【ポート・オブ・スペインIPS=ピーター・リチャーズ】
世界では約5億の小型武器が使用されており、それによって年間約50万人が殺害されている。カリブ諸国では、今年に入り既に100人の犠牲者が出ている。
トリニダードに本部を置くImplementation Agency for Crime and Security(IMPACS:犯罪治安実行機関)のリン・アン・ウィリアムズ事務局長は、ある国で犯罪に使用された武器が別の国で再び使用されることも珍しくないと言う。
ジャマイカ、トリニダード・トバゴ両政府は、拳銃の密貿易と麻薬売買の関係を把握しており、コロンビア、ハイチ、ホンジュラス、ベネズエラといった国々から高性能小型武器が送りこまれているとしている。
トリニダード・トバゴの国家安全保障大臣でカリブ共同体(Caricom)国家安全保障・法施行担当大臣協議会の議長を務めるマーチン・ジョセフ氏は、「これらの武器は、密輸品の保護、ユーザー・競争相手に対する脅迫、縄張り確保、ギャング・メンバーのリクルートなどに使用されている。拳銃関連の暴力は、カリブ諸国にとって保健システムの負担になるだけでなく社会的/経済的問題を生じさせている」と語る。
最近国連が発表した中央アメリカおよびカリブ諸国における小型武器の子ども・青少年に与える影響についての報告書によれば、武器密輸業者は年間数百万ドルの外貨を稼いでいるという。また、ラテンアメリカおよびカリブ諸国の殺人件数は世界全体の42パーセントを占めるという。
ジャマイカ警察の統計では、2005年1月から2008年5月までに5,068人が殺されており、その78パーセントが拳銃による殺人だ。怪我人は2,000人を超える。トリニダードでは、昨年の死亡者は544人。その54.2パーセント、295人はギャング抗争による射殺という。
カリブ諸国政府は3年前にIMPACS設立で合意。現在、メンバー国の小型武器密輸およびこれに関連した犯罪の取り締まりを強化するため、地域統合弾道情報ネットワーク(RIBIN)開発を行っている。ウィリアムズ事務局長は、これにより米国、カナダなどの国々との協力拡大も可能になると語っている。
実際米政府は、既にジャマイカに対して「高い犯罪率はビジネスにも影響し、投資にも悪い影響を与える」と警告している。米国国際開発庁のジャマイカ担当カレン・ヒリアード部長は、「ジャマイカの中小企業は、年間収入の平均17パーセントをセキュリティー・コストに費やしており、イラクにおける23パーセントに匹敵する」と語っている。
ジャマイカおよびトリニダード・トバゴにおける小型武器密輸とそれによる殺人事件の増加について報告する。(原文へ)
翻訳/サマリー=IPSJapan 浅霧勝浩
関連記事: