SDGsGoal10(人や国の不平等をなくそう)ブロンクス動物園がかつてアフリカ人青年を檻に入れて見世物にしたことを謝罪

ブロンクス動物園がかつてアフリカ人青年を檻に入れて見世物にしたことを謝罪

【ニューヨークIDN=リサ・ヴィヴェス】

ブラックライヴズ・マタ―(Black Lives Matter 通称:BLM)は、これまでにも世界各地で人種差別主義者の銅像や差別的な企業方針等について、数々の謝罪を引き出してきたが、今回、ニューヨークのブロンクス動物園が、1906年にアフリカ出身の男性を檻に閉じ込めて見世物にしたことを公式に謝罪した。

同動物園の運営団体「野生生物保護協会(WCS)」は7月29日に発表した声明のなかで、「平等・透明性・説明責任の名において、私たちは野生生物と自然環境を保護するという動物園の使命を全うしていくためにも、この動物園が過去の歴史において人種差別を助長する役割を果たした事実に向き合わねばなりません。」と述べた。

WCSは、「良識に欠けた人種的不寛容」に該当するとして2つの例を挙げた。一つはムブティ族(現在のコンゴ民主共和国の先住民)出身の青年オタ・ベンガさん(当時23歳)に対する取り扱いである。ベンガさんは、1906年、ブロンクス動物園で1匹のオランウータンとともにサル用の鉄製の檻に閉じ込められ、一週間にわたって見物客の目にさらされた。WCSは、黒人聖職者からの抗議を受けて「この恥ずべき出来事に終止符が打たれた」と指摘した。

記録によると、ブロンクス動物園から解放されたベンガさんは、ニューヨーク市のブルックリンで牧師が運営する施設に引き取られ、後にバージニア州リンチバーグ市にあるタバコ工場で働いた。WCSは、「人間としての尊厳を奪われ、故郷に帰ることもかなわず、オタ・ベンガさんは、10年後に自殺した。」と説明した。

WCSはまた、同団体の創業者2人(マディソン・クラントとヘンリー・フェアフィールド・オズボーン)についても、「優生思想に基づく疑似科学的な人種差別」を説いたとして非難した。

優生思想とは、能力が劣っていると見なされる者の遺伝子を排除して、優秀な人類を後世に遺そうという思想で、20世紀初頭には多くの支持者がいた。またこの思想はのちのナチス・ドイツの政策形成に大きな影響を及ぼした。「マディソン・グラントの著書『偉大な人種の消滅 “The Passing of the Great Race”』からの抜粋は、ニュルンベルク国際軍事裁判でナチス戦犯を擁護する証拠資料に含まれていました。」と、WCSは指摘した。

「私たちは、動物園によるこうした所業や創業者らの過ちを私たちが非難してこなかったことで、何世代にもわたって多くの人々が傷ついてきたことについて、深く謝罪します。」とWCSは声明のなかで述べた。

ブロンクス動物園は今年が創立125周年にあたり、歴史を振り返る作業を始めていた。そこに警官によるジョージ・フロイド氏の殺害に端を発した人種差別を巡る議論が全米を席巻する事態が加わり、今回の公式謝罪へとつながった。

同動物園では、過去の過ちを認識する作業として、オタ・ベンガさんに関する全ての記録をまとめてオンラインで公開する予定だ。

WCSは、「私たちは、動物園の歴史について、とりわけ外部の作家や研究者がアクセスできる透明性を確保した環境を構築するために新たなプロジェクトを実施してまいります。」と述べている。(原文へ

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