【ブリスベンIPS=カリンガ・セレヴィラトネ】
オーストラリアの大都市でアボリジニの運営による初のコミュニティラジオ放送局「ブリスベン先住民メディア協会」(Brisbane Indigenous Media Association: BIMA)がこの4月5日で開局15周年を迎えた。
通称「98.9FM」がライセンスを取得し、開局にこぎ着けた1993年当時は、ブリスベンにはアボリジニよりもキリスト教徒の人口が多いとして放送ライセンスの優先権を主張するキリスト教団体に対し、主要メディアを通じて発言権が確保されている彼らよりも、アボリジニこそ発言の場を得る権利があると放送当局を説得しなければならなかった。
今や98.9FMは、非主流のコミュニティ放送というよりは主流ラジオにとなった。
このラジオ放送局の創設者でゼネラルマネジャーのTiga Bayles氏は、IPSの取材に応えて「私たちはたまたま黒人で、たまたまコミュニティラジオであるが、ブリスベンの主流ラジオ業界のステークホルダーだと自認している。週当たりの白人のリスナーも12万人にのぼる」と述べた。
白人にもアボリジニにも人気のあるカントリーミュージックが、この24時間放送のラジオ局の売り物である。ブリスベンのグリフィス大学のマイケル・メドーズ教授も「カントリーミュージックが先住民族と非先住民族の2つのコミュニティの架橋となっている」とし、このラジオ局の成功要因に挙げている。
98.9FMではこの他、午前6時から午後8時まで毎時間5分間のアボリジニ・コミュニティに関連するニュースを放送している。Bayles氏が会長を務める全国先住民族ニュースサービス(National Indigenous News Service?NINS)が制作するニュースは、先住民族の視点からニュースを伝えるもので、オーストラリア全国およそ150のコミュニティラジオ放送局にも衛星で配信されている。
Bayles氏はまた、週5日1時間のトーク番組を生放送し、これもNINSを通じて全国に配信。「白人リスナーに黒人の体験を伝えている」と述べている。
メドーズ教授がラジオを中心にクイーンズランド州のアボリジニ・メディアの視聴者調査を行ったところ、このトーク番組は医療従事者や公務員の白人専門職のリスナーも多く、先住民族の考え方を知ることのできる貴重な機会と評価が高かった。
「人民の声」として先住民族社会と外部社会を結ぶ重要な役割を果たすコミュニティラジオについて報告する。(原文へ)
翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩