私は戦いを望まないが、挑まれれば、喜んで応じる」と述べた。
「エジプトに次ぐアラブ世界最大の軍事大国の大統領によるこうした発言には独特の響きがある。シリア政府が民主化を要求している勢力とのいかなる対話も拒否し、治安当局を頼みとした治安重視に再び舵を切った手法は、1946年にフランス勢力が撤退した後に一党独裁体制を数十年に亘って行ってきたバース党政権の権威主義的支配の継続を意味するものである。」と同紙は報じた。
また同紙は、「シリアの主要な地方都市であるダルアーやラタキアで連日前例のない大規模なデモが繰り広げられる中、改革への期待が高まっていた。しかし政権側は明らかにいかなる変化も、とりわけ民主化圧力のもとで改革を強いられることを恐れている。今懸念されることは、多くのコメンテーターが言及している1982年のハマーの虐殺(ムスリム同胞団の鎮圧に政府軍が街を包囲攻撃し数万人の市民が虐殺された事件)のような、政府による抗議勢力に対する大規模な鎮圧作戦が実施され流血の大惨事を招く事態である。政府はそのような事態は事態は避けるべきである。」と報じた。
ガルフニュース紙は、「今後政府による前向きな動きがあるとするならば、治安当局に令状なしの逮捕や尋問を認めてきた非常事態法の解除がその第一歩となるだろう。」と報じた。(原文へ)
翻訳=IPS Japan戸田千鶴
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