【バンコクIPS=マルワーン・マカン・マルカール】
1月半ばにビルマ(ミャンマー)のイスラム系少数民族ロヒンギャの難民1,000人あまりがタイ当
局によって洋上に連れ戻されて行方不明になっていると国際メディアに報じられて以来、ロヒンギャ族の窮状が注目されている。
バングラデシュと国境を接するビルマ西部アラカン州を故郷とするロヒンギャ族がビルマ軍事政権の迫害から逃れて国外に脱出するようになったのは、今に始まったことではない。
2006年10月から2008年3月の間に裕福なマレーシアやタイでの生活を求めてバングラデシュから船で脱出したロヒンギャは8,000人以上を数える。さらに遡って1991年から92年には25万人の大量脱出があった他、軍による民族浄化作戦が行われた1978年には20万人がバングラデシュに逃れた。
それ以前にもビルマを逃れたロヒンギャの人々は多く、今ではサウジアラビア、パキスタン、インド、マレーシア、バングラデシュと国外に離散した人は150万人を超え、ビルマに留まるおよそ75万人をはるかに上回るまでになっている。
タイに亡命したひとりキャウ・ティンさんが「迫害はますますひどくなっている」と言うように、強制労働が科せられ、当局の許可なく隣村にすら移動が許されていない。また、バンコクに本拠を置く人権団体「ザ・アラカン・プロジェクト」の2008年10月の調査報告書が明らかにしているように、当局の許可なくして結婚も許されない。
ロヒンギャの人々は、食糧の配給も農業や教育の機会も剥奪され、貧困と食糧不足で、5歳未満の子どもの60%は慢性栄養失調の状態にある。非識字率は80%に上る。
ロヒンギャの政治運動を統轄する「アラカン・ロヒンギャ全国組織(ARNO)」のヌルル・イスラム会長は「ロヒンギャを先祖からの故郷アラカンから一掃するのが軍事政権の狙い。ロヒンギャは日々、強制立ち退き、土地の没収、恣意的逮捕、拷問、裁判なしの殺害、強奪などの犠牲となっている」と亡命先のロンドンから取材に応えて訴えた。
市民権の否定をはじめ、制度化された人権侵害と人道犯罪の犠牲となっているビルマのロヒンギャ族について報告する。
翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩
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