【プノンペンIPS=アンドリュー・ネット】
2009年初めまで初公判が延期されているクメール・ルージュ裁判に、新たな問題が起きている。裁判の独立性を示すために逮捕者の追加を求める圧力にどう対処するか、である。戦犯法廷で誰を起訴するかは複雑な問題で、特にカンボジアでは歴史的な事情と国内外の司法官からなる法廷システムの構造によりさらに込み入っており、合意を得るのが困難な状況だ。
現在拘束されているクメール・ルージュ幹部は5人で、トゥール・スレン虐殺の首謀者、カン・ケック・イウ別名ドゥック、クメール・ルージュNo2のヌオン・チャ、元民主カンプチア国家主席キュー・サムファン、元外相イエン・サリとその妻イエン・シリト。
逮捕者追加の憶測が強まったのは、6月半ばに外国人のR.プチ司法官が他のクメール・ルージュ幹部の
捜査を明らかにしたときだった。国連で裁判の予算を話し合う会議の直前のことだった。それ以来、この追加問題についてカンボジア人と外国人の司法官の間で話し合いが続いている。公式情報ではないが、2~6人の名前が挙がっていると言われている。
10月の裁判公報では、問題については検討中とされ、その後の報告はない。個々の司法官はコメントを拒否している。追加決定に関しては法廷の規則により外国人司法官の方が優位な立場にある。起訴の基準は、1975年4月17日~79年1月6日のクメール・ルージュ支配下で起きた犯罪の「幹部」であり「重大な責任がある」というものだ。
裁判はカンボジアで行われ、政府の要職にある旧クメール・ルージュのメンバーも多数いることから、ほとんどの観測筋が追加はないとみている。一方で、正義と平和を原則として、追加を求める市民の声もある。カンボジア政府は、政府での要職を交換条件にクメール・ルージュからの離脱を進めた経緯もあり、追加逮捕は回避したいし、資金の問題もある。
誰を追加逮捕するかも明確ではない。すでに死亡している幹部も多い。ジャーナリストや学者がクメール・ルージュの戦犯について資料を提供し、特に2人の名が戦犯として挙がっているが、この2人を含めるとさらに範囲は拡大していく。クメール・ルージュの旧施設から収集される資料は各地に散らばっている。だがこうした施設の犠牲者を援助しているNGOは、証言や証拠を多数収集していると主張している。
逮捕者の追加が憶測されているクメール・ルージュ裁判について報告する。(原文へ)
翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩
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