ニュース|チリ|今こそ過去の人権犯罪の真相究明に乗り出す時

|チリ|今こそ過去の人権犯罪の真相究明に乗り出す時

【サンチアゴIPS=グスタボ・ゴンザレス】

チリのO.Izurieta軍司令官は、亡命先のブラジルで死去したアルフレド・ストロエスネル氏(93)の訃報について触れ、ピノチェト元大統領の死後に訴追が行われる場合、軍は有罪であることが証明されるまでは法的に無罪であるとして、ピノチェト元チリ大統領に対して栄誉ある称号を授与すると明言した。 

アウグスト・ピノチェト(90)は現在、糖尿病や心臓疾患、痴呆症など健康問題を理由に人権侵害や公金横領などの罪に関して訴追免責を受けている。

 しかし人権擁護団体は、痴呆症であるという事実に信憑性がないとし、さら

に病気を理由に罪を問われないのはおかしいと訴えている。活動家やアナリストも、訴訟が再開される可能性はあるものの、ピノチェトが本当に痴呆であるのか、または裁判を避けているだけなのかと疑問に感じている。 

J.Guzman裁判官は、ピノチェトが『死のキャラバン』事件(1973年にピノチェト将軍の指示・命令で左翼57人が殺害、18人が拉致された事件)に対する法的責任があるとして審理されるべきであると裁決を下したが、チリ最高裁はピノチェトが精神的に裁判に耐えられないのではないかと判断。しかし最高裁は2005年、ピノチェトの痴呆が嘘であるという見解から免責特権を剥奪した。さらに最高裁は、カルロス・プラッツ軍司令官をクーデターの翌年(ピノチェトの創設した秘密警察)DINAの爆弾テロによって暗殺した事件についても免責特権を剥奪した。 

一方、軍はピノチェトに対して元最高司令官として軍葬を行う準備が整っていること、年金の支給や裁判での弁護費用など様々な特権が用意されていることを明らかにしている。 

多くの国際監視員は、複数の人権犯罪や汚職問題に関わってきたとされるピノチェトが軍の恩典や退役軍人の地位を受けることが出来るのは理解しがたいと見ている。しかし、これは元DINA長官マヌエル・コントレラスの訴訟についても当てはまる。コントレラスは、オルランド・レテリエル外相の暗殺(1976年)で有罪判決を受け、現在も別の人権侵害の裁判で収監中であるにも関わらず、軍の解雇や降格といった処遇も受けていない。 

軍政時代に重大な人権犯罪に関わった軍部、警察、極右団体などの罪を問わない「無処罰」制度を非難する声が高まりをみせようとしている。(軍事独裁政権を率いた)南米パラグアイ元大統領の死亡により、論争に再び火がついた『冷酷非情な独裁者、ピノチェト元大統領』に対する政府や軍の対応について報告する。(原文へ) 

翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩 


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