【バンコクIPS=マルワン・マカン・マルカール】
7月20日、クメール・ルージュの「屠殺人」と呼ばれたタ・モク(80)が、多機能不全で死亡した。
クメール・ルージュ崩壊から27年。国連の支援を得て、カンボジア裁判所内に、国際法学者13人、カンボジア裁判官17人で構成されるExtraordinary Chambers in the Courts of Cambodiaが7月3日に開設され、7月10日から立証調査が開始されたばかりであった。タ・モクは、裁判に引き出される最初の司令官と見られていた。
クメール・ルージュの残虐行為を綴った本「裁かれるべき7人」(Seven Candidates for Prosecution)は、クメール・ルージュ政策に直接係った人物としてヌオン・チー、イエン・サリ等7人の名を上げている。タ・モクの死亡により、国民の関心はこれら高齢の旧政権要人に向けられている。
プノンペンにある独立機関「カンボジア資料センター」は、収集していた資料を裁判所に提出。資料の中には、約2万ヶ所の合同埋葬所、189の刑務所、犠牲者3万人の証言等が含まれるという(クメール・ルージュは1975-1979年の5年間で、当時の人口の1/4に当る約170万人を殺害したとされている)。
注目されるのは、同裁判が、米国、中国、タイといった外国政府のカンボジアに対する関与まで踏み込んだ審議ができるかどうかである。1960年代後半のベトナム戦争では、米国はカンボジアへの秘密爆撃を行っており、ポル・ポト失権後のベトナム軍カンボジア侵攻に当たっては、米国、中国、タイはクメール・ルージュ残党の支援を行っていた。
カンボジア人権開発協会のサライ会長は、「モクの死で、重要な証人かつ大罪人を失った。この様なことが起こらないよう、迅速な裁判が必要」と語っている。カンボジアで開始されたクメール・ルージュ裁判について報告する。
翻訳/サマリー=IPS Japan: