【バンコクIPS=マルワーン・マカン・マルカール】
望ましい統治を唱える世界銀行だが、深いかかわりを持つ問題国を非難する際には、慎重に言葉を選ぶ。現在のカンボジアはその典型である。総裁就任後初の途上国訪問でカンボジアを訪れた世銀のゼーリック新総裁は、前任者同様、カンボジアへの潤沢な助成金の利用についてお決まりの苦言を呈しただけだった。
世銀の公式プレス声明も、主にマイクロファイナンス計画、土地所有権の発行、支援の調整、開発課題における世銀の役割を取り上げ、腐敗防止についてはわずかに触れるだけにとどめた。「世銀はカンボジア政府が貧困削減のため改革を実行し、産業及び投資環境を整え、法の支配を強化することを支援する」とゼーリック総裁は述べた。
こうした言葉は汚職に手を染める政府高官の不安を覆い隠すが、7月初めに米上院は違法伐採に関与しているとされたカンボジアの高官の渡航禁止を求める法案を提出している。これは、腐敗した高官の世界経済システムからの排除を目的とした、2006年のクレプトクラシー(泥棒国家)・イニシアティブに基づいたものである。
政府高官の腐敗と縁故主義が違法伐採を容易にし、法の支配、民主主義、持続可能な開発に悪影響を及ぼしている。グローバル・ウィットネスは、支援国の無為が望ましい統治を実現させないとして、世銀総裁に泥棒国家の政府に対して厳しい態度で臨むよう求めた。トランスペアレンシー・インターナショナルの2006年の腐敗調査では、カンボジアは非常に腐敗した国とされ、腐敗度の低い国のランク順で163国中151位だった。
グローバル・ウィットネスの報告書によると、違法伐採のシンジケートは首相、農林水産相、森林局長につながる人々が関与し、違法伐採による損失は年間1300万ドルに及び、国の森林の30%を喪失させ、首相の私兵の資金になっている。
カンボジアの1330万人の人口の35%以上が貧困にある。カンボジアの内戦終結後一貫して政府を支援してきた世銀は、カンボジアの国家予算の半分近くを占める援助を供与している支援機関のひとつだが、昨年ようやく腐敗を理由に給水衛生計画等への760万ドルの支援を凍結させた。カンボジアの根深い腐敗に対して厳しい姿勢が求められる世銀について報告する。(原文へ)
翻訳/サマリー=IPS Japan
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