【国連INPS Japan / ATN=アハメド・ファティ】
フランスとサウジアラビアが共同議長を務めた「二国家解決に関する国連ハイレベル会議」は、例によって慎重な期待と決まり文句から始まった。だが閉幕時には、現代の外交において稀に見る明確な姿勢転換が現れた。長年棚上げにされてきたパレスチナ国家の承認をめぐり、世界の潮流が変化したのである。しかも今回の変化を主導したのはグローバル・サウスではなく、G7の一部加盟国だった。
外交のドミノ効果

始まりはフランスだった。エマニュエル・マクロン大統領は7月24日、フランスが9月の第80回国連総会でパレスチナ国家を正式に承認すると発表した。その5日後、英国のデービッド・ラミー外相は、歴史的なバルフォア宣言を引き合いに出し、「イスラエルがガザでの軍事作戦を停止し、真摯な二国家解決の枠組みに復帰しない限り、英国はパレスチナを国家として承認する」と表明した。彼の発言は重く、明快だった。「ベンヤミン・ネタニヤフ政権の二国家解決拒否は、道徳的にも戦略的にも誤りだ。」
さらに7月30日、カナダのマーク・カーニー首相も9月の承認を約束。条件として、パレスチナ自治政府(PA)の内部改革と、ハマスを除外した2026年の選挙計画の提示を求めた。
わずか1週間のうちに、G7諸国のうちフランス、英国、カナダの3カ国が、長年続いた西側諸国の曖昧な外交姿勢を転換した。G7のほぼ半数がパレスチナ国家の承認に踏み切る動きを見せたことになり、ポルトガルも追随の意向を示している。
亀裂の拡大:イスラエルの孤立が進む
注目すべきは、これらの承認がイスラエルの「敵対国」からではなく、長年の「友好国」からなされた点である。そしてその動機は、イスラエル現政権への失望感にある。
特に欧州でその傾向は顕著だ。イスラエルの強固な支援国だったオランダは、初めてイスラエルを「国家安全保障上のリスク」と見なし、ガザでの人道違反や極右政権を理由に、ベングビル国家安全保障相およびスモトリッチ財務相に対する制裁と渡航禁止措置を導入した。欧州連合(EU)全体での追加制裁も議論されている。
これは単なる評判の失墜ではない。EUや北大西洋条約機構(NATO)といった多国間機構において、制度的な孤立が進んでいるのである。フランス、アイルランド、スペイン、ノルウェー、ポルトガルが主導する「承認の連鎖」に加え、ドイツやベルギーも国民からの圧力を受けている。イスラエルはこれまでにないレベルで西側の支持を失いつつある。
予想外の成果を上げた国際会議
国連総会決議79/81に基づき開催された本会議は、形式的には典型的な国連会議(本会議、情熱的な演説、記念写真)だったが、次のような三つの決定的な成果を生んだ。
1. 西側主要国間の政策整合
象徴的な外交儀礼に見えたものが、フランス、英国、カナダによる具体的な政策表明へと変化した。彼らの発表は単なる理念の表明にとどまらず、期限を定めた政治的約束だった。
2. 「エルダーズ」による道徳的訴え
国連報道協会(UNCA)主催の記者会見では、メアリー・ロビンソン元アイルランド大統領、フアン・マヌエル・サントス前コロンビア大統領、ゼイド・ラアド・フセイン元国連人権高等弁務官がガザ危機について直接言及。ロビンソン氏は、イスラエル政府が「ジェノサイドを行っている」と糾弾し、B’Tselemとイスラエル人権団体Physicians for Human Rights–Israelの報告を引用。サントス氏は「ハマスという概念の消滅を目指すのは戦略的幻想」と述べ、ゼイド氏は「二国家解決はもはや理論ではなく、正義と人道の表現だ」と訴えた。
3. ハマスの武装解除に関するアラブ諸国の合意
サウジアラビア、カタール、エジプトが初めて共同で「ハマスの武装解除と統治からの退場」を求める声明を発表。従来、地域内の分裂により統一見解が出なかったが、今回は異例の一致を見た。これは、パレスチナ承認には「反占領」だけでなく、統治の改革も必要であるという議論に正当性を加える。
G7が持つ力と限界
G7諸国による今回の動きは、次のような潜在力を秘めている:
- 外交的影響力: 承認は交渉の構図を変える。パレスチナの国際的地位が向上し、イスラエルには交渉再開の圧力がかかる。
- 国連での票の力学: G7の票が加われば、国連安全保障理事会での議論に影響を与え、米国の拒否権行使にも圧力をかける。
- 国際法上の立場: パレスチナは国際刑事裁判所(ICC)や国際司法裁判所(ICJ)での法的根拠を強化し、占領・戦争犯罪・アパルトヘイトに関する訴追が現実味を帯びる。
- 経済的影響: EU制裁、貿易凍結、イスラエル国債の格下げなどが現実味を帯びる。
しかし、承認だけですべてが解決するわけではない。占領が終わるわけでもなければ、ガザの再建やパレスチナ政治の統一が自動的に進むわけでもない。ただし、外交的合意の地平を変える力はある。そして、国際社会において「合意」は力なのである。
米国、トランプ、そして孤立した姿勢
ドナルド・J・トランプ氏が第47代米国大統領として復帰したことで、米国はG7の中で唯一、パレスチナ承認に明確に反対する立場をとっている。トランプ大統領はイスラエルを全面的に擁護し、ICCの調査に反対し、本会議を「テロリストを称え、同盟国を罰する国連の茶番」と切り捨てた。
トランプ政権はUNRWAなど国連機関への資金提供を打ち切り、安全保障理事会での合意を妨害し、ネタニヤフ政権への無条件支援を継続している。
だが、この姿勢は西側諸国の中でますます孤立しつつある。かつて「団結した西側」を主導していたワシントンの立場は、今や分裂し、「責任と国家承認を追求する路線」と「免責と膠着を選ぶ路線」に分かれつつある。
信頼には期限がある
この一週間が突きつけたメッセージは明確だ。イスラエルは西側民主主義諸国の間で信頼を急速に失っている。それは「反イスラエル感情」によるものではなく、現政権の政策によるものだ。
米国が国連でイスラエルを庇護し続けている一方で、道徳的合意は変わりつつある。二国家解決はもはや「口先だけの原則」ではない。それは国際社会の「誠実さの試金石」となっている。
G7によるパレスチナ承認は紛争を終わらせるものではない。だが、「無限に続く占領と、それを容認するレトリック」の時代に終止符を打つ兆しである。
そして今回、正義を訴えているのは、グローバル・サウスだけではない。
英国、フランス、カナダが声を上げた。
米国は抵抗を続けるかもしれない——
だが、歴史はどうやら、その背を向けて動き始めている。(原文へ)
Original URL: https://www.amerinews.tv/posts/analysis-g7-revolts-west-turns-on-israel-over-palestine
INPS Japan
関連記事: