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カリブ海諸国、核兵器禁止条約の早期発効を誓う

【ジュネーブIDN=ジャヤ・ラマチャンドラン】

核兵器禁止(核禁)条約が122カ国によって採択されてから約2か月半後の2017年9月20日、ニューヨークの国連本部で同条約が署名に開放された。それ以降、70カ国が署名、23カ国が批准している。条約は、50カ国が署名・批准してから90日後に発効することになっている。

核禁条約は、核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)や、世界各地のパートナー組織による10年に及ぶ活動の末に採択された。

このICANの弛みない努力に対して、2017年のノーベル平和賞が授与された。ICANとそのパートナー組織は、条約の早期批准に向けて必ず必要な第一歩として、少なくともさらに28カ国の批准を得るべく、活動を続けている。

ICAN
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プロセスを促進するために、国連核兵器廃絶国際デー(9月26日)の場を利用して、条約へのさらなる署名・批准を求めるハイレベルの式典が執り行われる。さらに今年の場合、7月9日~18日の日程でニューヨークにて開催される「持続可能な開発目標(SDGs)に関する国連ハイレベル政治フォーラム」、とりわけ3日間の閣僚会議も、核禁条約への署名・批准を図るさらなる機会となることだろう。

核禁条約を支持する人々は、条約採択に先立って、核兵器は人間や環境に対して壊滅的かつ広範で永続的な結果をもたらすにも関わらず、包括的な禁止に服していない唯一の大量破壊兵器であると論じた。この新たな条約は、国際法における重大な欠落を埋めるものである。

こうした背景の下、ICANは、核禁条約について議論し、地域的観点から条約を評価し、さらには、核軍縮やグローバル安全保障、人道的な規範の前進に向けた見通しや、条約発効に向けた前進を議論するために、ガイアナ外務省と協力してジョージタウンで「カリブ海地域フォーラム」を開催することになった。

この地域フォーラムには、アンティグア・バーブーダ、ベリーズ、グラナダ、ガイアナ、ハイチ、ジャマイカ、セントルシア、セントクリストファー・ネイビス、セントビンセントおよびグレナディーン諸島、トリニダード・トバゴから成る「カリブ海共同体」加盟国の専門家らが参加した。

「カリブ海地域フォーラム」は、冷戦後最悪とも言われる、核兵器使用の危機が高まる中で開催された。実際、高まる緊張や核兵器の近代化、軍事ドクトリンや安全保障概念における核兵器への継続的依存、高度警戒態勢の維持に加え、核兵器使用の威嚇が、核兵器の意図的あるいは偶発的な使用のリスクを高めている、と6月20日に発表された「ジョージタウン声明」は述べている。

他方、核兵器なき世界に向けた歩みが遅々として進展せず、核軍縮義務、とりわけ核不拡散条約第6条や核軍縮に関するその他の合意された措置や行動義務が引き続き履行されていない現状が、カリブ海地域や国際社会にとって依然として懸念材料となっている、と声明は警告している。

「カリブ海共同体」の加盟国は、つねに多国間主義と核軍縮・不拡散の漸進的なアプローチを強力に支持してきており、平和と安全保障問題に対する全体的なアプローチを主唱し、平和と安全保障、そして開発の間には本来的なつながりがあることを認識してきた。

CARICOM Map/ CARICOM Energy
CARICOM Map/ CARICOM Energy

ジョージタウン声明」は、平和なしに発展はないと同時に、平和は発展の前提条件であることをあらためて強調した。カリブ海共同体は、この原則的な立場を基盤として、「核兵器に関する人道イニシアチブ」に活発に加わり、核兵器が人間にもたらす帰結の問題を核兵器禁止(核禁)条約の必要性と結び付けた初めての地域となった。

カリブ海諸国は、核禁条約の採択につながった交渉プロセスを主導する勢力であり続けた。

「核禁条約は、カリブ海地域諸国も貢献した歴史的偉業だと見なされていた」と声明は指摘する。「カリブ海共同体」の加盟国は、条約にもっとも早く署名・批准した国々である。現在のところ、ガイアナとセントルシアの2か国が批准し、アンティグア・バーブーダ、ジャマイカ、セントビンセントおよびグレナディーン諸島の3カ国が署名している。

フォーラム参加者は、同条約に参加し、早期の発効と普遍的適用に貢献することでカリブ海地域が果たしてきた重要な役割があると指摘した。

「カリブ海共同体」加盟国には、核兵器を保有したり、他の核保有国の核によって守られている国はない。つまり、同共同体のすべての国々が、次のように述べている核兵器禁止条約第1条の禁止事項を遵守しているということでもある。

「締約国はいかなる状況においても次のことを実施しない。

(a)核兵器あるいはその他の核爆発装置の開発、実験、製造、生産、あるいは獲得、保有、貯蔵。

(b)直接、間接を問わず核兵器およびその他の核爆発装置の移譲、あるいはそうした兵器の管理権限の移譲。

(c)直接、間接を問わず、核兵器あるいはその他の核爆発装置、もしくはそれらの管理権限の移譲受け入れ。

(d)核兵器もしくはその他の核爆発装置の使用、あるいは使用をちらつかせての威嚇。

(e)本条約で締約国に禁じている活動に関与するため、誰かを支援、奨励、勧誘すること。

(f)本条約で締約国に禁じている活動に関与するため、誰かに支援を要請する、あるいは受け入れること。

(g)領内あるいは管轄・支配が及ぶ場所において、核兵器やその他の核爆発装置の配備、導入、展開の容認。」

ジョージタウン声明は、ラテンアメリカ・カリブ海地域を国際的に認められた非核地帯とした「ラテンアメリカ・カリブ海地域核兵器禁止条約(トラテロルコ条約、1967年)」にも核兵器禁止条約と同様の条項が含まれると指摘している。

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したがって、トラテロルコ条約の加盟国が核兵器禁止条約を署名・批准することになっても、国内の履行に関して問題が生じることはない。核禁条約は、核兵器保有に対抗する地域の規範をグローバルな規範に転換することを目指すものだ。

声明はさらに、核禁条約と、核軍縮を前進させようとの努力は、17項目の持続可能な開発目標(SDGs)と169のターゲットを含めた「国連2030開発アジェンダ」の達成に資するものだと述べた。「今後数十年間で約2兆米ドルにものぼるとされる核保有国の核兵器支出は、開発とSDGsの達成のための資金を減らすことになる」と声明は論じている。(原文へ

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This article was produced as a part of the joint media project between The Non-profit International Press Syndicate Group and Soka Gakkai International in Consultative Status with ECOSOC.

フォーラムの参加者らは、核禁条約は1968年に署名開放した核不拡散条約(NPT)と何ら矛盾はなく、補完的なものであるとみなし、明確に核兵器を禁止することで軍縮を前進させ拡散の誘因を除去しようとする核禁条約の価値を認識した。

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