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ニュース核実験禁止条約の次期監督者選出に寄せて

核実験禁止条約の次期監督者選出に寄せて

この記事は、戸田記念国際平和研究所が配信したもので、同研究所の許可を得て転載しています。

【Global Outlook=ラメシュ・タクール

世界的パンデミックの悪夢と核兵器管理の支柱崩壊のただなかで、反核運動の天空に今なお明るく輝く数少ない星の一つのリーダーが、11月25~27日にウィーンで選出されることになっている(訳者注=パンデミックのため、2021年以降に延期された)。(原文へ 

包括的核実験禁止条約は、変わり種である。化石と化したジュネーブ軍縮会議で交渉が膠着状態になったとき、オーストラリアが救出作業を主導し、1996年、国連総会での採択を実現した。すべての条約でないにせよ、一連の軍備管理協定の中では珍しいことに、この条約は法的には未発効であるものの、実務的には完全に機能している。これまでに184カ国が署名し、168カ国が批准している。附属書2には44カ国がリストアップされており、これらの国の批准が発効の要件となっている。44カ国のうち、中国、エジプト、イラン、イスラエル、米国は、署名したものの批准しておらず、インド、北朝鮮、パキスタンは署名もしていない。

批准を保留している8カ国すべての批准が私の生きている間に実現する見込みは皆無であり、儀式的再確認以上に気にすることは時間と労力の無駄である。この方式は、条約の発効を妨害するために巧妙に仕組まれたものかもしれない。標準的な方式では、発効に必要な批准数とその後の発効までの日数が指定される。そのため、2017年に採択された核兵器禁止条約では、発効に必要な批准数は50カ国のみであった。50カ国目の批准が10月24日に受理され、核兵器保有国は1カ国も署名していないにもかかわらず、条約は2021年1月22日に発効することになっている。

核実験禁止条約は、これとは根本からかけ離れている。当時も我々の一部が問うたことであるが、明白な疑問は、「他の条約が同様の方式を採ったなら、どうなっていただろうか?」である。その明らかな答えは、「どの条約も、世界の核秩序の基盤である核不拡散条約ですら、今日に至っても法的に発効していないだろう」である。

包括的核実験禁止条約機関(CTBTO)は、核実験禁止条約の実施機関である。条約が発効するまでの間、暫定技術事務局が301の施設の国際監視制度と現地査察により、核実験禁止の遵守状況の検証に責任を負っている。オーストラリアには国際監視制度の一環として22の観測所と一つの研究所があり、施設数は世界で3番目に多い。

暫定事務局を率いる事務局長は、260人の職員と年間約1億3000万米ドルの予算を監督する。事務局長は、条約の検証制度に関連する取り組みを主導し、観測所のデータが、特に核実験(または地震)を検知した場合は、すべての締約国に通知されるようにする。歴代の事務局長は、ドイツのヴォルフガング・ホフマン氏(1997~2005年)、ハンガリーのティボル・トート氏(2005~13年)、ブルキナファソのラッシーナ・ゼルボ氏(2013年~現在)である。

ゼルボ氏の2期目の任期は2021年7月31日に終了する。彼の後任として10月9日の推薦期日までに名前が挙がったのは、オーストラリアのロバート・フロイド氏のみだった。しかし、理事会議長を務めるアルジェリアのファウジア・メバルキ(Faouzia Mebarki)氏の質疑を受けて、ゼルボ氏は6月に、締約国が望むのであればもう1期務めてもよいと述べた(実を言うと、私はフロイド氏ともゼルボ氏とも知り合いである。キャンベラ在住なので、当然ながらフロイド氏との接触がはるかに多い)。

国連中心のグローバルガバナンスを研究する者として、私は、すべての国際機関の最高責任者は任期を2期までとすることを強く提唱している。CTBTOの場合、前任者たちもこれを守り、条約の第2条D-49にも条約発効後の事務局長の任期は2期までと定められている。事務局と機構の制度的一貫性を保つためにも、成功を収めた模範的な最高責任者の尊厳ある選択肢は、職務を立派にやり遂げ、国際社会の感謝を受けたうえで、品位をもって退場することである。条約の任期制限条項は現在の状況には適用されないという詭弁を弄して、現職者が条約に違反するなら、事務局長として核実験禁止条約の規定の遵守を徹底させる道義的および政治的権威は、致命的に損なわれるだろう。

締約国は、あたかも条約がすでに発効しているかのように、実際上のあらゆる点において国際監視制度を運用に取り入れることによって、発効を妨げる法的障害を回避してきた。その一環として、条約に定められた任期制限の適用も含まれなければならない。ゼルボ氏は、機構の運用監視制度をきわめて信頼性の高いレベルまで強化したという点で、非常に優れた業績を挙げている。ふさわしい有望な候補者がいないというのであれば、今回に限り、締約国はゼルボ氏の3期目続投を考えても良いだろう。

フロイド氏は、CTBTOの重要な業務を担う候補としてふさわしく、実に素晴らしい経歴を有している。科学者として教育を受けた彼は、現在、核実験禁止条約を含むさまざまな大量破壊兵器管理条約の実施を担う国家機関である、オーストラリア保障措置・不拡散局の局長を務めている。技術的課題と政治的課題が交わる場において、技術面、運営面、外交面のハイレベルなリーダーシップを発揮してきた実績を有するフロイド氏は、事務局長に選出されれば、核不拡散・軍縮を推進する国際的努力におけるコンセンサス構築を構想している。これまでも現在も、国際組織における主導的地位に就くオーストラリア人が多すぎたということもないはずである。

インド太平洋地域では、1945年より、中国、フランス、インド、北朝鮮、パキスタン、英国、米国により、7回の核実験が実施されている。核実験に関しては、オーストラリアには葛藤の歴史がある。1956年から1963年までの間、英国は、オーストラリア領内で数回の核実験を実施し、それは長期にわたる傷跡を、特に先住民の人々に残した。1966年から1996年までの間、フランスは、フランス領ポリネシアにおいて200回近い大気圏内および地下核実験を行った。これは、太平洋地域全体に核実験への反発を引き起こし、オーストラリアとニュージーランドを核実験完全禁止の国際キャンペーンへと向かわせた。

CTBTOは今後、すぐにも核実験を再開する恐れがある北朝鮮の情勢を密接に監視する必要がある。逆に、北朝鮮が予想に反して非核化した場合、CTBTOはその後の検証メカニズムにおいて重要な役割を果たすことになる。いずれの場合にせよ、インド太平洋地域における経験豊富な人物が指揮を執ることは有益である。

この記事は、2020年11月17日にASPIの「The Strategist」に最初に掲載されたものです。
https://www.aspistrategist.org.au/choosing-the-next-overseer-of-the-nuclear-test-ban-treaty/

ラメッシュ・タクールは、オーストラリア国立大学クロフォード公共政策大学院名誉教授、戸田記念国際平和研究所上級研究員、核軍縮・不拡散アジア太平洋リーダーシップ・ネットワーク(APLN)理事を務める。元国際連合事務次長補、元APLN共同議長。

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