【ベオグラードIPS=ヴェスナ・ベリッチ・ジモニッチ】
旧ユーゴスラビアのボスニア・ヘルツェゴビナ、クロアチア、セルビアでは、宗教教育がカリキュラムに組み込まれている。
一般には選択科目だが、子どもたちは小学校(一部は幼稚園)入学と同時に宗教教育を受けることになる。
3国の教育省は宗教教育を受けている子どもの実際の人数を発表はしていないが、その数は多いと明らかにしている。
ただ、紛争後のボスニアとクロアチアでは宗教教育の導入は円滑に行ったが、セルビアではLjiljana Covic教育相がダーウィンの進化論を教えることを差し止めようとしたことがきっかけで関心が大幅に後退、現在は宗教教育の受講率は35%にとどまっているという。教育相は辞任に追い込まれた。
また、専門家の間からは宗教教育の動向の他の側面について指摘がなされている。
ボスニアでは紛争終結後宗教教育が導入され、2004年には法制化された。子どもたちは民族ごとの宗教教育、すなわち、イスラム教、カトリック教、セルビア正教のクラスに出席する。しかし、これら3つの宗教を含め他の主要な宗教の信条や無心論者の立場についてなど「宗教についての授業」を行なっているものは少ない。
ボスニア、クロアチア、セルビアおよびノルウェーの執筆者グループが発表した西バルカン諸国の宗教と学校に関する2005年の調査報告書「Religion and Pluralism in Education」も、3宗教とも自身の説教に重点を置くばかりで、他の信仰に注意を払うことはほとんどないと指摘している。
報告書は「イスラム教とセルビア正教では務めと服従を重視し、貧困、消費者主義、自由など現代社会やその問題を取り上げているのはカトリックのカリキュラムだけである」と述べている。
セルビアの南部の町Vlasotinceで数学を教えるMiroslav Mladenovic氏は有力紙『Politika』に「教会は従順な信者を望んでいるだけ。たとえばセルビア人、クロアチア人、ハンガリー人、スロバキア人が暮らす北部ボイボディナ自治州など多民族環境における寛容の問題については何もしてない。民主社会の発展の必須条件が整っていない」として、学校での宗教排除を当局に訴えている。
西バルカン3国における宗教教育について報告する。(原文へ)
翻訳/サマリー= IPS Japan 浅霧勝浩