SDGsGoal14(海の豊かさを守ろう)|カンボジア|食糧安全保障を脅かす魚種資源の減少

|カンボジア|食糧安全保障を脅かす魚種資源の減少

【カンダル州キエン・スヴェイIPS=アンドリュー・ネット】

「10年間もメコン河で漁をしてきたけれど、この数年明らかに魚が減っている。前は漁獲高も随分あったが、今では1日3kgあればましな方だ。今朝はまったくだめだった」カンダル州の漁師Im Vandangさんのこうした不安は、カンボジアの漁業の現状に関する大きな論議の一部である。 

カンボジアの人々のタンパク源は75%が魚であり、また100万人以上が漁業で生計を立てていることを考えると、これは極めて重大な食糧安全保障上の問題である。

 この深刻な状況を懸念したカンボジア政府は、厳しい漁業規制の導入を検討している。だがこれは、貧困者をさらに不利な立場に追いやる動向と見る者もいる。 

プノンペンの世界魚類センターの科学研究員Eric Baranさんは「総漁獲高の減少を厳密に実証するのは難しい。個々の漁師の漁獲高が減っていることは確かだが、漁師の数が増えている現状も併せて考えなければならない」と述べている。 

専門家の意見が一致している点は、メコン河の漁獲の種類が変わってきたことだ。 

Baranさんは「重要なことには、寿命の長い大型の魚種に代わって、環境の変化を受けやすい寿命の短い小型の魚種が増えていること」と述べている。 

農林水産省のNao Thuok漁業局長は「漁師があまりにも増えたため、魚は翌年の産卵のために上流に遡上することもできない。漁業規制を省内で議論し、首相の承認を求めるつもりだ。実施は難しいが、漁業を持続可能なものとし、大型の魚が戻ってくるようにするには必要なことだ」と主張している。 

これに対し、トンレサップ湖のコミュニティと協力している団体Fisheries Action Coalition TeamのMak Sithrith事務局長は「乱獲を防ぐには、コミュニティによる管理が一番」と述べ、「漁業規制が行われると、規制を逃れるため賄賂を使う漁師も出てきて、金持ちだけが利益を得る」と非難している。 

専門家らはまた、乱獲に加えて、汚染の悪化と浸水した森林の伐採が進んでいることも漁業に悪影響を及ぼしている他、メコン河支流での水力発電用ダムの建設も大きな問題となっていると指摘している。 

メコン河流域のカンボジアの漁業問題について諸議論を報告する。(原文へ) 

INPS Japan 浅霧勝浩 

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