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地域アジア・太平洋AUKUSの原子力潜水艦協定 ―― 核不拡散の観点から

AUKUSの原子力潜水艦協定 ―― 核不拡散の観点から

この記事は、戸田記念国際平和研究所が配信したもので、同研究所の許可を得て転載しています。

(この記事は、アジア太平洋核不拡散・軍縮リーダーシップネットワーク(APLN)の専門家や参加者が豪英米(AUKUS)協定の影響を評価するために行った分析シリーズの一環として、2021年9月17日にAPLNにより最初に発表されたものです。)

【Global Outlook=ジョン・カールソン】

以下は、オーストラリアのために原子力潜水艦を建造・運用する提案について、核不拡散および安全保障措置の観点から概要をまとめたものである。

この提案は原子力推進のみに関係しており、いかなる場合もオーストラリアは核兵器を追求することはない。それは、核不拡散条約(NPT)に基づくオーストラリアの義務に対する違反となる。NPTは、非核兵器国が核兵器を取得すること、核兵器国がそのような取得を支援することを禁じている。NPTのもとで非核兵器国は、自国の領土内または管理下にあるすべての核物質について、それが核兵器に転用されていないことを検認するため、国際原子力機関(IAEA)の保障措置を受け入れなければならない。(原文へ 

NPTは、非核兵器国が核物質を非爆発的軍事用途に利用することを禁じていない。その主な例が、海軍推進力用原子炉の運用である。核物質をそのような非違法軍事用途に利用する計画がある場合、標準的なNPT保障措置協定では、当該物質が軍事利用されている期間は保障措置を一時停止することが定められている。しかし、非爆発的利用の義務は引き続き適用され、当該軍事利用が終了するとただちに保障措置の適用が再開する。当該国は、当該物質に関する最新情報をIAEAに報告し、最終的な保障措置再開を保証する協定をIAEAと結ぶことが求められる。

この一時停止規定が保障措置を回避し、核物質を核兵器に転用するための抜け穴として利用されないようにすることについては、明らかな懸念がある。IAEAはどのような取り決めを要求するべきか、多くの議論がなされているが、これまでのところ実例はない。今のところ、原子力海軍艦艇を取得した非核兵器国はない。カナダは1980年代に原子力潜水艦を検討したが、それ以上進まなかった。現在ブラジルが海軍用原子炉を計画しているが、まだ研究開発段階である。韓国は原子力潜水艦への関心を示しているが、具体的な行動はまだ起こしていない。オーストラリアが、核物質を使用した海軍の推進システムについてIAEAとの協定を策定する最初の実例となる可能性があるが、実現にかかる時間が長期にわたり、最初の潜水艦が運用開始するのは早くても2040年と予想されるため、確実とはいえない。

海軍推進システムの計画から核物質が転用される可能性は、その計画に関連する核活動の範囲による。ブラジルのように、国が原子炉燃料を濃縮・製造することを目的としている場合、その工程中の転用を防止することが関心事となる。IAEAは、保障措置が一時停止されるのは実際に軍事利用されている物質についてのみで、濃縮工程などの核工程には通常の保障措置が適用される、と示している。燃料設計は秘密である場合があるため、燃料製造については特別な取り決めが必要になる。しかし、機密情報を開示することなく、当該核物質に関する継続的知見を得られるようにする保障措置の方法がある。燃料の装荷と取り出しが監視され、潜水艦が運用可能状態であることが判明している場合は、燃料が転用されていないという十分な保証が確立され得る。

オーストラリアの場合、寿命が原子炉と同等以上の炉心を使用することが想定されている。つまり、オーストラリアは燃料の製造を行わず、原子炉への燃料補給も行わないということである。提供される原子炉にはすでに燃料が装荷されており、30年程度と予想される潜水艦の運用寿命が尽きたときには、潜水艦は原子炉とともに、サプライヤー(今回の場合は米国、あるいは英国かもしれない)に返却されることになる。

この方法を用いれば、海軍燃料の供給の安全保障を確保するために濃縮プラントを運用する必要があると主張する国々について、拡散の懸念を回避することができる。オーストラリアのプロジェクトについては、オーストラリアが燃料の取り出しや転用を行わないことをIAEAに立証することは簡単である。

完璧を期すために、南太平洋非核地帯条約(ラロトンガ条約)について言及がなされるべきである。この条約は、条約地帯内での核兵器の取得、保有、配備、実験を禁止しているが、原子力船は禁止していない。

AUKUS加盟国は、NPTに基づく各国の義務を全面的に遵守するとともに、「……グローバルな不拡散と厳格な検証基準における長年のリーダーシップを反映する形で、国際原子力機関と協力し協議しつつ、この努力を行うこと」を誓約している。

ジョン・カールソンは、ウィーン軍縮不拡散センター(VCDNP)の非滞在型シニアフェローである。

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