【アブダビWAM】
「イラクでは、ほぼ連日のように襲撃事件、爆破テロ、発砲事件が多発しており、この1年で暴力事件が増加した。スンニ派、シーア派間の宗派抗争も激化しており、2月7日には、バグダッド西部のガザリャ地区で、4月に予定されている次期国民議会選挙のシーア派候補者(アルシャムマリ氏)が射殺された。この日だけでもイラク全土で7人が殺害されている。」とアラブ首長国連邦(UAE)の英字日刊紙が報じた。
同日、トゥーズ・フールマート市北部の商業地区では、車載爆弾が爆発し4人が死亡、28人が重軽傷を負った。
6日には、首都バグダッドの商業地区で車載爆弾が相次いで爆発し少なくとも13人が死亡、5日には、首都中心部で爆弾攻撃が相次ぎ34人が死亡した。
国連が発表した統計によると、イラクにおける昨年の死者数は、宗派対立による犠牲者数が史上最悪の事態から改善を見せ始めた2007年以来、最も多い数(8868人、うち民間人が7818人)を記録した。なお、昨年の負傷者数は、1万7981人であった。
「しかし地域の緊張を高めているのはスンニ派-シーア派間の暴力だけではない。イラク治安当局により収監されている数千人に及ぶ女性に対する暴力と虐待の実態も、主要な不安定要素となっている。」と「ガルフ・トゥデイ」紙は2月8日付の論説の中で報じた。
国際人権擁護団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」が6日に発表したところによると、イラク当局は数千人の女性を不法に収監しており、その多くが拷問されたり、性的なものを含む様々な虐待の脅しを受けている、という。
シーア派主導のヌーリ・マリキ政権は、悪化し続ける暴力事件への対策として過激派を標的にした大規模な検挙を行った。しかし、「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」が発表した報告書は、収監された人々を公正に取り扱うイラク治安当局の能力について新たな懸念を生じさせている。また、腐敗が蔓延し国際基準に達していないと批判されてきたイラクの司法制度についても、その有効性が疑問視されている。
「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」によると、多くの女性が、親族の男性にかけられたテロ容疑の巻き添えとなる形で逮捕されており、罪状もないまま数か月から数年に亘って収監されているものもいるという。この調査団の面接を受けた収監中の女性たちは、治安当局により殴打、強姦、強姦の脅しを受けたと証言している。バグダッドのカズミヤ刑務所の死刑囚用管理棟で面接を受けた松葉杖をついたある女性囚人は、9日間に亘って殴打、電気ショック、逆さ吊り等の拷問に晒された結果、回復不能な障害を受けたと証言した。
この女性は、裁判所が拷問による自白強要があったとした医療報告書の内容を認めて容疑の一部を棄却したにもかかわらず、調査団と面談した7か月後の2013年9月に処刑された。
「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」のある職員は、「報告書が指摘している通り、女性囚人(=多くがスンニ派過激派の容疑をかけられた親族)に対するこのような虐待が続く限り、内戦状態が収束に向かうことはないでしょう。イラク治安当局や官憲の所業は、あたかも女性囚人を残虐に扱うことで国を安全にできると考えているかのようです。」と語った。
「イラクの関係当局は協力し合って収監中の女性容疑者の尊厳を守れる法律を強化し、数千人の死者を出してきた暴力の循環を止めるよう努力すべきだ。」と「ガルフ・トゥデイ」紙は結論付けた。
翻訳=IPS Japan
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