【ブリュッセルIDN=ラメシュ・ジャウラ】
政府や市民社会、民間部門に、グローバル開発パートナーの代表らが、統合された地域開発を視野に入れて、雇用と起業を通じて女性と若者をエンパワーする新たな南南協力及び三角協力を構築していくことを目指している。
南南協力は、途上国間あるいは途上国内部で行われるものだが、三角協力とは、経済協力開発機構(OECD)開発援助委員会に属する旧来からのドナーと、「南(=途上国)」における新興ドナー、「南」の受益国の三者から成り立っているものである。
新たなパートナーシップに関するこの決定は、2月11日から12日にブリュッセルで開かれたシンポジウムでなされた。主催したのは、アフリカ・カリブ海地域・太平洋(ACP)諸国グループ(79か国)、国連食糧農業機関(FAO)、国際フランス語圏機構(OIF)、コモンウェルス事務局、ポルトガル語諸国共同体(CPLP)である。
シンポジウムでは、国連が2030年の達成を目指し、ジェンダー平等の達成と女性・女児のエンパワメント、人間らしい仕事(=まともな労働)と経済成長の追及という2つの主要な目標を含んだ「持続可能な開発目標」(SDGs)の線に沿って目標を達成すべく、共有された経験と実践例から利益を得られるようにするための行動計画に合意がなされた。
この公約と行動計画の重要性は、農業が世界で最大の雇用を生む部門であり、世界の人口の4割の生活を支えているという事実からも見て取れる。農業は、農村の貧しい世帯にとっての主要な収入源であると当時に雇用の提供元となっている。
さらに国連によると、世界の5億人の小農が、途上国世界の大部分で消費される8割の食料を供給しているという。そして、もし女性農民が男性と同じような資源を手に入れることができるなら、飢餓に悩む世界の人口は1.5億人減少するだろうと国連ではみている。
シンポジウムの3日前、国連の潘基文事務総長は、国連経済社会理事会の機能委員会のなかで今年最も早く会合を持った「社会開発委員会」に対して、世界中の31億人が貧困撲滅のレースにおいて置き去りにされることがないよう、2016年を「グローバルな牽引」(global traction)の年にしなくてはならない、と述べた。2015年は、9月に国際社会がSDGsに合意した「グローバルな行動」(global action)の年であった。
SDGsは、貧困撲滅や飢餓撲滅、健康と福祉、良質の教育、ジェンダー平等、清潔な水と衛生、誰もが使えるクリーンエネルギー、人間らしい仕事と経済成長、産業・技術革新・社会基盤、格差の縮小、持続可能な都市、責任ある生産と消費、気候変動への緊急対応、汚染されない海洋と陸地、これらの目標を達成するためのパートナーシップと、幅広い内容を持つ。
潘事務総長は、「私達は物事を動かし続け、牽引し続けなければなりません。」「社会開発委員会の任務は、とりわけ、世界中の12億人の若者、9億人以上の高齢者、そして10億人の障害者に対して影響を及ぼします。皆さんの仕事は、2030アジェンダとSDGsによって誰も置き去りにされないようにするために、きわめて重要な意味を持っているのです。」と経済社会理事会に対して述べた。
とりわけ、「すべての人にとっての持続的で、包摂的で、持続可能な経済成長と、完全かつ生産的な雇用、人間らしい仕事」をめざした2030アジェンダの第8目標は、達成すべき重要な目標を設定したものだと、シンポジウムの主催者は参加者へのメッセージで述べた。
ブリュッセルのシンポジウムは、スキルの開発、組織能力の強化、そして、技術、土地、効率的なビジネスサービスへのアクセスの改善などの主要な領域について検討を加えた。
「アフリカ・カリブ海地域・太平洋諸国は、ACP-EUパートナーシップの枠組みなど、様々な領域で、長い協力の歴史があります。包摂性や多様性、革新、真のパートナーシップを高める上で、こうした経験を共有し、南南協力や三角協力の付加価値に焦点を当てることができるのは喜ばしいと考えています。」とACPグループ事務局長のパトリック・ゴメス博士は語った。
「この種のイベントが、とりわけ『南(=途上国)』の若者や女性に効果的に作用する『南(=途上国)』主導による開発上の解決策を紹介し促進する機会となっていることは、強調してもしすぎることはありません。今日のシンポジウムに集まっている個人や団体の皆さんに拍手を送りたい。」と述べたのは、国連南南協力室(UNOSSC)の国連機関間コーディネーターのロジェル・ヌギド氏である。
UNOSSCのジョルジェ・チェディーク代表に代わって発言したヌギド氏は「『南(=途上国)』のために『南(=途上国)』の人びとや組織の強みに体系的かつ戦略的に注目していく基盤を提供したいと考えています。」と語った。
FAO技術協力・プログラムマネジメントの副責任者であるローレン・トーマス氏は、「FAOはACPとのパートナーシップを歓迎し、2030アジェンダの下で成果を上げるために喜んで協力したい。」と語った。
「パートナーシップなくしては、誰も成功しえません。私達が必要なのは、しばしば置き去りにされている女性や若者を支援する具体的なアクションです。私達は、南南協力を通じて、ACP各国が提示し共有することで、女性と若者にとって真の変化を加速させるプロジェクトを実施していけると考えています。」
「若者の85%以上は途上国に住んでおり、各国および地域規模の政策を拡大し、若者層の雇用に介入することが不可欠だと考えられています。」とトーマス氏は言う。
OIFのミシェル・ジャン事務局長は女性をエンパワーする必要性を強調した。「女性をエンパワーすれば、地域や国家、人類をエンパワーすることになります。もし貧困と闘おうとするならば、女性が土地への権利を持ち、技術とスキルを手に入れられるようにしなければなりません。女性は政策決定過程の一部でなければならないのです。」若者は、開発における重要なアクターであり、会議に参加している各機関に対して協調した行動を呼びかけた。
コモンウェルス事務局のキャサリン・エリス青年問題局長は「若者を育成するセクターは、南南協力の重要分野となっています。若者たちは、以前よりもダイナミックで、協力的で、よりグローバル化しています。私達は、彼らを単なる受益者というだけではなく、開発の重要な促進者かつ変化のエージェントととらえねばならなりません。」と語った。
CPLP協力局のマニュエル・クラロテ・ラパオ局長は、「南南協力や三角協力は、食料安全保障や栄養向上、保健、児童労働対策などの分野においてその重要性を発揮してきました。」と参加者に語った。
シンポジウムはまた、開発関係機関や、ベニン・マリ・モザンビーク・ウガンダなどの国々が、それぞれの取組みやプロジェクトを紹介する機会も提供した。飢餓と闘い、農村地帯の生活を向上させるために世界のどこでも同じような技術をいかにして導入するかについて、議論のきっかけを提供した。
そうした取り組みの一つが、アフリカ、カリブ海地域、欧州、太平洋地域の小農を支援する貿易を下支えするACPの「COLEACPプログラム」である。これは、これらの地域の園芸業を支援して、持続可能な貿易と貧困緩和を積極的に促進しようというものである。
4つの国連機関と各国のパートナーが、太陽光を使ったラジオで地域をつなぐなどの簡単な方法で知識やスキルを手に入れることを通じて、農村地帯の女性の経済的エンパワメントを促進するために実行されている共同の取り組みについて発表した。このプログラムは7か国に広がり、7万5000人の農村の女性を支援している。
FAOは「青少年農業フィールド生活学校(JFFLS)」の取組みを紹介した。2003年に始まったこのプロジェクトは、アフリカ・アジア・中東の20か国以上に広がり、2万5000人以上の若者を支援している。以来これらの国々では、食料安全保障は向上し、農村の貧困率は下がっている。(原文へ)
翻訳=IPS Japan
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