ニュース|コロンビア|暴力に満ちた世界で希望となる子どもたち

|コロンビア|暴力に満ちた世界で希望となる子どもたち

【ボゴタIPS=ヘルダ・マルティネス】

コロンビアで生まれたオルネラ・バロスさんは12歳の時、「未来ではなく現実、希望ではなく確実なこと」を求めていこうと決意した。それから6年後、政治学を専攻する学生となったバロスさんは、「子どものための宗教者ネットワーク(GNRC)に参加しようと決めたのは正しかった」と語る。

 「現在大学生となり、確信をもって言えるのは、もっとも大事なのは人間の尊厳を推進する道徳的価値観を教えることで、それをすべての宗教が共通して行っている」とバロスさんは、ボゴタで家庭内暴力を克服するための異教徒間の対話に関するGNRC地域会議が開会された28日、IPSの取材に応じて語った。

 この会議は、ラテンアメリカ司教会議(CELAM)、キリスト教の救援組織であるワールド・ビジョン・インターナショナルおよびユニセフ(UNICEF)の支援を受けている。

参加者は「家庭内暴力を取り巻く原因、影響、文化的構造を分析しながら、コミュニケーションの機構を作り上げ、暴力を克服するために活動する人々を支援していく」とGNRCのラテンアメリカ・カリブ諸国担当のコーディネーターであるメルセデス・ロマン氏はいう。

「私たちが生きる地球環境を守りながら、貧困の中で生活する子どもをなくすことが急務であるとともに、子どもに対する暴力をなくすことは道徳的な責務である」とロマン氏は述べた。

中南米数カ国、および異なる宗教的信条を持つ人々の代表による討議は、「5月24~26日に日本の広島で開催されることになっている第3回GNRCフォーラムで発表される」と、ロマン氏は今回の地域会議の冒頭で告げた。
 
「第二次世界大戦が日本社会に及ぼした劇的な影響を認識するために、広島が次期フォーラムの開催地となる」とロマン氏は述べ、1950年に敬虔な仏教徒である宮本ミツ師が妙智會(心を豊かにする)教団を創始して、仏教の価値観を平和の達成に利用しようと献身的な活動を行ったことに言及した。
 
1990年に、その妙智會の宮本丈靖会長が、子どものためにより良い世界を作り上げていくことを目的とした「ありがとう基金」を設立した。
 
「ありがとう基金」は国連が認定するNGO団体であり、子どもに対する暴力のない世界を目指す、すべての宗教的伝統の結集として2000年5月に創設されたGNRCを支える原動力だった。
 
「子どものために活動できるようにしてくれた人々に感謝する」とロマン氏は会議の参加者に述べた。参加者には、ボゴタ郊外のボサ、ソアチャ、カスーカなどのスラム地区に住む6~16歳の少年少女の「希望の歌声」聖歌隊のメンバーも含まれていた。

「スラムでは、いたるところで争い事がある。道の曲がり角ではどこでも殴り合いのけんかをしていて、10~12歳の子どもがたばこを吸い、アルコールを飲み、してはいけないことをやっている」と聖歌隊のメンバーのホルヘ・モリナさんはIPSの取材に応じて語った。

「だから私たちは、暴力によって住む場所を失ったたくさんの人々に希望の歌声を届けるため、やさしい気持ちを広めるために歌を歌う」とモリナさんはいう。

コロンビアでは、半世紀近く続く内戦のために、故郷を離れて国中から集まってきた数万人の人々が、ボゴタを取り巻くスラムで避難民となっている。

「希望の歌声」はコロンビアの作曲家、サンチアゴ・ベナビデス氏の作品を歌っている。作品の歌詞では「銃弾では世の中を変えられない」「明日になって振り返った時に、自分の足跡が見えるようにするには、今何ができるだろう」「ウラバからやってきたウゴは、茶色のリュックを持っていて、どこに行ったらいいかわからないまま、生まれた町から逃げてきた」などと歌われている。

この歌詞はコロンビアの現実を映し出している。「1万1,000~1万5,000人の子どもが武力紛争に巻き込まれている」とワールド・ビジョン・コロンビアのサミュエル・アルバラシン副代表はIPSの取材に応じて語った。

「状況は非常に深刻で、ワールド・ビジョンは3万5,000世帯の40万人ほどの子どもの命を救うためにあらゆる努力を行っている。世界的には、私たちの組織は、300万人の子どもに手を差し伸べていると推定している」

アルバラシン氏によると、コロンビアで子どもが被害者となる暴力の根源は、疎外、貧困、社会的排斥、児童労働、武力紛争である。

けれどもこうしたことにもかかわらず、「私たちは未来を見つける」と同氏は断言した。

30日まで続く会議では、ユニセフが、2006年10月に発表された国連事務総長の「子どもに対する暴力に関する調査」の結果を議論することになっている。

この調査は2003年から世界中の専門家、子ども、青少年が参加して行われたもので、暴力の原因と実態を理解するためにこれまで行われた取り組みの中で最大のものだった。

その中には「大人中心主義」などの文化的な傾向、そのもっとも弱い子どもたちへの影響、体罰とその影響、性的および精神的虐待がある。

3日間の議論の中心テーマは価値観としての人間の尊厳の重要性であり、それは宗教および社会が共有し、世界を変える変化を起こす力となるものである。(原文へ

翻訳=IPS Japan

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